藤井聡太の記憶(2)。最年少の奨励会三段時代

奨励会三段リーグは、1年に2回のリーグ戦が行われます。4月~9月と、10月~翌年3月。

そのリーグ戦の原則上位2名が、四段に昇段してプロ棋士になれるというしくみです。

2015年9月、藤井聡太奨励会二段は、三段昇段のチャンスを逃しました。今ではほとんど語られない時期ですが、この三段への昇段を逃したことにより、藤井さんは中学1年生の後半の約半年間、対局がない状態でした。

今思えば、これも棋風改造や力を蓄える時期だったのかもしれません。

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最年少三段に

藤井聡太奨励会二段は、2015年9月22日の対局で敗れ、三段昇段を逃しました。

翌月、10月18日の対局で勝利し三段昇段を果たしました。13歳2ヶ月、最年少三段です。

冒頭に書いたとおり、三段リーグは半年サイクルで行われています。ちょっと運が悪くて、10月から開幕した第58回三段リーグには間に合わず、翌年4月からの第59三段リーグの開幕を待つことになりました。

それでも中学生プロ棋士、さらには最年少プロ棋士の可能性が、現実味をおびてきていました。加藤一二三九段が持つ最年少プロ棋士記録、14歳7ヶ月を更新するには、三段リーグの一期抜けが必要になりました。中学生プロ棋士になるチャンスは4期。

三段リーグ開幕前に

2016年3月、藤井聡太奨励会三段は、当然のように詰将棋解答選手権チャンピオン戦で二連覇を果たしました。

中学1年生の春休み、藤井さんの半年のブランクを不安視した師匠の杉本昌隆七段。師弟で東京へ行き、研究会の合宿をしたと明かしています。その研究会には、島朗九段や森下卓九段といったベテランから、村山慈明七段、中村太地六段といった実力者、高見泰地五段、増田康宏四段といった若手メンバーも参加。

当時の藤井さんの棋力は、ブランクもあった影響で師匠・杉本昌隆七段と差し分け(五分五分)程度だったとのことです。

杉本七段はメディアに出るとき、とっても藤井さんを立ててお話されることがあるので、「弟子になったらすぐに師匠を超えた」という認識を持たれている方も多いかもしれませんが、師匠もがんばっているのです。私も杉本七段の振り飛車の本を持っています。

【管理人の所感のコーナー(将棋は逆転のゲーム)】

藤井さんの棋力の源泉はなんといっても詰将棋の能力。詰将棋が強いことは、終盤の強さにも大いに関わってくると思います。「将棋は逆転のゲーム」と言われていて、終盤で逆転が起きやすいですし、終盤力のある棋士は魅力的です。

将棋はなぜ逆転のゲームなのか? この疑問についての私の仮説は、将棋において「一手の価値が、終盤にいくほど高くなっていくから」だというものです。

野球でいえば、5回からはホームインすると2点、7回からは3点、9回は5点、みたいな。サッカーでいえば、後半は1ゴールで2点、後半30分以降は5点みたいな感じです。

最後の電王戦を戦ったコンピュータ将棋ソフトPONANZAは、初手をランダムに選ぶ仕様でした。将棋の初手は大変注目はされますが、勝負という意味では、ほとんどどんな手を指しても価値は変わらないのだと思います。

ところが終盤、最後の数手を間違えると大逆転が発生します。多くの候補手のなかで正解はたった一つだけで、他の候補手を選ぶと逆転、という状況はよくあります。

終盤で逆転が起きやすいので、将棋には中毒性があります。そして負けた後、大変悔しいです。絶望的な気分になります。藤井さんも子供の頃、負けて悔しがっていましたが、はっきり言えば大人の私でも大事な対局で負ければ泣きたくなりますし、ずっと局面を思い出して悔しさを引きずります。

三段リーグでの成績

藤井聡太奨励会三段の、三段リーグの成績は以下に掲載されています。

第59回奨励会三段リーグ戦(日本将棋連盟)

この期は、藤井聡太さんの他、女性初のプロ棋士を目指す里見香奈奨励会三段、西山朋佳奨励会三段も参加していて、類を見ないほど注目された三段リーグになりました。

4月23日の第59回三段リーグ初日、藤井さんは1勝1敗でスタート(三段リーグは1日に2局おこなわれる)しました。里見さんと西山さんは2連勝スタートでした。

三段リーグから四段に昇段するには、18戦のリーグ戦で上位2名になることが必要です。昇段ボーダーラインは、13勝5敗ぐらいが通常。ただ、同じ勝数で並んだ場合は前期の成績がよい順に昇段しますので、初出場で前期の成績がない藤井さんは14勝4敗ぐらいが必要だと感じていました。

里見さん、西山さんは開幕4連勝。ですがその後は、藤井さんが二人を逆転し勝ち星を伸ばしていきました。

7月2日には、藤井さんが暫定2位に浮上。7月17日にはついに暫定1位に浮上。しかし8月2日には4敗目を喫して再び暫定2位に。まあそんなぐあいに、昇段できるかどうかギリギリの戦いが続きました。

そして9月3日、暫定首位で迎えた最終節。2連勝なら自力昇段、1勝1敗なら他力での可能性があるという状況。

藤井さんはこの日の1局目で坂井信哉三段に敗れましたが、競合も敗れて、最終局で勝てば昇段できるという状況(12勝5敗)に。

三段リーグ最後の対局者は、女性初のプロ棋士を目指している西山朋佳三段(10勝7敗)。この対局に勝ち、藤井さんは13勝5敗(1位)で四段への昇段を決めたのでした。

最年少プロ棋士に

14歳2ヶ月でのプロ入り。60年以上破られなかった加藤一二三九段の最年少プロ棋士記録を、藤井さんが更新しました。一度しかなかった更新のチャンスをものにしました。

これまでの最年少プロ棋士は、加藤九段の14歳7ヶ月。中学生棋士は加藤九段のほか、谷川浩司九段(同8ヶ月)、羽生善治三冠(15歳2ヶ月)、渡辺明竜王(同11ヶ月)の4人でした。

メディアでの報道も、この頃から本格的に始まりました。「天才少年の育て方」「将棋のことを考えすぎてドブに落ちた」「5分でわかることをなぜ45分かけるのか。授業がつまらない」といったエピソードがメディアを賑わせました。

この頃の私のお気に入りの話は以下。語り継がれるかもしれません。

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