2017年4月4日の勝利で、デビューからの連勝記録を「11」に伸ばし新記録を達成した藤井聡太さん。
スポーツ紙や一般紙はもちろん、総合週刊誌、さらに文芸誌も彼の詳しい記事を掲載するようになりました。
前年からの問題で混乱していた日本将棋連盟でしたが、顔ぶれが一新することになる理事選に向けた動きも始まり、混乱が収束しつつありました。
非公式戦ながらA級棋士を破る
4月8日は、AbemaTVの非公式戦「炎の七番勝負」で、順位戦A級のトップ棋士、深浦康市九段と対局。
この対局でも藤井さんが勝利し、7番勝負の成績を4勝1敗としました。もちろん結果自体にもう驚きはまったくないのですが、本局は、感想戦が印象的でした。
藤井さんが終盤の変化(実際の進行とは異なるが、仮にこの手を指されたらどう対応していたか、という一連の流れ)読み筋を次々に披露し、深浦九段や周りの棋士たちを驚かせました。
終盤の読みの速さ、正確さを改めて知らしめることになりました。
なおこの頃、将棋連盟はTwitterなどSNSのアカウントを相次いで開設。詰将棋の出題もSNSを通して告知されるようになりました。
本日の詰将棋は、藤井聡太四段作の11手詰です!
わかったら「いいね」ボタンをお願いします!
→ヒント、回答はこちら https://t.co/6jJtGqHOPd pic.twitter.com/nuaXKBQWj7— 日本将棋連盟【公式】 (@shogi_jsa) 2017年4月8日
連勝を12に伸ばす
藤井さんの公式戦12戦目は、4月13日の竜王戦6組ランキング戦。相手は星野良生四段。
星野四段は奨励会時代にゴキ中対策として名高い「超速▲3七銀」を開発した戦略家(2010年度升田幸三賞)。
本局でも星野四段が序盤で新手を出して局面をリードしました。
ですが中盤で藤井さんが反撃に転じ、終盤は藤井さんらしくスピード解決。連勝を12に伸ばしたのでした。
第30期竜王戦6組ランキング戦4回戦 △星野良生四段vs▲藤井聡太四段は、127手で藤井四段が勝利。藤井四段はデビュー以来12連勝。自身が持つデビューからの連勝記録を更新しています。
棋譜コメからして未放送のテレビ棋戦での負けはおそらくない(まだ対局がないか勝ってる)かと思います— 将棋ワンストップ (@shogi1com) 2017年4月13日
「12連勝」という数字は、前年度の連勝賞(豊島将之八段、青嶋未来五段)と同じ数字です。
NHK杯戦収録日を公表
また、このとき藤井さんの「次戦が4月17日のNHK杯戦、千田翔太六段戦」だという異例の報道がありました。NHK杯戦はテレビ棋戦であり、対局(収録)がいつあるかは公表されず、放送日のみが公表されるのが通例です。
将棋:14歳・藤井四段、デビュー12連勝 新記録更新 – 毎日新聞 https://t.co/KBnl37p4RI
「次戦は今月17日の第67回NHK杯1回戦(5月14日放送予定)の千田翔太六段(23)戦」となっているとのこと。
— 将棋ワンストップ (@shogi1com) 2017年4月13日
これもデビューからの連勝記録を伸ばしている藤井さんだからこその、異例の報道でした。
A級棋士を連破
4月16日放送の「炎の七番勝負」では、佐藤康光九段をも破りました。
説明する必要もないと思いますが、佐藤康光九段といえばA級トップ棋士、タイトル13期、永世棋聖資格保持者、緻密流と呼ばれる読みの緻密さと「1秒間に1億と3手読む」と言われる読みのスピード(誇張ではあるが)、そしてこの年の2月に日本将棋連盟の会長に就任していました。
そしてたった今気づいたのですが、将棋連盟の公式サイトに「炎の七番勝負」の振り返り記事がアップされてたことを思い出しました。
対局の内容を詳しく知りたい方は上記を御覧ください。
これで「炎の七番勝負」の成績は、藤井さんの5勝1敗になりました。
【管理人の所感のコーナー(AIにも勝てる?)】
この頃、人間vsコンピュータ将棋ソフト(人工知能、AI)の戦い「第2期電王戦二番勝負 佐藤天彦叡王 vs 電王PONANZA」が行われていました。
予想通りとはいえ、現役の名人であり当時ほぼ人類最強と思われた佐藤天彦名人(叡王)が敗れたこと、名人を相手にしてもPONANZAの圧倒的な力が示されたことは、人類とAIの戦いが実質的に終わったことを告げるものだったと思います。
ところが、やはり世間の期待は「藤井聡太ならAIにも勝てるのではないか?」という方向に向かいました。
おそらく、ですが、普段から将棋を観ている人であればあるほど、「藤井聡太 vs AI」という戦いの結果にあまり関心がないのではないかと思います(私としても関心がないわけではないですが、対局の準備などの負担も大きいですし、それより「詰将棋カラオケ」をやってくれ! とかね)。
当時あるインタビューで、やはり藤井さんに対して「PONANZAと対局したら勝てるか?」という質問があったのですが、藤井さんは「人間とコンピュータが勝負する時代ではなくなった」と応えています(人間と比べ、コンピュータの進化には限度がない、という理由で)。
藤井さんにとってAIは「研究用のツール」であり、勝負することには興味がないのだと思います。世間の期待は高いかもしれませんが、本人も興味ないこと、負担がかかることをメディアが煽るのはよくないなと、思っていました。
ただ世間の方々がそういう期待を持つのもしょうがないかな、それも彼の宿命なのかなとも思っていました。