藤井聡太の記憶(11)。「望外」のデビュー11連勝、新記録達成

2017年4月、藤井聡太さんは中学3年生になりました。

プロ入りから半年。

加藤一二三九段とのデビュー戦から数えて公式戦10連勝。詰将棋解答選手権チャンピオン戦3連覇。AbemaTVの非公式戦で強豪相手に2勝1敗で進行中。何もかもが順調でした。

この頃から、藤井さんに関するテレビのニュースは「対局結果」だけではなく、「現在対局中」という状況でも報道されるようになりました。

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中村太地六段に勝利

4月2日放送のAbemaTV「炎の七番勝負」では、第4局で中村太地六段に勝利。

当時2度のタイトル挑戦の経験があった中村六段相手でしたが、堂々の将棋。これで若手強豪の4人相手に3勝1敗。

ここまでくると驚きや意外ではなく、安定感。

望外の逆転勝利

「デビューから11連勝」の新記録がかかった対局は、4月4日の王将戦1次予選、小林裕士七段戦。

小林七段は中堅の棋士でもちろん藤井さんより順位戦や竜王戦のクラスは上で実績があるとはいえ、「炎の七番勝負」で戦った相手に比べれば・・・と楽観視する向きもあったかもしれません。

始まってみると、先手の小林七段がペースを握って攻める展開。小林七段が大きくリードしたように見えましたが、中盤の終わりぐらいで先手にやや緩い手があって、それを見て後手が反撃。

それでも先手の優位は動かないかと思われたのですが、そこで藤井さんの逆転のきっかけとなった勝負術が出ます(92手△65桂)。

歩頭に桂跳ね。これでも先手の優位は確かだとは思うのですが、人間がやっている競技ですから、このような手を指されると心理的なプレッシャーあるいは動揺につながりそうです。

藤井さんの桂馬を使った逆転の勝負術は、この後の対局でも見られることになります。

相手にミスが出て、ここから数手後に、はっきりと藤井さんが逆転。先手の追撃を冷静にかわして勝利しました。

これでデビューからの連勝記録を11に伸ばし、新記録を達成。

そして、対局後に「(11連勝は)自分の実力からすると望外です」との言葉が出ました。これをきっかけに「望外」ブームが起こりました。

意味としては字のごとく「望みよりも上の結果」ということであり、藤井さんは「実力が足りない」との言葉も繰り返していました。

【管理人の所感のコーナー(望外、僥倖)】

前述の対局後のコメントで出た「望外」や、後に20連勝を達成したときに出る「僥倖」という言葉が、注目されました。(藤井さんの「語録」としては他に「節目」などもある)

これらのことをもって「藤井四段は語彙力もすごい」「私たちの知らない言葉を知ってる」と褒める論調もみられるようになりました。

私は性格がひねくれていますから、メディアの方々にはここはもっとつっこんで、褒めるなら正確に褒めてほしいな、と思うこともありました。

将棋界においては、「望外」や「僥倖」といった言葉は古くから観戦記や自戦記でも用いられてきた言葉です。藤井さんはそのような文章を読んでいるのだと思います。しかもたくさん読んで、何度もその言葉に触れてきたのだと思います。将棋の観戦記や自戦記って、普通の小学生とか中1、中2が読むようなものじゃないですよ。その点がまず、他の子とは違うのでしょう。

(棋士同士の会話の中から知った可能性もありますが、藤井さんはこの時点でまだ棋士になりたてですし、書物で知ったという可能性のほうが有力だと思います)

藤井さん自身も後のインタビューで、「望外」や「僥倖」が「将棋界で使われている言葉」だという話をされています。

ここからはまったく私の推測ですが、藤井さんは意識して、将棋界の業界用語としての「望外」や「僥倖」を、注目を集める場で用いたのではないか、とも思うのです。

なぜ用いたのかはこれも推測ですが、やっぱ業界人としてのカッコよさではないでしょうか(単純)。

それは冗談としても、当時中学3年生とはいえ、その社会的な能力を過小評価すべきではないと思います。自分が発する言葉が社会的にどのように認識され影響があるか、わかってるはずだと思います。

そこであえて「望外」や「僥倖」という言葉を用いることによって、藤井さん自身だけでなく、言葉や文章を通じて世間にもっと将棋界を理解してもらう、興味を持ってもらうという狙いがあったかもしれません。

本当の狙いは藤井さんにしか、わかりません。が、少なくともその言葉に話題性があることは、わかっていたはずだと思います。

でもよくよく考えると、あの日あの時、「望外」や「僥倖」以上にふさわしい言葉は見つかりません。今考えれば、むしろそれらの言葉が自然に聞こえます。

その点がまた素晴らしいのだと思います。

この新記録の余韻はしばらく続き、さらに多くのメディアが藤井さんをとりあげるようになりました。

将棋ファンとしては藤井さんの「(羽生善治三冠が初タイトルを獲った19歳よりも早く)タイトルを狙いたい」との言葉に、頼もしさを感じました。

この頃から藤井さんは「漫画」のようだと形容されるようになりました。後に漫画を超えるようなことになるのですけど・・・。

また、藤井さんの弱点がきのこだと判明したのも、この頃だったと思います(師匠・杉本昌隆七段の発言による)。

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