門倉啓太四段が将棋監修を務めたアニメ「えとたま」の第9話が、まず2015年6月4日にTOKYO MXで放送されました。今後さらにニコニコ生放送などでも放送されるようです。詳しくは公式サイトで。
えとたま第9話は「将棋回」。30分将棋づくしでした。将棋を全く知らなかった少女「にゃ~たん」が、特訓を受け上達していく姿が描かれています。
この記事では、えとたま第9話でにゃ~たんに対して行われた将棋の特訓方法をご紹介します。もしかしたら棋力向上に役立つかもしれません(ほとんどの場合、役立ちません)。
なお、アニメ好きの高橋道雄九段がこの回の感想を書いていますので、興味がある方はこちらもご覧ください。
下の詰将棋は、この回の冒頭に示されたものです(後述するタケルとピヨたんが解いていた)。
あらすじ
「花鳥歩月(かちょうふげつ)」と題されたこの回では、猫からインスパイアを得て誕生したと思われる将棋初心者の少女「にゃ~たん」が、将棋上級者の鳥の少女「ピヨたん」に将棋対決を挑みます。
最初の手合は、ピヨたんが裸玉+持ち駒に歩3枚。それでもにゃ~たんは惨敗。それもそのはずで、にゃ~たんは自分が負けたこともわからないぐらいの初心者。
そこでにゃ~たんは、「将棋は宇宙だ」という岡本太郎的名言を放つ少年、天戸タケルの下で将棋の特訓に励むのでした。
駒の動き
タケルは、まずにゃ~たんに駒の動きを叩き込みます。
叩き込み方は過激。にゃ~たん自身が駒となり、巨大な将棋盤の上で、人間将棋のごとく駒の動きを実践。
駒の動きを間違えて、動けないはずのマスに侵入してしまうと、にゃ~たんには電撃が加えられたり、馬にぶっ飛ばされたりします。
「駒の動きを体で覚える」という。
目隠し将棋
次ににゃ~たんは将棋盤を見ずに、頭の中で将棋を指すという目隠し将棋で特訓。
タケル曰くこの特訓の意味は「将棋盤を想像し、己の手を考え、相手の手を予想する」。
特訓方法は、将棋盤に見立てた9×9のマスがある障子が用意され、その障子をはさんでにゃ~たんとタケルが対峙。
タケルが一手指すと、障子の向こうからにゃ~たんに向かって槍が突かれる。例えばタケルが△8四歩と指すと障子の8四の地点から槍が飛び出し、にゃ~たんを襲う。
にゃ~たんは槍を避けるため、必然的に相手の手を予想することになるという仕組み。
これは、すばらしい。槍という罰を用意することで、相手の手を強制的に予想させるという特訓。初心者は相手の手を予想することを真剣にしない(自分の指したい手ばかり考える)ので、これは効果があると思います。
格言を頭に入れる
さらににゃ~たんは将棋の格言を座学で学習。
これも効果があると思います。将棋で指す手に迷ったら、格言を頭に思い浮かべる初心者も多いのではないでしょうか。玉飛接近すべからず、遊び駒は活用せよ、大駒は近づけて受けよ。
「読み」だけですべての局面を指すことはできないため、このような格言から抽象的な手の指し方を学び、大局観を身につける。素晴らしい特訓です。
木に括りつけられるにゃ~たん
次に、にゃ~たんはヤシの木にゴム紐で括りつけられました。その木から遙か遠くに将棋盤が。
にゃ~たんはゴムを伸ばして将棋盤に近づき、手を指す必要があるという謎特訓。
ゴム紐を伸ばして将棋盤まであと一歩まで近づくにゃ~たん。しかし、そこで力尽きるとゴム紐は一気に縮み、ゴムパッチンの要領で激しくヤシの木に打ち付けられる。
タケル「負けるな!将棋を指すんだという、強い気持ちを持て!生半可な気持ちじゃ、将棋盤に触れることもできないんだよ!!」
にゃ~たん「負けないにゃ~!!」
この特訓は、正直言って効果があるかわかりません。
鉄球を受け止める
さらに特訓は続きます。
・浅間山荘事件で用いられたような巨大鉄球が飛んでくるのを、素手で受け止めるにゃ~たん。その足元には将棋盤が。
・「王将」の駒が付けられた帽子をかぶって剣道の特訓をするにゃ~たん。
・捨て猫ならぬ捨て駒を世話するにゃ~たん。
このへんの効果はすべて謎です。
宇宙を感じるにゃ~たん
これらの特訓を経て、ようやくタケルと普通の盤駒で対局するにゃ~たん。
この対局を経てにゃ~たんもまた、将棋に宇宙を感じるようなっていたのです。
再びピヨたんと対局
特訓を経て再びにゃ~たんはピヨたんと対決。今度は平手です。この対局の流れも簡単に説明します。
まず、にゃ~たんとピヨたんが対峙して次のような会話を交わしました。
に「今日のにゃ~は、にゃ~であってにゃ~ではないにゃ~」
ピ「私の一手は不動の一手」
に「一歩千金」
ピ「開戦は歩の突き捨てから」
これで会話が成立しているのか。
タケルは「『自分のことを格下だと思って油断したら負けますよ』とにゃ~たんが言って、『少し将棋ができるようになったというその自信があなたの敗因になりかねないですよ』とピヨたんが返したんだよ」と解説。
ねこだまし
にゃ~たんは初手▲7八飛の「ねこだまし」を採用。
一方のピヨたんは「鳥刺し」で対抗。ピヨたんは鳥です。
形勢はピヨたんに傾き、にゃ~たんは徐々に追い詰められます。自信をなくしていくにゃ~たん。
名人に定跡なし
ここでタケルは禁断の一手を。テレパシー的なものでにゃ~たんに話しかけるタケル。
タケル「にゃ~たん。君に教えていない言葉があるんだ。この格言を知ってしまうと、ちゃんとした将棋を覚える前にダメになっていまう。そう思って教えなかった。けど、今のにゃ~たんなら大丈夫だ!」
「名人に定跡なし!!」
対局者に助言しちゃっていいのかは置いといて、この言葉によりにゃ~たんは覚醒。
にゃ~たんの奥義「猫謝嵐(ねこじゃらし)」が炸裂。
▲2六玉。
この手を見たピヨたんが「負けました」と投了しました。
棋力向上になるか
高橋道雄九段のブログによれば、このにゃ~たんとピヨたんの対局は
この最後のところって、投了した局面で、玉をひょいと
ひとつ、上がっていれば、逆に勝ちだったっていう、
その時期、ちょいと話題になった、あの将棋がベースに
なっているような気がするんだけど、どうかな、片上君?
ということで、片上大輔六段の将棋(?)がベースになっているようです。
このアニメによって、棋力向上につながるかはよくわかりませんが、少なくとも「相手の手を予想する」のと「格言を覚える」のは初心者にとってはいいことだと思います。興味がある方は、ニコニコ生放送などでご覧になってみてはいかがでしょうか。
最後に、このアニメの最終盤に示された(タケルが解いていた)詰将棋をご紹介して終わりにします。
画像の下にヒントも書きました。ヒントを見たくない人は、画像の下の文章を見ずに解いてみてください。
ピヨたんとの戦いが終わり、平和な日常に戻ったにゃ~たん。
それを傍目に詰将棋を解きながら「あっという間に元のにゃ~たんに戻っちゃったな。もう一局指したかったな」とつぶやくタケル。
そこににゃ~たんが近づき、タケルが解いている詰将棋を見て、すかさず1三に金を捨てました。
驚くタケル。そして。
タケル「にゃ~たんに定跡なし」
コメント
すいません、これ投了の局面、△3五金で先手詰んではいないのでしょうか?
コメントありがとうございます。
△3五金を打たれて、▲1五玉と歩を取りながら逃げた時に、1九の香車が後手玉に間接的に通る形になります。
△2五金と寄られても、▲同玉と取り返した時に1九の香車で後手玉に逆王手がかかるという仕組みです。
△3五金以外にも迫り方はありますが、いずれも先手の勝勢のようです。
コメントありがとうございます。
ああ、なるほど、1九の香は見落としてました、ありがとうございます。
お役に立ててよかったです。
今後とも宜しくお願い致します。