2015年9月27日までに第1期叡王戦の段位別予選が終了し、その結果、本選への出場者16名が出揃いました。
この記事ではあらためて、各段位の予選を勝ち抜いた本戦出場者をご紹介します。
一応、私(管理人)の展望も述べたいと思います。
2015/10/14追記:
本戦トーナメントの組み合わせが発表されましたので、記事の最後に追記しました。
ベスト16
叡王戦の予選は段位別というのが特徴。現在、段位別予選の形式を採用しているのはこの棋戦が唯一。
また、九段の本選出場枠が6枠であるのに対し、四段は1枠しかないなど調整されています。八段は3枠、七段から五段が各2枠で、合計16名が本選に出場します。
本戦はトーナメント制、決勝戦は3番勝負。優勝者は第3回電王トーナメント(11月開催)の優勝ソフトと対戦する「第1期電王戦」(来春)に出場します。
四段戦
1枠のみが与えられた四段戦を勝ち抜いたのは青嶋未来四段。
今年4月のデビュー以来、高い勝率をあげており、またこの間チェスの大会でも優勝を果たしています。羽生善治名人ともチェスで対局済み。
将棋ウォーズでならした早指し。叡王戦の短い持ち時間(決勝以外はチェスクロックで1時間、秒読み1分)で今後も力を発揮しそうで、四段ですが、上位に進出してもおかしくなさそうです。
五段戦
2枠が与えられた激戦の五段戦を勝ち抜いたのは阿部光瑠五段と佐々木勇気五段。
阿部五段は予選決勝で千田翔太五段を、佐々木五段は予選決勝で斎藤慎太郎六段を下しての本戦進出。
ふたりとも16歳という若さでデビューし、ともにこれまで棋戦優勝1回。そろそろ全棋士参加の棋戦で大きな実績が欲しいところ。年も同じで今年21歳ですが雰囲気は結構違う。青森県弘前市出身で柔らかい雰囲気の阿部五段と、ジュネーブ生まれで目がキラキラの佐々木五段。
阿部五段は第2回電王戦で習甦に勝利。佐々木五段は電王戦の解説会で「ソフトとはあまり指さない。ソフトと戦うのが怖い。ソフトから逃げているです」などと発言しています。
六段戦
六段も2枠。特徴ある二人が勝ち上がった。
数少ない振り飛車党から佐々木慎六段と、詰将棋が異常に力を発揮する「スーパーあつし君」宮田敦史六段。
佐々木六段は決勝で永瀬拓矢六段の穴熊を許さず力戦となり、(評価値としては)逆転で勝利した。
宮田六段も決勝では高野秀行六段に対し力戦調の将棋で、こちらも(評価値としては)逆転で勝利。
失礼かもしれないですが、ふたりとも本戦では本命じゃないかもしれないですが、ダークホースになりそうです。
七段戦
七段も2枠。電王戦出場経験のある二人が勝ち上がった。豊島将之七段と、村山慈明七段。
豊島七段は第3回電王戦でYSSに勝利しこのシリーズ唯一の棋士側の勝利者となった。今年もタイトルに挑戦するなど若手の実力者。コンピュータを研究に取り入れている。叡王戦でも優勝候補の1人と言ってよさそう。
村山七段は電王戦FINALでponanzaに敗北。第1期電王戦出場を争う第3回電王トーナメントではponanzaの優勝が本命視されるだけに、村山七段にとっては叡王戦を勝ち上がればリベンジができるかもしれない。また、予選2回戦では兄弟子の飯島栄治七段と対局し勝利したが、その後の研究会で飯島七段に対し「飯島さん、叡王戦どうされました?」と言い放って、後に謝罪会見を開いた。
八段戦
八段には3枠が与えられている。
勝ち上がったのは鈴木大介八段、山崎隆之八段、行方尚史八段。
鈴木八段は振り飛車党。決勝では広瀬章人八段を相手に用意してきた作戦を炸裂させ勝利。電王戦FINALではAperyの王手ラッシュに苦言を呈していた。電王戦に出場したら対戦する可能性があるので、それはそれで楽しみ。
山崎八段は独特の序盤が特徴。糸谷哲郎竜王いわく「人に真似できない構想とかを、盤上で実現することに力を入れている。最新型も研究しているが実戦では指さない」。西の王子と呼ばれた時代もあった(今でもかもしれない)。
行方八段は今期名人に挑戦した。2011年に結婚して以来好調を続けている。阿部五段と同じ青森県弘前市の出身。順位戦はA級、竜王戦は1組で間違いなくトップ棋士の一人。前期のNHK杯では準優勝。愛称は「なめちゃん」。
九段戦
最多の6枠が与えられた九段戦。
森内俊之九段、高橋道雄九段、先崎学九段、郷田真隆王将、塚田泰明九段、三浦弘行九段とそうそうたるメンバーが出揃った。
森内九段は6月20日の叡王戦開幕日に一番乗りで勝ち抜け。その後のインタビューでは「せっかく本戦に行くからには優勝を目指したいし、コンピュータとも指してみたい」と堂々と述べた。前期名人と竜王を失ったがバックギャモンの世界大会で4位となり、さらにはNHK杯を制した。永世名人資格保持者。
高橋九段は早々にこの新棋戦の誕生についてブログで歓迎を表明。その際「仮面ライダー超電王」のDVD(?)の画像をUpした。ラブライバーでありAKB48からは卒業した。最後の「十段」(十段戦は解消され竜王戦となった)であるほか、かつて存在した段位別予選方式の棋戦「天王戦」最後の優勝者でもある。
先崎学九段は前期順位戦で10年ぶりにB級1組に昇級。電王戦FINALでのAperyの王手ラッシュについて観戦記で「非常に楽しめた。精密機械が壊れるのを見るのも楽しいではないか」と述べている。実際にラッシュされたら笑顔を見せてくれそうで楽しみだが。予選決勝では深浦康市九段を破った。
郷田真隆九段(王将)はタイトルホルダーとして唯一の本戦入り。2日制で争われる王将のタイトルを保持していることや、序盤から長考するなど持ち時間の長い棋戦が得意なイメージはあるが、前々期のNHK杯を制しており早指しも強い。予選決勝では藤井猛九段相手に劣勢になりながらも粘り強く受け相手のファンタを誘って逆転した。
塚田泰明九段は第2回電王戦でPuella α相手に持将棋(引き分け)を成立させている。予選決勝では弟子3人が電王戦でコンピュータソフト相手に敗れている井上慶太九段との対戦となったが、井上九段の攻めを受けきって勝利した。若いころは攻め120%の棋風だった。高橋九段とともに「55年組」と呼ばれるグループの一人。
三浦弘行九段は第2回電王戦でGPS将棋に敗戦。しかしその直後に出会った17歳年下の女性と交際し、昨年秋に結婚。結婚生活では我慢を重ねているようですが、予選決勝でも佐藤康光九段の攻めに我慢を重ねて耐えしのぎ勝利した。前期、14期在籍した順位戦A級からの陥落を喫した。研究家である。
展望
あらためて本戦トーナメント進出者16人です。
青嶋未来四段
阿部光瑠五段
佐々木勇気五段
佐々木慎六段
宮田敦史六段
豊島将之七段
村山慈明七段
鈴木大介八段
山崎隆之八段
行方尚史八段
森内俊之九段
高橋道雄九段
先崎学九段
郷田真隆九段(王将)
塚田泰明九段
三浦弘行九段
現役タイトルホルダー1人、永世称号資格者1人、電王戦出場経験者5人、羽生世代3人、55年組2人。
同じ早指し棋戦であるNHK杯を前期制している森内俊之九段、本戦に進出した唯一のタイトルホルダーであり前々期のNHK杯を制している郷田真隆九段、前期NHK杯で準優勝し今期は名人に挑戦した行方尚史八段の3人は当然本命。ここに今期棋聖戦挑戦の他、王座戦の挑戦者決定戦にも進出した豊島将之七段と、兄弟子との対局を忘れponanzaへのリベンジに燃える村山慈明七段が対抗。個人的にはデビュー以来勢いのある青嶋未来四段が楽しみ。
ありきたりな展望になってしまって申し訳ないです。
対コンピュータ戦
叡王戦は、対コンピュータ戦への選抜戦という意味もあるので、コンピュータ戦に強そうな棋士が勝ち上がると面白そう。なんとなく若手がコンピュータに強いというイメージはありますが、トップ棋士も含めれば本当にそれが当てはまるかはわかりません。また、第1期電王戦は2日制ということで、2日制に強い、慣れている棋士が勝ち上がっても面白そうです。二日制の現役タイトルホルダーとか、二日制のタイトルの永世称号を持っている棋士とかですね。
なお、他の有力棋士としては、羽生善治名人と渡辺明棋王が不参加、王座挑戦中の佐藤天彦八段は予選1回戦敗退。糸谷哲郎八段(竜王)、菅井竜也六段は予選2回戦で敗退、広瀬章人八段、阿久津主税八段、永瀬拓矢六段、斎藤慎太郎六段、千田翔太五段は予選決勝で敗退などとなっています。
第1期叡王戦本戦トーナメントは10月中旬頃から11月にかけて、決勝3番勝負は12月に実施されると発表されています。
2015/10/14追記:
本戦トーナメントの組み合わせが発表されています。
Aブロック
1.森内九段九段vs阿部光瑠五段
2.豊島将之七段vs郷田真隆九段
3.宮田敦史六段vs佐々木勇気五段
4.三浦弘行九段vs行方尚史八段(同世代対決)
Bブロック
5.先崎学九段vs鈴木大介八段
6.村山慈明七段vs佐々木慎六段(過去の成績は村山七段が8戦全勝)
7.塚田泰明九段vs高橋道雄九段(花の55年組対決)
8.山崎隆之八段vs青嶋未来四段
準々決勝
9.1の勝者vs2の勝者
10.3の勝者vs4の勝者
11.5の勝者vs6の勝者
12.7の勝者vs8の勝者
準決勝
13.9の勝者vs10の勝者
14.11の勝者vs12の勝者
決勝
13の勝者vs14の勝者
本命視している森内九段、郷田九段、行方八段が同じAブロック。豊島七段もAブロック。
Aブロックが激戦のような気が致します。