自作の「電王手くん」が進化して「本将棋ロボシステム」に。成駒の動作に驚きの創意工夫

ドワンゴ主催による新公式棋戦および新「第1期電王戦」の開催が発表された3日後、ひっそりと公開されたロボットがありました。

ニコニコ動画に「本将棋ロボシステムを作った」と題された動画が投稿されたのです。

このシステムは、将棋の指し手の思考から、盤上への再現動作までが実施できる本格的なロボット。まさに、電王戦で用いられた「電王手くん」「電王手さん」に思考エンジンが搭載されたようなロボットです。

電王手くん、電王手さんについては以下の記事をご覧ください。

「電王手くん」から「電王手さん」への進化のポイント

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本将棋ロボシステム

以下がそのシステムの動画。

動画のタイトルにある「本将棋」とは、我々が普段指す、普通の将棋のことです。他の将棋類と区別するために「本」を付けています。まずはこの素晴らしい動画をご覧ください。

おそらく個人が1人で自作したと思われるシステムですが、驚きのクオリティ。Webカメラでマスと駒を認識して指しています。

注目は電王手くんや電王手さんを開発したデンソーの技術者も苦労したという「成駒」の動作。駒を裏返す動作ですが、これを「滑り台」という、驚くべき画期的な手法で解決しています。

その他、回転補正とか、駒の材質とか、細かい工夫が凝らされています。

初期型

このような本格的なシステムが突如誕生したのかというと、そうではありません。上記の動画内でも触れられていましたが、なんと1年以上前に最初のバージョンがニコニコ動画に投稿されていたのです。

この初期型は、5×5という狭い盤面で動作します。

一番上の動画で「本将棋」というタイトルだったのは、ここからの歴史があるからなんですね。

「電王手くん」と同じく、成駒などは専用の台を使って実行します。

注目すべきはアームの先端。なんと駒を挟んでいるのです。「電王手くん」はエアーで吸着する仕様、そして1年後の「電王手さん」で駒を挟むようになったため、この自作システムは時代を先取りしていたことになります。(ただし、一番上の動画では逆に吸着する仕様として進化している)

1年の構想を経て3日で制作したという、製造業的には理想ともいえるスピード開発。

ただ、思考エンジンは単に「ランダムで指す」だったり、移動距離(位置)も手作業で合わせて入力するなど、多くの課題を残していました。

急激な進化

しかし、上記のわずか2週間後には「安定化を図った」という改良版が発表されています。

新たに読み上げ機能を搭載したほか、思考エンジンを全面改良。評価関数は「駒得のみ」の評価ながら、読みが入った指し手となっています。最後も3手詰で勝利。

その他、安定化版の名の通り細かな修正を施しています。照明の問題の解決やカメラの歪補正、駒の位置をWebカメラで取得するなどいよいよ本格的になってきました。

最も注目すべきは、動画の最後に出てくる各マス毎のアーム位置の設定。効率化を図っています。製品開発においては、ユーザーの満足度を高めることは最も重要ですが、メンテナンス性を確保することも非常に重要です。

実用化されたとして使い道は?

このような歴史があっての「本将棋ロボシステム」。作者の創意工夫と情熱、技術力に敬意を表さずにはいられません。冒頭の「本将棋ロボシステム」の動画を再掲します。これまでの歴史を見てからだったら、より感動が大きいかもしれません。

このようなシステムが、一般に実用化されればいろいろと使い道がありそうです。

使い道としてパッと思いつくのは病院や老人ホーム、学童保育など子供の施設などに設置すること。人間同士だとどうしてもレベルの差とかありますし、わけあって人間同士で対局できない事情をかかえている場合もあると思いますし。それに、このロボットVS子供たち、みたいに協力してロボットを倒すとか、そういうシステムであってもいいと思います。

人間そっくりの会話ロボットとか、ペットロボットとかありますけど、あれよりよっぽどいいと思うんですよね。将棋を通じたコミュニケーションができる。

次回作にも期待

ただ、そのためには接待将棋ルーチンはぜひ組み込みたいところ。

それからもう少しだけ可愛くしてほしい。

あと、家電製品として一般販売するとしたら、安全性など法律に則って開発・評価する必要があります。結局、これが一番コストと時間がかかると思います。専用の設備とか必要そう。

こういうのは伝統ある家電の大企業はやらないイメージです。実用化するとすれば、どこかのベンチャー企業かIT企業でしょうか。電王戦の協賛企業のどこかやらないですかね。

・・・などと、妄想は膨らみますが、作者(suzumeさん)の次回作にも期待です。あの発想と技術力をもってすれば、今後どれだけの進化が見られるのか。

また何か動きがありましたら、当サイトでも記事にしたいと思います。

以上、最後までありがとうございました。

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コメント

  1. 匿名 より:

    製作者は動画のタグにもあるようにクマ将棋というコンピュータ将棋ソフトも作っている方です。
    元々画像処理・画像認識関係の方で、将棋ソフトを趣味で始められ、合わせ技で将棋ロボに至ったというような経緯でしょうか?

    将棋ロボに関しては元々構想はあったのに、デンソーに先を越された、と話されていた記憶がありますw

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      そうでしたか。そこはチェックしていませんでした。情報ありがとうございます。
      作者の素性はわからないのですが、そういう、それぞれの要素のベースとなる技術力がないとできないと思いますね。
      加えて、技術があっても情熱がないとできないです。

      「デンソーに先を越された」とはすごい話ですね。巨大企業との、まるで企業間競争のような・・・。面白いです。

      情報ありがとうございました。

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