角川歴彦氏、新「電王戦」誕生に至る川上量生氏との内輪話を明かす「もうニコニコの役割は終わったと言った。ところが」

2015年6月3日に行われた、ドワンゴと日本将棋連盟による「将棋電王戦に関する記者発表会」では、ドワンゴ主催の新たな公式棋戦と、その優勝者がソフトと戦う「第1期将棋電王戦」の開催が発表されました。

新生「第1期電王戦」、エントリー制の新公式棋戦(名称公募)優勝者が最強ソフトと2日制2番勝負で対決へ

この記事では、記者発表会で株式会社KADOKAWAの角川歴彦会長およびドワンゴの川上量生会長より語られた、電王戦が継続されるに至った経緯についてご紹介します。

なお、事前の週刊新潮の記事では、

ドワンゴが、スポンサーを続ける条件として羽生名人の出場を日本将棋連盟に突きつけた

とありました。

羽生善治名人の参加は現時点(2015年6月3日)では明らかにされていません。

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新棋戦の主催であれば

まず、日本将棋連盟の谷川浩司会長が、新しい電王戦についてドワンゴ側から「新棋戦を主催するので、その優勝者とソフトが対決するのはどうか」という提案があったと話しました。

谷川会長は「タイトル保持者とソフトの対決は実現が難しいが、公式棋戦を主催していただいてということであれば、うまくいく可能性がある。新棋戦がニコニコ生放送で数多く放送され将棋界が盛り上がることになる」と将棋連盟が開催を決めた理由を語りました。

ニコニコ(ドワンゴ)の役割は終わったんじゃないか

一方、角川歴長は、川上会長との「内輪のエピソード」をお話されました。

角川会長は、これまでの電王戦が多くのメディア、とりわけ棋戦を主催する新聞各紙でも報道され「盛り上がった」という感想を述べた上、「それで、川上君には、ニコニコができる役目は終わったんじゃないかと正直に言いました。僕はそんな気持ちでおりました」と、電王戦から手を引く考えだったことを明らかにしました。

続けて角川会長は「ところが川上君は意外に真面目な顔をして『自分ができることがあるなら、実は、後援し続けていきたい』と言うんです」と川上会長から意外な言葉が返ってきたと言い「川上君にもそういうところがあったんだな、と見直した」と明かし、川上会長の言葉で電王戦の継続に至ったのだと話しました。

時代の申し子

角川会長は、電王戦は「時代の申し子」であり「時代の申し子が伝統的な将棋のルールに則ると、どういうふうになるのか。これは意味があるなと思いました。だから川上君を応援させていただいた」とも述べました。

角川会長は日本将棋連盟に所属した元奨励会員であり、電王戦FINALの最中に電王戦の継続を訴える発言をしていました。

将棋が大衆のものに

また角川会長は、電王戦FINALで人間とコンピュータが指す将棋を現地で目の当たりにして「これもひとつの将棋だな」と思うようになったも述べました。その他の角川会長の主な発言は以下です。

「21世紀にも、将棋が時代を超えて生き続けるのは本当に面白い」

「僕は、父に言われて将棋の世界を捨てて、角川書店に入っていくことに非常に矛盾を感じていた。1対1での厳しい戦いに人生をかける意味がある。これも楽しみにさせていただきたい」

「ソフトが出てきて将棋界が盛り上がっている。将棋の世界にとどまらず、大きな世界に一歩踏み出してきたんだなと。かつての大山升田時代よりも今のほうが国民のもの、大衆のものになっている」

将棋という伝統あるゲームが、時代を超えて指され、ソフトの出現によってそれが再び大衆のものになっていると、意義を強調されていました。

団体戦の目的はほぼ達成した

一方、川上量生会長はこの日、風邪を召されており喉の調子が悪いということで、司会の永田実さんから川上会長に代わって「棋戦開催の経緯」について説明がありました。

それによれば「これまでの電王戦の目的は、人間5対ソフト5の団体戦を通じて、人間とコンピュータの違い、人間を凌駕するコンピュータに人間はどう対峙するか、人間にしかできないことは何かを明らかにすることだった。この目的はほぼ達成されたのではないか。来年からはスケールアップして、将棋プログラムと戦おうとする全ての棋士が参加する電王戦とすることで、一層将棋界に貢献したい」とのことでした。

世の中に教えてあげようというおごりがあった

その後、発表会の終盤では、川上会長が枯れた声で自ら以下のようにも述べていました。

(旧)電王戦を始めた時、『コンピュータの時代が来て、コンピュータがこれからどうなるかというのを、世の中に教えてあげよう』という若干、上から目線のおごった気持ちが僕の中にあった

「しかし電王戦をやるなかで、僕自身が、人間とコンピュータの関係についていろいろ思うことがあった。コンピュータに負けた人間が、人間を感動させたことが何度もあった」

「悲観的に見ていたが、人間はまだまだ素晴らしいし、人間はまだまだやっていける、それを深く感じた。電王戦によって勉強させていただいた」

「電王戦と将棋をこれからも支えていく。コンピュータも素晴らしいが、人間ももっと素晴らしいということを世の中に示していければ」

記者発表ということで、多少、美談風になったところもあると思いますが、趣旨はよくわかりました。風邪で喉がやられている中、お話いただいたことに感謝したいです。ありがとうございました。

角川会長、川上会長、2人の思いが良く伝わりました。

人間側がエントリー制になることで

話は以上です。

以下は、例によりまして、この話を受けた私(管理人)の所感です。

私は将棋ファン歴が浅く、最近1年程度しか真剣に見ていないのですが、将棋を見始める前は「プロ棋士はコンピュータソフトにとっくの昔に超えられているんじゃないか」という思いがなんとなくあったような気がします。

根拠はないのですが、もう何十年も前からそれなりの将棋ソフトは存在していますし、コンピュータは1年半毎にスペックが倍増すると聞いたことがあったので。人間はいきなりスペックが倍になるとかあり得ないですし。そう考えると、いまだに人間がコンピュータと戦えているのは驚き。どういう仕組なんだろうと。

一方で私は、最近図書館でコンピュータ将棋の本を借りまくっています。どうやってコンピュータソフトは強くなったのか、変に興味が湧いてしまいまして。

そんなこともあって、私は個人的には電王戦の勝負そのものよりも、その背景に興味を持っています。人間、コンピュータの両方にです。そして上記の2人のご意見のように、いろんな見方ができるのが電王戦の楽しさだと思っています。

ただ、その分、色んな意見・主張が現れやすく、批判や議論もあるのだと思います。例えば電王戦FINALでは、コンピュータのスペック制限や貸し出し等のレギュレーション、プロ棋士側のアンチコンピュータ戦略が議論や批判の対象になったと思います。

ある人はAWAKEの開発者・巨瀬亮一さんが「悲劇」に見舞われたと言いました(ご本人にとって悲劇だったのかはわかりませんが)。

電王戦FINAL、AWAKE開発者・巨瀬亮一さん「ハメ手を使うプロ棋士の存在意義」を問う

今回の発表では、第1期電王戦につながるプロ棋士の新棋戦(名称は公募)はエントリー制になりました。コンピュータ側はもともとエントリー制というか、出たい人が出ていたと思うので、ひとつ条件が揃ったのかなと思いました。

これによっても、また色んな意見・主張・議論の幅が広がるのではないかと思います。具体的には、冒頭に示したとおり、羽生善治名人などタイトルホルダーが参加するしないは議論の対象となりそうです。

議論は自由なのですが、ご本人たちがひどく悲劇だと思ってしまうようなことは、あんまりないようにした方がいいと思いました。建設的な意見を出し合うのは、いいことなんじゃないかと思っています。

(でも意見を言う場がないんだよなーという方は、当サイトでは寄稿を受け付けていますので、よろしければお問い合わせ下さい。たぶん寄稿ができる将棋関連サイトは、他になさそうに思います)

話を戻しますと、川上量生会長、そしてその意見を聞いた角川歴彦会長も、電王戦を今後も開催することに意義があると思っているようです。

私は、まだ発表されていない部分も含めまして、どうなるのか期待を持って見ています。将棋のさらなる発展を望んでいますし、そうなればとても意義があることだと思います。

以上です。

むしろ本題より所感の方が長いじゃないかというような長々とした文章を、最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

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コメント

  1. あなあき より:

    議論とか意見を闘わすとか、そういうのが好きなのは
    「ヒマな若いオトコ」と「おっさん」だけやでwww

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      AWAKEの例では批判による「悲劇」があったということなので、まあそれよりは建設的な議論のほうがいいのかなと思って書いてみました。
      あと若い暇な男とおっさんは結構な数いると思います。けっこう議論とかあるのかなと思いました。
      私のサイトのコメント欄でも、AWAKE関連の記事にはコメントが多い気がします。

      コメントありがとうございます。

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