いよいよ将棋電王戦FINALも残すところ、あと1局、2015年4月11日の第5局「FINAL of FINAL」を残すのみとなりました。
そんななか、4月8日のNHKニュース「おはよう日本」の「ここに注目!」では、解説委員の土屋敏之さんが、このプロ棋士とコンピュータソフトの戦いの解説をされていましたので、ご紹介します。
プロが勝負に徹してきた
土屋敏之解説委員は、今回の電王戦FINALが3回目の団体戦であること、過去2回はコンピュータ側が勝ち越していること、年々コンピュータが強くなっていることを説明。
そのうえで、今回プロ棋士側が善戦している(最終局を前に2勝2敗と互角)理由について「過去の実績よりも、コンピュータソフトに慣れた若手の精鋭を選抜した。しかも事前にソフトを借りて徹底的に練習や対策を重ねた」と解説。
さらに、第2局の永瀬拓矢六段の角不成について「ソフトの欠陥を突くなど、勝負に徹してきた」とも説明されました。
おおお、さすがNHKさん。
「ソフトの欠陥を突いたことが勝因」というわけではありませんが、同局の立会人である三浦弘行九段が角不成について「99%の勝ちを100%にしようとした。震え上がっている」と言った言葉が思い出されます。まさに「勝負に徹した」。
まだプロ棋士の方が少し強い
土屋解説委員は、コンピュータソフトの強さについて、終盤ではミスがなくプロ棋士よりずっと強い、そして最近は新手を編み出すこともあると説明。
ただ、「まるごと新しい作戦を考えだすような創造的なことは、まだできない」、そして「プロがミスしなければ、まだプロの方が少しレベルが高いとも見られている」と解説しました。
創造的なこと
どんな業界でもそうですが、機械、あるいはコンピュータが人間の労働に取って代わるとき、人間に求められるのは創造性であるということだと思います。
藤井猛九段が人気なのは、やはり将棋ファンが本能的に、その創造性に強く惹かれているからなのか、それともコンピュータにはできない終盤のファンタジーが魅力なのかはわかりません。
機械学習の限界?
土屋解説委員はさらに、「どんな手を指したらいいかの価値判断の部分」では、プロ棋士の過去の棋譜をもとに学ぶ仕組みになっていると解説。これでプロ並みに強くなった反面、この仕組み上、一気にプロに大差をつけるのは難しいという説明もありました。
「どんな手を指したらいいかの価値判断の部分」というのはいわゆる「評価関数」「評価値」のことだと思います。コンピュータ将棋ソフトは一般的に、ある局面についてどちらがどれほど有利かを、評価関数とよばれる数式を使って評価し、数値化します。その値が評価値。
評価値が正確であればあるほど、正しい手を指す判断能力が高いということで、強いコンピュータソフトとなります。「棋譜を学ぶ」というのは、局面をどう評価するか、その評価関数を人間が決めるのではなく、プロ棋士の棋譜をコンピュータに学習させて作り出すということ。Bonanzaメソッドとよばれるこの機械学習の手法によって、将棋ソフトに革命がもたらされています。
第5局の展望は
土屋解説委員は、第5局に登場するコンピュータソフト(AWAKE)が、コンピュータの大会(電王トーナメント)で優勝したソフトであることを述べた上「厳しい戦いだが、阿久津主税八段が、ミスをせずに力を出し切ることができれば勝機はある」とも述べました。
さらに、コンピュータ将棋が「長年、人工知能の研究のモノサシになってきた」と言及し、「人の思考を凌駕した、新しい発想が見られるのかも注目」と解説しました。
FINAL of FINAL
前述の機械学習の流れだと思いますが、まずは人間を参考にして、それから人間を超える独自の進化をして、新しい発想ができるか、というのは人工知能のテーマなのだと思います。
そんな見どころもある将棋電王戦FINAL第5局、▲阿久津主税八段VS△「電王」AWAKEは、4月11日午前9時半からニコニコ生放送で中継されます。
以上、ありがとうございました。
追記:
この解説がNHKのホームページに掲載されました。