2015年4月11日に行われた将棋電王戦FINAL第5局は、先手のプロ棋士・阿久津主税八段が後手のコンピュータソフト・AWAKEに、なんとわずか21手で勝利。
これは、20手目にAWAKEが△2八角を打ってしまい、勝ち目がなくなったAWAKEの開発者・巨瀬亮一さんが投了を告げたもの。
△2八角については以下の記事を参照下さい。
電王AWAKEに勝利し100万円ゲットした山口直哉さんの必勝法。△2八角を打たせる
長時間でも出現する△2八角
そして、対局後のインタビューで、巨瀬亮一さんがこの投了について語りました。
巨瀬さんは「この形に誘導されると、長時間でもかなりの確率で△2八角を指してしまうのがわかっていたので、もしそうなったときは、この局面、▲1六香と上がった局面で投了しようと思っていました」とコメント。
「長時間でも」とは、先日の電王AWAKEに勝ったら100万円企画では、持ち時間10分、秒読み10秒と短かったために△2八角が出現した、というわけではなく、長時間の持ち時間(今回は5時間)でも出現するという意味です。
つまり事前に、この局面になった場合は投了すると決めていたことになります。やはり、この投了の理由としては、巨瀬さん自身が元奨励会員ということで、勝ち目がないと見たのだと思います。
プロなら指しづらいんじゃないかと
巨瀬さんは「(阿久津主税八段が)本当に△2八角を指してくるかっていうのはなんとも・・・。指しづらいんじゃないかと思っていました。既にアマチュアの方が指されていた形なので、プロとしてはやりづらいんじゃないかと思っていました」と心境を述べました。
巨瀬さんによれば、玉の近くに必ず馬ができる形である今回の局面を、AWAKEが過大に評価するらしく、「評価関数の表現能力の限界がある。結構、枝刈りしてしまうのでこの手を指してしまう」とのことでした。
「枝刈り」とは、手の分岐を読むことを(これ以上読む勝ちがないと判断して)途中で打ち切ってしまうということです。
「評価関数」については以下を参照。
コンピュータ将棋ソフトは一般的に、ある局面についてどちらがどれほど有利かを、評価関数とよばれる数式を使って評価し、数値化します。その値が評価値。
評価値が正確であればあるほど、正しい手を指す判断能力が高いということで、強いコンピュータソフトとなります。「棋譜を学ぶ」というのは、局面をどう評価するか、その評価関数を人間が決めるのではなく、プロ棋士の棋譜をコンピュータに学習させて作り出すということ。Bonanzaメソッドとよばれるこの機械学習の手法によって、将棋ソフトに革命がもたらされています。
こちらが参考記事。
△2八角を打たせないようにプログラムすることも可能なのですが、巨瀬さん自身も上記の100万円企画でこの手に気付いたらしく、そうなると今回の事前貸し出し、途中でのプログラム変更不可のルールでは、どうにもなりません。
阿久津主税八段「葛藤はあった」
一方の阿久津主税は△2八角を打たせることについて「普段やらない形で、葛藤はあった。貸し出していただくルールにおいて、一番自分が勝ちやすい形を選ぼうかなと、最後は思いました」と発言していました。
また事前の練習では「やっぱり、相当に負かされたので、全然勝てる自信がなかった」とし、「別の、△2八角を打ってこない形になることも多かったので、その時は全然自信がなかった」とも話していました。
棋士らも驚き、絶句、そして賞賛?
この大一番が、わずか50分、21手での決着。
この事態に、プロ棋士や関係者も次々にツイートしています。
これぞ電王戦だ。人間がコンピュータへの対峙を死ぬ気で考えたことで様々なことが生まれた第4回電王戦でした。
— 遠山雄亮 (@funnytoyama) 2015, 4月 11
電王戦、なにこれ
— 飯島栄治 (@eijijima) 2015, 4月 11
言葉にならないですね。
— 三枚堂達也 (@sanmaido714) 2015, 4月 11
今回プロvsコンピュータならではの対局多かったですね
— 中澤 沙耶 (@N38s_14105) 2015, 4月 11
投了・・?
— 室田伊緒 (@iomuu) 2015, 4月 11
レギュレーションに対する抗議が、こういう形でしか響かない、実効力がないとすれば悲しいよね。将棋を語る側の責任だ。
— mtmt (@mtmtlife) 2015, 4月 11
ニコファーレで観戦していた巨瀬さんのお父さんの心情を思うと、ただただ悲しい。
— mtmt (@mtmtlife) 2015, 4月 11
電王戦、なかなか衝撃的だった。
将棋ウォーズ上でコンピューターがやられる定跡だったけど、まさかこんな展開になるとは!
阿久津さんは、ルール上ベストを尽くしたということなんだと思いますね。
— 林隆弘(はやしたかひろ) (@takhaya) 2015, 4月 11
開発者投了ってことは、
巨瀬「これ以上、僕に将棋を穢(けが)すことは出来ない。」
ってことなのかな?
そんなん、惚れるわ!抱かれてもいい。(巨瀬さんが女性なら)
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 4月 11
誰もわるくないです。しょうがないです。これもまた将棋です
— itumon (@itumon) 2015, 4月 11
アンチコンピュータ戦略に始まり、アンチコンピュータ戦略に終わった電王戦ですか。
— 銀杏 (@ginnan81) 2015, 4月 11
皆さん色々思いがあると思います。
でも阿久津八段こそがもっとも"かっこ良く"戦いたかったはずです。
それでも勝つためにしたということを皆さん覚えておいてください。
今回の電王戦はコンピュータとは人間とはというのがよくでた印象です。
人類チームの皆さん勝利おめでとうございます!
— 山本 一成@Ponanza (@issei_y) 2015, 4月 11
また詳しいことがわかりましたら、記事にしようと思います。
阿久津主税八段は△2八角に「貸し出し後、数局で気づいた。素直に嬉しい感じではない」
ありがとうございました。
コメント
当ブログをいつも楽しく拝見させて頂いておりますが、明らかな誤りがありましたのでコメントさせていただきます。
> △2八角を打たせないようにプログラムすることも可能なのですが、巨瀬さん自身も上記の100万円企画でこの手に気付いたらしく、そうなると今回の事前貸し出し、途中でのプログラム変更不可のルールでは、どうにもなりません。
評価(関数)はAWAKEのみならず現在の将棋ソフトの根幹部分なので、そこの「問題」ならばバグではありません。ましてそこに手を加えたならば、AWAKEは電王の資格を返上しないといけないでしょう。
(評価関数をいじった結果他のソフトに勝てるかどうか誰にも予見できないでしょう)
2八角だけを打たせないというソフトウェア開発者からすれば最低の(破れ鍋に綴蓋的な)修正をするのなら他への影響は小さいかもしれませんがそれこそ反則というものでしょう。
したがってプログラム変更不可のルールがあったから負けたということはできません。
余談ですが、この段落でなぜ事前貸出とセットで書かれたのかも理解に苦しみます。
事前貸出が問題ならソフトの棋譜学習もNGとし、本当のプログラムの実力で勝負すべきですが、今回の問題とは関係ありませんよね。
読者様
コメントありがとうございます。
また、いつもご覧になっていただき、ありがとうございます。
もし誤解をあたえてしまったとすれば、大変申し訳ございません。私の文章の能力のなさだと思います。
ご指摘の点ですが、私もバグだとは思っていません。
対局後のインタビューで、巨瀬さんが「例えば、評価関数の、駒割以外の評価値をゼロにすることで、△2八角は打たない」と話していました。この方法が現実的かは、わかりませんが、「技術的には」修正の方法はあったと思います。
そこで、もし事前(電王トーナメントに出場する前にですね)に気づいていれば、評価関数を修正するかもしれなかった、少なくとも評価関数を改善出来る可能性はあった、と、私は解釈しました。これは△2八角に限定した話ではなく、記事中にあるように、玉の近くの成駒を過大評価しないとか、別の一般的な手法で改善できた可能性があるのだと思います。
記事は、電王トーナメント出場前に巨瀬さんがAWEKEを開発している段階で、(ponanzaもハマったという、知る人ぞ知る△2八角に)気づいていれば修正可能だったのですが、今回のルールでは修正できなかった、という意味で書きました。
当サイトは、将棋の初心者の方、普段見ない方にもご覧になっていただきたいと思い、作成しています。
そういう方は、将棋電王戦のルールを把握していない方も多いと思います。そのためにルールに言及しました。
私が書きたかったのは、「△2八角を認識した100万円企画から現在までに、(技術的には修正可能であるかもしれないのに)修正しなかったのは、開発者の怠慢や調査不足、わかっていながら対策しなかったのではなく、ルールのためだった」ということです。
誤解を生んだとしましたら申し訳ございません。もしこの説明で誤解が解けないようでしたら、記事を修正いたします。
ご返信をいただけますと幸いです。いつもご覧になっていただき、本当にありがとうございます。
別に事前貸出しについて問題にしてなくない?
事前貸出しを電王戦の半年前に行う今回のルールだと何かしらの修正はできないという事実を述べてるだけじゃん
事前貸出しを問題に挙げてると読み取る方が理解に苦しみますよ
匿名様
コメントありがとうございます。
私も、問題にしたつもりはございませんでした。しかしながら、誤解を生んでしまったのも事実で・・・
もう少し慎重に書くべきだったかもしれません。
読者様、ならびに誤解をあたえてしまった皆様:
重ねて申し上げますが、(言い訳ということになりますが、個人的な事情で、限られた時間の中で記事を作成しており推敲もあまりしてないような記事をリリースして)誤解をあたえる結果になり申し訳ありません。
コメントありがとうございました。
その物腰の柔らかさが、多くの読者の心を(これからも緊張感のあるコメントが書き込まれるたびにw)洗ってくれると思います。
ところで
「NEWS by 管理人」を毎日楽しみに読んでいます。
http://shogi1.com/mynews/ ←このURLがわたしの「お気に入り」です。
どうも管理人さんはブログやTwitterなどのキュレーションがこのサイトのメインだと考えておられるようにお見受けしますが、「NEWS by 管理人」こそがこのサイトの圧倒的な魅力だと思います。いやもちろん「ワンストップ」の便利さをスルーしようというわけではないのですが。
毎日すごい文章量なので、かえってくたびれないか心配になることもありますが、これからも期待しています。どうか無理のないペースで!
管理人様
巨瀬さんの発言は改良のひとつの可能性を示唆しているだけであって、その結果2八角は出さなくなったとしても他のありとあらゆる局面で以前と同じ手を指すかどうかまで分からない、つまりデグレードの可能性は当然あるわけです。評価関数をいじることは単純なバグ修正とは次元の異なる話あり、修正などと単純には言えません。
そのような改良行為を認めるなら他のソフトウェアとの公平の観点から電王トーナメントからやり直す必要があるでしょうということです。
重ねて言いますが電王戦のルール以前の問題です。直せなかったからではないのです。
電王戦に出場するソフトは、電王トーナメントに勝ったものに対して、一定期間の改良を認めています。それによって指し手の性質が変わることについて特に問題視しているわけではないようですよ。
多くのソフトが、人間対策として指し手のランダム性などを追加したり、さらなる学習を盛り込んだりして、指し手の性質としてはトーナメントとは別物のソフトになっています。
こうのすけ様
コメントありがとうございます。そして、いつもご覧になっていただいているようで、ありがとうございます。私の記事を魅力だと言っていただきうれしいです。
私としては、こうのすけ様のお考えと違うかもしれませんが、私の記事は、実はこれは試行錯誤というか、実験でもあるのです。どういう情報を、どういうタイミング、内容、ボリュームでお伝えしたら、将棋ファンの方に喜んでいただけるか。また、将棋ファンではない方に興味を持ってもらえるか、という。ですので、今後もいろいろと記事のテイストが変わる可能性はあります。
もちろん、サイト全体も試行錯誤なのですが、情報を収集して提供することに対する試行錯誤というのは限界があると思いますし。
しかし「圧倒的な魅力」とは嬉しいですね。ありがとうございます。今は運営にやりがいを感じてとても楽しい時期なのでついハイペースでやってしまいますね。
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読者様
再コメントありがとうございました。おっしゃりたいことが、わかった気がします。
まず私は、普段将棋に触れない方、電王戦のルールを詳しく知らない方、また評価関数だとかプログラムだとかもあまり知らない方の立場で考えて書きました。そういう方は以下の3つの疑問があると思います。
今回のハメ手順について
1.修正することは技術的に可能なのか?
2.可能であれば修正すればよいのではないか?
3.修正できないなら、ノートPCでのハメ手が本番用ソフトでも通用することを、検証させないようにすればいいんじゃないか?
1については、記事中にあるように「△2八角を打たせないようにすることができるか」に限定すれば、これは技術的には可能だと思います。評価関数やプログラムについて理解が深ければ、いろいろ弊害があることはわかりますが、ここでは話を単純化しています。
2については、この疑問に答えるにはルールの話を持ち出す必要があります。つまり「電王トーナメント時点のプログラムから一定の改良可能期間を経過したら、原則変更不可」というルールです。
3についても、ルールの話を持ち出す必要があります。これは「事前貸し出し」のことで、これによって阿久津八段はハメ手の検証が可能となったからです。
まとめますと1は可能だったが、2と3の理由により巨瀬さんがハメ手に気づいた時点では「どうすることもできなかった」。
これを簡単に一文に表現すると「△2八角を打たせないようにプログラムすることも可能なのですが、巨瀬さん自身も上記の100万円企画でこの手に気付いたらしく、そうなると今回の事前貸し出し、途中でのプログラム変更不可のルールでは、どうにもなりません」となりました。
「明らかな誤り」とご指摘された点は上記だと思います。私としては、あくまで初心者の立場で、上記1,2,3の疑問について解決しようとしています。
もっと良い表現はあったかもしれませんが「明らかな誤り」ではないかと思います。いかがでしょうか。そして、もし可能であれば、どのように表現すればよかったか、ご返信いただければ幸いです。
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匿名様
コメントありがとうございます。
なるほど、そういうこともあるんですか。私の勉強不足でこのあたりの実態は知りませんでした。ただ「貸し出されたら、変更不可」ぐらいの認識でした。
前例を調べてみようと思います。
このような情報は、私にとってもそうですが、サイトを訪れる方にとっても有益だと思います。
コメントありがとうございました。
今回、記事作成上の注意点について、考えるきっかけになりました。皆様ありがとうございます。
管理人様
ご主張の整理ありがとうございます。
「修正」という一語に修正の技術的可能性と期間内の実現可能性が区別なく混ぜられているように思います。
もし管理人様の意図として前者が1で後者が2であるならば、2は「修正すれば」というよりも「修正したものを差し替えれば」がよりに合うのではないかと思いますがいかがですか。
で、その「修正」ですが。
そもそも、何が正解か正しく定義できないと修正もなにもなくて、単にある局面で2八角を指す挙動を防ぐトライ&エラーが「修正」になっているかどうかについて、「可能と思います」というのは作者の巨瀬さんご自身であっても、実装して動かしてみない限り言えない性質の問題です。(正しく定義できるならそもそも発生しないんですが、正解が定義しづらいAIがらみではよくあります)
ですので、1を前提にすることが明確な誤りでしょうという指摘です。結果、ルールのせいで・・・というのもためにする議論に読めました。
ともあれ、AWAKEについて1が成立するかどうかが2の前提ということは同意いただけたと思います。すなわち、1について「これは技術的には可能だと思います」とされているのはいかなる事実に立脚されておられるか次第だと思います。
また3については、ノートPCのハメ手を見て阿久津さんが取り入れたということを前提とされていらっしゃいますが、それは事実でしょうか?
https://twitter.com/wakate_shogi/status/586736745737138177
https://twitter.com/wakate_shogi/status/586736938524119040
これも当事者の発言のみなので鵜呑みしていいか私には判断できませんが。
なお余談ですが、巨瀬さんがルールを問題にされる場合は、技術者の観点としては100万円チャレンジで気づいてから本戦までの期間で弊害のない形で実現可能であったことを実力で証明することもできたはずです。もちろん巨瀬さんが阿久津さんの戦術を問題にされている限りにおいては必要ないことです。
読者様、ありがとうございます。
簡単な方から、返信させていただきます。
まず、余談部分については、そうですね、巨瀬さんはルールではなく阿久津八段の指し手を問題にしています。
3.についてですが、これは私も別の記事にしているとおり、読者様と同じ認識です。
記事中で表現したのは、”巨瀬さんにとっては”、ハメ手を検証させない手段がなかったということです。巨瀬さんは100万円企画の時点で阿久津八段の状況を知らないためです。
1、2については私が記事中で書いたのは「△2八角を打たせないようにプログラムする」ということに限定しています。これは話を単純化しているためです。一般的に可能かどうかではなくて、「巨瀬さんは可能と思っていた」という話です。
ですので「△2八角を打たせないようにプログラムすることも可能なのですが、巨瀬さん自身も上記の100万円企画でこの手に気付いたらしく、そうなると今回の事前貸し出し、途中でのプログラム変更不可のルールでは、どうにもなりません」を修正するとすれば、以下の様な感じになると思います。
いかがでしょうか?
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巨瀬さんによれば、△2八角を打たせないようにプログラムすることも可能(これにどの程度の時間がかかるかは言及されていません)だという話です。
しかしながら、今回の電王戦のルールによれば、巨瀬さんが△2八角に気づいた100万円企画の時点では電王戦本番用ソフトを変更することは出来ません。また、同ルール上、阿久津八段には電王戦本番用ソフトが貸し出されているため、△2八角の手順の検証が可能となります(ただし、実は阿久津八段は既にこの時点で検証済みだったということです)。
巨瀬さんは100万円企画で△2八角の手順に気づきましたが、上記の通りルール上、巨瀬さんにソフトを変更する意思があったかどうか、あるいは本当に技術的に△2八角を打たせないように変更可能なのかどうかにかかわらず、変更することはできませんし、巨瀬さんが阿久津八段による検証を阻止しようと思ったとしてもできません。
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言い訳になってしまいますが、限られた時間のなかで書いている文章であり、最初から上記のように書けば誤解がなかったとは思います、誤解を与えてしまい申し訳ない気持ちもあります。それにしましても、「明らかな誤り」にはあたらないのではないかなと思っています。
書いていただきました「修正」に関することについては、コメント内の話に限れば、ほぼその通りだと思います。記事中に書いたことについては、上記の通り巨瀬さん自身のお話に基づいての表現となっています。ルールの良し悪しを議論するつもりはありませんでした。
コメントありがとうございます。
管理人様
「巨瀬さんはルールではなく阿久津八段の指し手を問題にしています」が全てだと思います。
巨瀬さんは彼自身が信じるところの対局者の挟持を阿久津八段に求めたわけですから、彼もまた同様に、自らの受け入れたルールについて局後にそれを俎上に載せるような態度はとるべきではないと理性では分かっていたはずです。
しかしながら「もし直すことができら」というタラレバをつい滲ませてしまったとしても、また人として偽らざる感情の吐露でしょう。それを一般のメディアがつい面白いと取り上げてしまうのは仕方ないのかもしれませんが、将棋を対象とされている貴ブログまでもがそうした言葉を拾ってしまうのは巨瀬さんに少々気の毒ではないかと感じた次第です。
繰り返しになりますが、2八角が人間から見て明らかに悪手としても、それは実行中に落ちてしまうようないわゆるバグの類ではなく、容易に悪い副作用なく「修正」可能であるかどうかも実現する以外にはっきりできないのですから、巨瀬さんのその言葉を立脚点に置くのはさらに彼にとって不幸な議論につながるのではないかと感じました。
巨瀬さんが本当に問題にしてほしかったところについて、先般橋本八段がツイッターで意見表明されてましたし、阿久津八段も素直に葛藤について語られていたわけですから、棋士の中では一定の理解が得られるものなのかもしれません。そちらを論じていただけると巨瀬さんも本望なのではないでしょうか。
以上です。真摯なご対応誠にありがとうございました。
読者様
何度もコメントいただきまして、ありがとうございました。
私は、今回のルールについて記事で良い悪いとか、誰かの見解を述べるつもりはありませんでした。しかし、将棋を普段見ない方、今回電王戦を初めて見る方にとっては、「開発者がハメ手を知ってたのなら、なぜ対策しなかったの?」という疑問は出てくると思いました。
そもそも、私自身が1年前までそのような「初めて見る」に近い立場にあり、当時の電王戦でルールについて調べて、事前に貸し出しをしていて、プログラムが変更不可なのだということを知りました。
ですから、そのような方に、ルールについてさらっとお伝えしたかっただけです。
巨瀬さんがプログラムの修正について発言したのは、記者の質問に対する答えとして発言したもので、巨瀬さん自身がすすんで言及したかったわけではないと思います。むしろ嫌々答えているように見えました。上記の通り、私としましてはそれを主眼に記事にしたつもりはありませんし、面白おかしく、議論のネタしようというわけでもなかったことはご理解いただけますと幸いです。誤解をあたえてしまったとすれば申し訳ございません。
ご指摘の、「巨瀬さんに気の毒」との視点は欠けていました。今後の記事作りの反省点にしたいと思います。
橋本八段については記事にしております。私は、橋本八段が対局者の気持ちを代弁するとともに、理事選挙に立候補する身として、「自分ならもっとよい企画を運営できる」と表明しているように見えました。
この記事をリリースしたのが当日の昼ごろで、対局直後のインタビューのみに基づいて記事を書いています。その後記者会見などを受けて、このFINAL第5局関連の記事をいくつか書いています。橋本八段の記事もそのうちの一つですが、こちらの記事では巨瀬さんの発言を、なるべく私の主観を排して記事にしています。
このたびはご助言いただきありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。