2015年3月21日に開催された将棋電王戦FINAL第2局(後手・永瀬拓矢六段 VS 先手・コンピュータソフトSelene)は、永瀬拓矢六段が88手目に鬼手△2七同角不成を見せ、Seleneが停止。
どうやらこの角不成で、Seleneが投了信号を発した模様。
この対局の扱いを巡って立会人らが協議した結果、永瀬拓矢六段の勝利が確定しました。詳細な棋譜は日本将棋連盟モバイルなどでご確認ください。
△2七同角不成?!
力戦の序盤から中盤、そして終盤の入り口に差し掛かったところ、永瀬拓矢六段が88手目を指した時に事件は発生しました。
なんと永瀬六段は、直前に打った角を不成で敵陣に侵入させました。
読み上げの飯野愛女流1級が「後手、2七同じく角成らず」と読み上げると、ニコニコ生放送で解説していた屋敷伸之九段は「な、成らず!?え?な、成らず?意表、意表の惑わせる手筋ですかね」「珍手が出ましたね」と驚きました。
当初、この「不成」は永瀬六段がSeleneの読み筋を外し、時間を消費させる戦略かと思われました。
Selene、バグって停止。投了信号
しかし、これによってSeleneはまさかの停止。
ロボットアーム・電王手さんは投了しなかったものの、棋譜コメントによれば、Seleneは投了信号を送った模様です。
このまさかの停止で、立会人の三浦弘行九段らは対局の扱いをめぐり協議に入りました。
永瀬拓矢六段は知っていた
実はこの不成による投了、永瀬拓矢六段は事前に知っていたようです。
開発者の西海枝(さいかいし)昌彦さんによれば、Seleneは角、飛車、歩の不成に対応していないとのこと。
それを永瀬六段は事前に見切っていた模様。
しかしそれであれば、18手目の△8八角成でもこのバグを突くチャンスはあったと思われますが、あえてその場面では見送り、この88手目まで待ち必殺技を炸裂させたことになります。
策士の戦略は千日手ではなかった
永瀬拓矢六段は、事前の「電王戦FINALへの道」というドキュメンタリーで「勝ち負けではない方法を研究している」と述べていました。
そのときは、これは永瀬六段得意の「千日手を目指す」ことではないかと言われていましたが、まさかこういう手があったとは・・・!
Seleneは別の手を指していた
電王戦を担当する日本将棋連盟の片上大輔理事によれば、Seleneはこの88手目を受けて▲2二銀と指していた模様。△2七同角不成は王手ですから、この王手を放置した▲2二銀は反則ということになります。したがって反則負け、投了になります。
角成でも永瀬拓矢六段が有利
棋士らの検討によれば、88手目で△同角歩成とせず、△同角成でも後手に勝ち筋があった模様です。
それでも永瀬六段はこの鬼手を決行した、ということになります。
プロ棋士2連勝
これでプロ棋士は、第1局の斎藤慎太郎五段に続き2連勝となりました。
この対局は他にもいろいろ見どころがありましたので、詳細は追ってお伝え致します。
なお、注目の第3局は3月28日、先手・稲葉陽七段VS後手・やねうら王によって行われます。