2016年春に行われる第1期電王戦の詳細なルールが、第3回将棋電王トーナメントの特設サイトで発表されています。
第1期 電王戦 対局ルール(PDF)
ちなみにこちらが前回、2015年3月~4月に行われた電王戦FINALのルール(PDF)。
なお、以下の記事にも、少し第1期電王戦に関わる項目がありますので、よろしければ御覧ください。
この記事では、第1期電王戦のルールについて、電王戦FINALと比較するなどして分析してみたいと思います。
個人戦、2日制、2番勝負
将棋電王戦FINALに比べて最も大きく変わった点は以下。
・棋士5対コンピュータソフト5の団体戦から、1対1の個人戦となった
・2日制になった
・2番勝負(先後入れ替えて)になった
上記の資料では、持ち時間の詳細も発表されています。
持ち時間は各8時間、チェスクロック方式(1分未満の着手でも切り捨てない)。すべて消費したら1手1分の「1分将棋」に。
初日、2日目ともに昼食休憩が、2日目には夕食休憩があります。2日制の対局で2日目に夕食休憩があるのは、既存の棋戦では名人戦だけ。竜王戦、王位戦も2日制ですが2日目は夕食ないです。
封じ手は初日の18時。
[初 日] 10:00 対局開始 昼食休憩 12:30-13:30 18 時封じ手
[2日目] 10:00 対局再開 昼食休憩 12:30-13:30 夕食休憩 17:30~18:00
8時間という持ち時間は竜王戦、王位戦と同じで、名人戦より1時間短い。
立会人は棋士
立会人は日本将棋連盟の棋士が務めます。立会人はスポーツで言うと審判のようなもの。
棋士vsコンピュータソフトなので、一方から立会人が出る方式に異論もあるかもしれないですが、FINALでもそうでした。
例えばFINALでは、第2局でSeleneが角不成で停止した時、立会人の三浦弘行九段らが協議を行い裁定しました。
ただ、スポーツほど判定する機会が多いわけではありません。
ソフト開発者に投了の権利
FINALのルールでは明記されていなかった「ソフト開発者による投了の権利」が認められています。
FINALでは、第5局のAWAKEの開発者、巨瀬亮一さんがわずか21手で投了を告げました。
人間vsコンピュータソフトということで戦っているのに、ソフトの投了を人間が行うのはどうか、という議論があるように思いますが、今回はこれがルールとして明確にされました。
遅刻
遅刻に関するルールが少々変更されています。
FINALでは、棋士が自己責任で遅刻した場合、時刻した時間の3倍の時間が、遅刻した棋士の持ち時間から差し引かれるというルールでした。これはプロ棋士の対局では一般的なルール。
しかし第1期電王戦では、遅刻した場合でも
通常通り考慮時間中の離席とみなし手番から着手までの時間を持ち時間から引く
とされています。
つまり、遅刻した時の持ち時間3倍消費のペナルティがないです。先手番であれば初手から、後手番であれば2手目から長考したものとみなされるだけ。
これを何か棋士側の戦略に活かせる可能性は?例えばわざと遅刻してコンピュータの思考を狂わせるとか、そういうのがあるかも。
なおソフト開発者が遅刻したら、主催者が代理操作するとのこと。
コンピュータは封じ手しない
普通の棋戦では、封じ手は規定の時刻を経過したあとの最初の着手となりますが、第1期電王戦では以下のようになります。
封じ手は初日の 18 時以降の、棋士側の最初の着手を封じ手とする
コンピュータは封じ手はしないことになります。
コンピュータは封じ手~再開まで思考停止
また、
棋士が封じ手を行う事を宣言してから、2 日目の対局再開までは、コンピュータの思考を停止させるものとする。
ということで、昼食、夕食休憩と違って、コンピュータの思考が停止します。
人間vsコンピュータの難しいところですね。
棋士が考えることを禁止するわけにはいかないし、かといってコンピュータを思考させたままにすると、棋士が寝ている時とかも一方的に思考できることになるのでそれもできないのだと思います。
これが勝敗にどういう影響を及ぼすのか。
千日手、持将棋
2日目の15時までに千日手が成立したら指し直し。持ち時間は引き継ぐが、1時間未満だったら両者に同じ時間を足して短いほうが1時間になるように調整。持将棋で引き分けが成立した場合も同じ。
15時を過ぎていた場合はいずれも引き分けでその対局は終了。
時刻以外は電王戦FINALと同じルールです。
ソフトは第3回電王トーナメントのもの
これまでどおり、
将棋コンピュータソフトは原則として「第 3 回将棋電王トーナメント」に出場した際のソフトウェア
です。第1期電王戦では、ソフト開発者はこれに加え、詳細な設定情報も主催者側に報告しておく必要があります。設定の変更によって棋力や指し手を意図的に変えるようなことがないようにするためと思われます。
リベンジマッチとほぼ同じ時間
第1期電王戦のルールは、人間側に有利に働くのか、それともコンピュータが有利となるのか。
参考になるのは、2014年大晦日~2015年元旦に行われた森下卓九段vsツツカナの「電王戦リベンジマッチ」。持ち時間3時間、秒読み一手10分、人間側は継ぎ盤(検討用の盤)使用可能という特殊なルール下で行われました。
結果は、想定された時間内では決着がつかず森下九段が判定勝ちに。
この対局は休憩時間を除くと約16時間半にわたって行われました。これだけ見ると、持ち時間が長くなると人間が有利になるのかも。
一方、第1期電王戦の持ち時間も両者をあわせると16時間。それに秒読みが加わりますので、ほとんどリベンジマッチと同じような時間になりそうです。
ただ、リベンジマッチでは時間を使いきっても「秒読み10分」という安心感があったと思われるため、単純な比較はできません。
いろいろ書きましたが、どっちが有利なのかよくわかりません。詳しい方、教えて下さいますと幸いです。
日程
第1期電王戦対局ルールによれば、対局日程は未定となっています。ただ、2016年春ということは発表されていますので、電王戦FINALと同じような季節になるものと思います。
2日制2番勝負ということで、合計4日間楽しめます。
また何か情報が発表されましたら、この記事に追記するか、新たに記事に致します。
コメント
第Ⅰ期電王戦については。主催者と将棋連盟間の契約規定で。
立会人を。羽生四冠か渡辺棋王に指定しておいて。
叡王自身への遅刻のヘナルティは無しにして。
30分程度以上、決まった時刻より長く遅刻したら、
その分封じ手の時刻を遅らせると同時に。
叡王の対局権はその時点で消滅し、立会人が替わって、
優勝電王ソフトと対局する事にする
方が、面白く。かつ、主催者の賛成も得られたように思う。
そうすれば連盟は。この「巨大なペナルティ」を防止する
ために、第Ⅰ期叡王を予め宿泊施設で対局当日確保する
等。何らかの自主的遅刻回避手段を取るので、叡王遅刻等
のドタバタは起こらないのではないか。
対局場。ちなみに南禅寺なんでしょうかね?
コメントありがとうございます。
ユニークな発想ですね。そもそも、さすがに遅刻しないと思います。
でも3倍ペナルティだったら、万が一遅刻した時にイベントとして成立しなくってしまう可能性があるため、そうしたのではないかと考えました。
そういえば、対局場は発表されていませんね。羽生名人が電王戦に出たら南禅寺だとドワンゴ川上会長はおっしゃっていましたが、今回は出場しないため、別の会場になると思います。それにしても会場も楽しみです。
コメントありがとうございます。
なお。表現が不明確でしたが、私のは。「対局を10時から10時半の間で、
どこで、初めても良い」というようなルールで、発表のとは違います。
遅刻した叡王への。持ち時間の上乗せそのものも、無しとするものです。
叡王や代理棋士の持ち時間は常に8時間。
ようするに「渡辺ないし羽生へ交代」なら叡王。
第1期電王戦優勝ソフトの開発者からは、「30分以上遅刻する事」
が内心期待されているので。対局相手に対し遅刻しても、全く迷惑が掛から
ないという訳ですね。ちなみに。
こうするメリットは。学術的観点から。対局の条件がより「均一」になり。
研究データとしての質が、より向上すると言う点が一例として挙げられます。
2局するの。そういう研究利用の話が。背後に有るからじゃないんですか?
コメントありがとうございます。
いやー、面白いご意見だと思います。でもまあ遅刻云々に関してそれほど深い意味はないと思いますよ。
なるべくイベントとして失敗のないような方向にしただけだと思います。
せっかく研究したのに遅刻するわけないとおもいますし。
2番勝負なのは、先手と後手で勝率がけっこう違うということが理由だと聞いています。
コメントありがとうございます。