2015年11月21~23日に開催される第3回将棋電王トーナメントのに出場する、各ソフトの自己PR文書が公開されています。
この記事では、全部で30あるソフトの自己PR文書をすべて読むのが大変だ、そんな時間はないのだという皆様のために、それぞれのPR文書から、私(管理人)が重要だと思う部分を勝手に推測し、一言ずつ抜粋してご紹介します。
電王トーナメント観戦の手助けになりましたら幸いです。
なお有力ソフトの参加状況は以下の記事で。
第3回将棋電王トーナメント出場ソフト発表。前回優勝のAWAKEや選手権準優勝のNDFは不参加
自己PR
PR文書は電王トーナメント特設サイトで公開されています。
以下、PR文書抜粋です。並び順番は「出場ソフト」のページの並び順と同じです。(一部、管理人から補足の文章を加えています。補足文は人によっては苛々するかもしれないので、読み飛ばして下さい)
きふわらべ
二次創作ゲームを作るぞ、と思っていたら 電王戦が直撃☆そっちへ面舵を取ることにした。
二次創作ゲームから将棋への面舵の切り方がダイナミックです。成果が二次創作ゲームにフィードバックされることを期待。
ねこ将棋
ねこ将棋の特徴
・ねこの鳴き声
・ねこのアニメーション
・アクション数20
・総フレーム数800
なぜかねこと将棋は相性が良いですね。
Labyrinthus+
明らかに詰む状態で投了しないソフト相手には、条件によって発動する指了図を恥ずかしいものとする辱め詰み(シャングリラ様モード)機能付き
発動するのを観たいです。解説の方には、発動したところを解説してほしいです。
Ponanza
Ponanza はこれまでも度々大きな舞台で従来のプロ棋士の体系だった序盤を逸脱するような手を指しつつ、勝利を収めてきている。今度の電王トーナメントでも観客の皆様にはこれまで見たことのない戦いを見せることができたらと考えている。
第1回優勝、前回準優勝で、今回も優勝の最有力候補であるPonanza。電王戦FINALでは、解説の森下卓九段に「子供の頃からの、将棋はこういう風に考えるんだということが覆る」と言われた指し方をして勝利。
Novice
ルール通りに指せます。(多分)
振り飛車党のソフトにするつもりです。(予定)
評価関数は時代錯誤の手動調整で実装しています。
振り飛車党のソフトは楽しみですね。
カツ丼将棋
ところで将棋の歌が少ないと思って将棋の演歌を作曲しました。
歌手 長沢千和子女流四段
作詞 袋小路宇治夫
作曲 カツ丼将棋
どこかで披露できるといいですね。
なるほど。
GA 将!!!!!!!!!
定跡は一切使用していません。なので、初手から延々数十秒考えます。
数十秒消費した挙句に、単に飛車先の歩を突くだけとか角道を開けるだけとか、そういう風にもなりますので、序盤に関しては自己対局の棋譜から定跡を構築する等の対策をしたいところです。
初手から考え続けるというのも個性なので、なくしてほしくない気もします。
ひまわり
38時間かけて△2八角を回避した事で有名?
AWAKEが2八角を打った局面、ひまわりはこれだけ読めば回避できるらしい。 pic.twitter.com/FZBemHR7os
— 山本一将@ひまわり (@kyamamoto9120) April 18, 2015
「△2八角」とは、電王戦FINALで阿久津主税八段がAWAKEに用いた、わざと△2八角を打たせ馬を作らせる戦法のこと。
shogi686
使用可能ライブラリの Apery を使うことを考えているが、それも未定。
謎のソフトだと思っていたのですが、今年の第25回世界コンピュータ将棋選手権に出場、1次予選を突破しているとのこと。Aperyを使うということは、一定のレベルにはありそうです。
tanuki-
平岡拓也氏の開発された Apery から派生した将棋の AI プログラムです。いわゆる Aperyチルドレンの一つです。
Ponanzaの山本一成さんもPV(後述)で言及。強いらしいです。
芝浦将棋 Jr.
プロ棋士同士の棋譜データベースや棋書に掲載されている序盤定跡をプログラム内に組み込むことや対局中に用いることはせず,さらには局面評価関数等の学習にも全く利用しないで,人間と同等以上のレベルの将棋ソフトを開発することを最終目標としています.
文章から感じるアカデミックな感じが素晴らしいです。
習甦
習甦は,より高精度な評価関数により大局観を実現することを目指して開発を進めてきた.習甦の評価関数においては,盤面全体の各升の利きおよび持ち駒によって,自玉および相手玉の安全度を評価する.これら安全度の関数として各駒の価値を算出する多層構造を持つ評価関数に特徴がある.
精度の高い評価関数を目指しているみたいです。芝浦将棋もそうですが「.」と「,」を使用するのが理系論文っぽいです。余談ですが開発者の方はイケメンです。
メカ女子将棋
明後日の方向にコンピュータ将棋界をリードします
キングオブネタ勢。
nozomi
名前はラブライブの東條希と新幹線ののぞみからもらいました
ラブライバーと鉄ちゃんの融合。
大合神クジラちゃん 電王戦Ver.
2015年8月3日 クジラちゃんが貴族になりました!
シーランド公国で爵位を取得されたようです。シーランド公国はイギリス沖合の自称国家。ネタ国家。「Lady」の爵位は29.99ポンド、5000円ぐらいで取得できます。
Calamity
強力な詰めルーチン搭載(なのは詰めとして公開)
江戸時代の名作 611手詰めの「寿」を解く
常に詰みを狙い、一発逆転するポテンシャルを秘めています!
これ面白いかもしれないですね。詰み発見能力で一発入れる可能性もあるのか。
Scherzo
評価値に応じて若干読む深さをコントロールする予定です。
スケルツォは、イタリア語で「冗談」の意味とのこと。また、音楽の楽曲区分「諧謔曲」を表すそうです。
超やねうら王
・現時点(9月26日現在)では開発者本人のやる気がゼロ%
・開発者は甘いものの食べ過ぎで虫歯が痛すぎて考える気力を喪失
・今年も完成するかどうかがわからない
盛大に「予防線を張ってる」のがいいです。虫歯は心配です。治療されたほうが。
大樹の枝
平岡 拓也
プログラム全体を担当。
趣味で 5 年程前から開発を続けています。
Ponanza を倒す事を目的に作成しています。
Aperyがチャリティオークションで命名権を売却しこの名前になっています。「Ponanzaを倒す事を目的」と堂々と宣言。楽しみです。
SilverBullet
「Apery」「なのは mini」「Blunder」「れさぴょん」「Lesserkai」(順不同)などの現在手に入るソースコードを元に、いい感じに取り入れて C#へコンバージョンしたプログラムです。
2ヶ月で作ったとのこと。2ヶ月でどこまでできるかという体を張った実験(?)の意味もあるようです。
CGP
正直マンパワーもマシンパワーもまったく足りません。
正直です。
名人コブラ
完全にエンジョイ勢です(すみません…)
正直です。
QinoaSyougi(きのあ将棋)
情報化が進み社会の枠組みの中に人工知能がより組み込まれるようになると、昔は機能したけれど今はあまり活躍しなくなったシステムの簡略化がより重要になる気がします。
面白い示唆。ソースコードもリストラしてシンプルになったようです。
技巧
人間が使っている「手筋」の概念を、コンピュータに理解させることが目標です。
これも面白そうですね。技巧については以下の記事もご覧ください。
電王トーナメントに「技巧」という強すぎるソフト現る。参考文献に多くの棋書、人間に近いタイプの可能性
ETCShogi81
20XX年将棋の解析が終了する
それはつまり
先手勝ち後手勝ち引き分けのどれかである
つまりその時の評価値は
1(勝ち) -1(負け) 0(引き分け)のどれかである
本ソフトは時代を先取りしてその評価値を採用した
未来を先取りとは、素晴らしい?評価値が楽しみです。
※2015/11/19 19時現在、出場ソフト一覧から削除されています。
こまあそび
・銀桂はく劇的にするため、敵陣に近いほど点数を高くしている。
・金は上部に出る点を低くしている。
・金は角と筋違いの位置の点数を高くしている。
・中盤、終盤は角と金の価値がほぼ同じにしている。
・竜王、飛車の価値を高めに設定している。
評価関数は手動でチューニングされているとのこと。また、「く劇的」はおそらく「攻撃的」ということだと思います。
大将軍
前回出場(N4S)においては、盤上の 4 駒の位置関係をもとに、評価関数を学習していました。
しかし、大会 PC のスペック変更により、搭載メモリが 32GB と減ったため、4 駒の評価関数をメモリ上に展開することができなくなりました。
4駒関係はやっぱり辞めたようで、そのため名称もN4Sから変更されています。
Selene
Selene では、多数のアルゴリズムの中から、ある程度のランダム性で探索に使⽤するアルゴリズムとパラメータを選択し、勝ち残った場合に使用する。という過程を繰り返すことで最適な探索アルゴリズムを構築する方式です。
コンピュータ将棋選手権史上初の入玉宣言勝ちが記憶に新しいです。今回はチームでの開発体制となっており期待です。
※2015/11/19 19時現在、出場ソフト一覧から削除されています。
おから 2015
名前の由来
あから 2010 のパロディです。
素直にパロディだと認めているのがいいです。
D将棋
プログラムが”D言語”で書かれています
普通はC++で書く(?)ようです。D言語の優位性を証明できるか。
さいごに
棋士にもそれぞれ特徴があるように、コンピュータ将棋ソフトにもそれぞれ特徴があって面白いと思います。
特に、将棋初心者にとっては対局だけ見ても何が面白いのか伝わりづらいと思うので、このPR文書はそれを補完する意味でもよいと思いました。
同サイトでは以下のPVも公開されています。
開発者の方々の罵り合い(?)が面白いです。
注目の第3回将棋電王トーナメントは、11月21(予選リーグ)、22(決勝T初日)、23日(決勝最終日)に行われます。
コメント
shogi686ですが、wcsc25で選手権に初出場して一次予選5位、二次予選18位でしたので、
だいたいのポジションは見えるかなと。
開発者の方はクジラちゃんの鈴木さんの会場実況ニコ生にも出演されていました(と記憶しています)。
コメントありがとうございます。
情報ありがとうございます。
記事の該当部分に追記させていただきました。
PR文書では「Aperyを使うかもしれないが未定」なので未知数なのかなと思っていましたが、実績があるということは一定の成績は残しそうですね。