先日、ちきりんさんと永瀬拓矢六段のラジオ番組でのトークを当サイトが記事にしたところ、ご本人のツイッターがその記事をツイートして下さり、さらに、その真意をツイートしてくださいましたので、ご紹介します。
永瀬拓矢六段とのラジオのトーク内容は以下の記事をご覧ください。ちきりんさんと将棋との関わりや、棋力なども簡単にご紹介しています。
普通に棋戦にコンピュータが参加したら面白い
上記の記事のラジオ番組では、ちきりんさんは「竜王戦にコンピュータソフト出場枠」を設けて、女流棋士やアマチュアと同様に、コンピュータソフトが参加するのを見てみたい、と発言しました。
そこでは時間がなかったためか、「竜王戦」だけの言及にとどまったのですが、当サイトがこの件を記事にしたところ以下のようにツイッターで発言がありました。
あたしとしては「人間vsコンピュータ」になるより、普通に棋戦にコンピュータが参加したほうがおもしろいと思ってるんだよね。竜王戦だけじゃなく、順位戦も出ればいいし、さらに言えば、奨励会に入るところから始めればいーじゃん的な。
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2015, 4月 2
(コンピュータが)タイトルホルダーに挑戦したいなら奨励会→三段リーグ→プロソフトに!なった後→挑戦権を獲得して、番勝負で挑戦、っていう手順を踏めば正当な感じかなと。
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2015, 4月 2
奨励会試験
ちきりんさんが言う、奨励会からプロ入りさせて棋戦に参加する、とはどのようなことなのでしょうか。このサイトは将棋にあまり詳しくない方にも見ていただきたくて作っていますし、ちきりんさんをきっかけこのサイトを見られた方もいるかもしれませんので、順に説明します。
まず、将棋のプロ棋士になるにはその養成機関である「新進棋士奨励会(通称:奨励会)」に入会する必要があります。別ルートでプロ棋士になる道もないではないですが、基本的にはプロ棋士を目指す人は奨励会に入ります。
奨励会への入会には試験を受けて合格する必要があります。奨励会に入会するだけで、すごいことです。この時点でアマチュア四段ぐらいですか。
ちなみに、奨励会試験では単に棋力が高いことだけでなく、筆記試験や面接試験も受ける必要があります。
また、プロ棋士に師匠になってもらう必要もあります。
プロ入り
6級から始まる奨励会でしかるべき成績を収めると、級が上がっていき、順調に行けば三段まで昇段します。
ちきりんさんのいう「三段リーグ」とは、奨励会三段の人たちが参加するリーグ戦。半年毎に、リーグ戦の成績上位2名が(基本的には)四段に昇段、プロ入りします。つまりプロになれるのは年間4人で、四段になると順位戦のC級2組に配属されます。別ルートもありますが、割愛します。
四段になると、プロ棋士が参加する棋戦に出場できるようになります。
これがちきりんさんのいう「プロソフト」。
棋戦に参加
プロの将棋では、順位戦、竜王戦、王位戦などといった棋戦があります。タイトルホルダーとは、将棋界の7つ棋戦のタイトルを持つ棋士。ボクシングでいえばチャンピオン。
挑戦手合制によってタイトルを争います。挑戦手合制とは、現タイトルホルダーと挑戦者が、番勝負(7番勝負とか5番勝負)のタイトル戦で戦い、新タイトルホルダーを決定する仕組み。挑戦者になるには、棋戦を勝ち抜く必要があり、勝ち抜いた末に待っているのがタイトルホルダーということです。
現時点(2014年4月3日)では、羽生善治名人が王位、王座、棋聖をあわせた4つのタイトルを、その他の3つを糸谷哲郎竜王、渡辺明棋王、郷田真隆王将が保持しています。
ちきりんさんの「挑戦権を獲得して、番勝負で挑戦、っていう手順を踏めば正当」というのは、(人間と同様に)棋戦に参加して勝ち抜いた末に、タイトルホルダーに挑戦するのであれば正当だということだと思います。
身だしなみも大切
なお、名人戦だけはちょっと特別というか、挑戦まで長い期間がかかります。プロ入り後、順位戦C級2組のリーグ戦で1年間戦い、良い成績を収めるとC級1組に昇級。さらに1年間C級1組で戦い良い成績を収めるとB級2組に昇級・・・・というぐあいに、1年間で1つずつ昇級(C2→C1→B2→B1→A)していき、A級まで辿り着き、A級のリーグ戦で優勝すると名人に挑戦できるというぐあいです。こんなに長い期間かかると、プロ入り時には強かったソフトも陳腐化しそうですが。
ちなみに、将棋のタイトル戦の番勝負では和服を着るのが慣例となっています。なので以下のツイート。
挑戦権を獲得した暁には、ぜひ電王手君にも羽織袴を着せてください
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2015, 4月 2
ちきりんさんは「電王手君」と気安く呼んでいますが、本当は「電王手さん」です。
参加実績
朝日新聞大阪本社生活文化部の村瀬信也さんは、ちきりんさんに以下のようにツイート。
@InsideCHIKIRIN 2005年に「激指」というソフトがアマチュア竜王戦全国大会に特別出場し、ベスト16まで勝ち進んだことがあります。今はアマ大会に出場させるかどうか、ということが話題にならないほど強くなりましたが。
— 村瀬信也 (@murase_yodan) 2015, 4月 2
なるほど、そういう実績があったんですね。2005年ということは、Bonanzaによってもたらされた機械学習が当たり前になる以前のことです。
実現性とか妄想
実現性については、ちきりんさんのツイッターで以下の様なやりとりが。ソフトは「自分で対局会場へ行けるか」とか「電源供給どうするのか」とかいう問題。
それいいだすとねー。電源補給はランチタイムだけとかいう話になる。RT @sarasasol: まず自分で会場に行って自分で指すところからかな。RT (コンピュータが)タイトルホルダーに挑戦したいなら奨励会→三段リーグ→プロソフトに!→挑戦権を獲得して、番勝負で挑戦、の手順踏めば
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2015, 4月 2
とはいえ電王手くんをペッパー君にくっつければいいだけなんで、不可能でもなさそう。
RT @sarasasol: まず自分で会場に行って自分で指すところからかな。
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2015, 4月 2
ペッパー君とは、ソフトバンクが販売している感情を認識できるロボット。価格は36ヶ月の利用で120万円だそうです。あ、また「電王手くん」と気安く呼んでますね。電王手さんです。
未来的・・・。
そのうち「えっ? ○○五段ってコンピュータだったの?」みたいな時代がくるのか・・・ RT @Ness_5210: 初音ミクみたいにキャラクター化して奨励会からスタートしたら面白そう。みんな次第に感情移入して、応援するようになりそう。
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2015, 4月 2
ちきりんさん、ありがとうございました
私がこのサイトを始めたのは「将棋ファンの方だけでなく、将棋を知らない方、ルールは知っているけど日常的には観ないといった方々にも将棋の魅力を知ってもらいたい」という思いがあったため。なので、今回、ちきりんさんにこのサイトの記事をツイートしてもらって、そのフォロワーの方々に少しでも記事を見てもらえたのは嬉しく思っています。ありがとうございました。
ところで、ちきりんさんと他のユーザーの上記のやりとりを見ていたら、将棋棋士の育成ゲームとかあったら面白いと考えてしまいました。最初は自分より全然弱いけど、本とか買い与えると定跡や手筋を覚えて自分よりはるかに強くなっていくという・・・。もちろん、振り飛車の本を与えると振り飛車党に。藤井システムの本を与えると生粋の藤井信者に・・・・。
以上、ありがとうございました。
コメント
そしてアンフォラのリピーターに・・・・。
育成ゲーム、面白そうですね!
コメントありがとうございます。
育成ゲーム、いいと思ったんですよね。
これからは単に強いソフトではなくて、将棋の普及に役立つソフトを開発してほしいという思いもあります。
ありがとうございます。
電王手くんは第三回電王戦で使用されたロボットアームであり電王手さんはFINALで使用されたものということで、そのものが違うので電王手さんを気安く呼んだということではないと思います。
斎藤5段戦の時にロボットアームが進化したことで商品名(?)も変わったというお話しがありましたね。
今更こんな過去エントリーにコメントして申し訳無いです。
不慣れなもので参考としてデンソーのウェブページを貼ったつもりが自分のサイトみたいな貼り方になってすいません。
http://www.denso.co.jp/ja/aboutdenso/sponsor/denoute/
コメントありがとうございます!
ご指摘ありがとうございます。ええ、大丈夫です。その辺の事情は把握しております。
このラジオ番組はFINALの最中に放送されたもので、ちきりんさんは「くん」が「さん」になったことをご存じなかったのかなと。
あと読者の方が「電王手君」ってなんだ?と思うかもしれないと思って、その記事へのリンクを貼る口実として、半分冗談でちきりんさんにつっこみを入れています。
ありがとうございます。今後とも宜しくお願い致します