訃報です。
2015年2月21日、俳優で歌舞伎役者である10代目坂東三津五郎さんが亡くなりました。報道によれば、すい臓がんだったようです。数年前から入院したというニュースや、無事に退院したというニュースがあったりして、心配していましたが・・・まだ59歳という若さでした。
このサイトは将棋専門サイトなのです。が、なぜ坂東三津五郎さんの訃報について書いているかといいますと、人気ドラマで将棋の棋士を演じたことがあるからです。
古畑任三郎の名作「汚れた王将」
三谷幸喜さん脚本のドラマ「警部補 古畑任三郎」の1stシーズン第5話は、1994年5月11日に放送された「汚れた王将」。
坂東三津五郎さんはこのドラマで「米沢八段」という役を演じています。米沢八段は殺人事件の犯人で、古畑を相手に自らの罪を隠蔽しようと画策します。ちなみに、当時は「坂東三津五郎」ではなく「五代目坂東八十助」を名乗っています。
私も数年前に観たきりですので、詳細な記憶はないのですが、いくつかのシーン、トリックが印象に残っています。いずれも将棋をからめたものでしたので、今観てみても面白いと思います。
竜人戦、2日制の対局
事件の舞台は2日制のタイトル戦である「竜人戦」。
タイトルホルダー「竜人」は、ガキっぽくてちょっとだらしない感じの青年だったと思います。それに対峙するベテランが米沢八段。現在の糸谷哲郎竜王も離席でいろいろと言われることがあると思いますが、それとはちょっとタイプが違いますが、世代の違いを鮮明に映すタイトル戦です。
米沢八段は、前述のとおりベテランで、確か、このタイトル戦を落とすと棋士としてはもう辛い、是が非でもタイトルを獲らなければ、みたいな設定だったと思います。
封じ手トリック
最大の見所は封じ手のトリック。米沢八段が封じたのですが、これが実は白紙。
米沢八段はその「封じ手になるべきだった手」を一晩考えたあと、翌朝に「ある方法」で封じられているはずの紙に符号を記入し、開封時には白紙ではなく、そこに封じ手が書かれているという状態にしたいと考えました。
「ある方法」というのは、ネタバレですがカーボン紙です。
しかし、封じ手が白紙だということを、立会人にあっさり見ぬかれてしまいます。そこで、米沢八段は部屋を訪ねてきた立会人を手にかけます。米沢八段は灰皿で立会人の頭をなぐり、血がブシャーです。
成れない飛車
翌日、殺人事件が発生したというのに対局は再開。しかも、いろいろな事情により駒は米沢八段の部屋にあった駒を使うことに。
米沢八段はカーボン紙トリックを決行。封じ手は「書かれた」状態で開封されました。
しかし、その対局中に米沢八段は、血がブシャーした時の血痕の一部が、飛車の裏側に付着していることに気付きます。
米沢八段の部屋にあった駒に、被害者の血痕。これは決定的な証拠です。
なので、米沢八段は飛車を成って(裏返して)竜を作る絶好のチャンスで、飛車成を見送り不可解な別の手を指してしまいます。
詰み、そして感想戦
前述の不可解な手のために米沢八段は敗勢に。と同時に古畑は米沢八段を殺人事件の犯人として追い詰めていきます。
結局、米沢八段は対局に敗北し古畑にも自白させられ、盤上と事件、2つの「詰み」を迎えます。
しかし古畑に詰まされたはずの米沢八段はなぜかスッキリとした表情(という記憶があります)。なぜか?それは敗着となった飛車を成らなかった手を棋士として「感想戦で説明できない」という理由(だったと思います)、だったら逮捕されたほうがマシだよ、という感じの終わり方だったと思います。
大変記憶があいまいで申し訳ありません。気になった方は実際に観てみてください。
ツッコミどころ
まあドラマなので、将棋ファン的にはいろいろツッコミどころはあります。
例えば、「封じ手」は本来2通用意されるのであのようなトリックは成立しないとか、封じ手は符号だけでなく駒の移動を示す矢印も書くのでカーボン紙では記入できないとか、飛車の裏に血が付いていたらさすがに並べるときにわかるだろとか・・・。でもいいんです。ツッコミながら観たら、それはそれで楽しいのです。
ちなみに、古畑任三郎の将棋の実力は大変弱く、部下の今泉君に負けてしまいます。たしか今泉君は将棋部という設定だったはず。
記憶があいまいすぎる。もう一度観てみたいなあ・・・・。歌舞伎と将棋、日本の伝統という点で共通しますし。見どころが多いです。
最後になりましたが、坂東三津五郎さんのご冥福をお祈りします。
素晴らしい作品をありがとうございました。