2015年3月18日に放送があった第65回NHK杯テレビ将棋トーナメントの出場女流棋士決定戦は、対局それ自体ももちろん見どころだったのですが、対局前にも面白い企画がありました。
それは、解説の阿久津主税八段による対局者の各能力に対する「5段階評価」。
このようなことって毎年やってるんでしょうか。見逃した方のために簡単ではありますがその概要を記します。
両対局者に対する評価
この日対局したのは甲斐智美女流二冠(女流王位・倉敷藤花)と香川愛生女流王将。
阿久津八段は、甲斐智美女流二冠について「ちょっと前に初タイトルを取ったという印象だったが、それから着実に積み上げてもうタイトル7期かと。(女流)五段ということで充実しているなと」と話し、香川愛生女流王将については「タイトルを逆転防衛ということで。若いですし、逆境を跳ね返す力強さがある」と述べました。
甲斐智美女流二冠に対する5段階評価
そして、2人の特徴を数値化するという企画が始まりました。まず、甲斐智美二冠については以下のとおり。
序盤力 3
中盤力 4
終盤力 4
総合力 4
秒読み力 5
阿久津八段は、甲斐女流二冠の序盤に低めの評価。
この理由について「中飛車、石田流、相振り飛車といった得意系を指すが、序盤はおおらかで、積極的にリードしようということはない。安全に駒組みをするための研究をしている、昔ながらのおおらかな棋士」と説明。
中盤については「駒がぶつかってきてからブレがない。リードを奪われても離されないでヒタヒタとついていく。安定して80点、90点の手を重ねる」、秒読み力の高評価の理由は「男性棋士と戦っても見劣りしない。競り合いで勝ったり。勝負どころを見極める力があり、秒読みになっても慌てない」と説明しました。
香川愛生女流王将に対する5段階評価
次は、香川女流王将の評価。
序盤力 5
中盤力 3
終盤力 4
総合力 4
秒読み力 4
阿久津八段は香川女流王将について「甲斐さんと非常に対照的な将棋で、香川さんは序盤力が5。序盤がうまいのもあるが、意欲もすごい。勉強熱心。関西に所属しているので関西の若手棋士と研究されているのでしょうね。新しい最新型も多く指されている」と分析。
一方、中盤が低評価の理由について「混戦のゴチャゴチャした中盤戦で慌ててるシーンなんかも見たことがある。経験を積めば強くなると思う」と述べました。
阿久津八段は「終盤は良くなったら逃さないですし、総合的には安定している。秒読み力は、持ち時間の短い女流王将戦を2連覇しているので5を付けたいが、甲斐さんと比べると少しだけ下。4.5ぐらい」と説明しました。
斬新な企画
なかなか、プロがプロを評価する、しかも数字で評価するというのは難しいと思いますが、すごくわかりやすくて感謝。
個人的にはこれからもやってほしいですね。ただ、男性棋士が男性棋士を、または女流棋士が女流棋士を数字で評価する、となるといろいろ禍根を残しそうな気もしますが・・・。
なお大平武洋五段はこの企画に、以下のようにツイート。
録画したNHK杯を囲碁、将棋で見ています。阿久津さんの5段階評価とか斬新。怖いけど自分もやってもらいたいです。自己評価としては、願望込で序盤2中盤3終盤3総合3秒読み3くらいはほしいです。
— 大平武洋 (@oohira243) 2015, 3月 15
謙遜する大平五段でした。