【提言】将棋連盟は障害者向けのサービスの充実を

 アライコウと申します。これまで棋士の魅力や棋書について何度か寄稿してきましたが、今回は私が以前に経験したことについて書いてみたいと思います。

将棋会館道場にやってきた車椅子の男性

 2年ほど前のことです。私は千駄ヶ谷の将棋会館道場で指していました。そのとき、珍しい光景を目にしました。車椅子の男性がやってきたのです。年齢は私と同じ、30歳前後だったと思います。

 もちろん、車椅子の男性が珍しいということではありません。将棋道場という場所で、そうした人を見るのは初めてだったのです。しかし、何らおかしいことではないと思い直しました。将棋をはじめ、ボードゲームは頭脳の勝負です。スポーツと違い、たとえ体が不自由でも考える力さえあればいいのです。健常者ともハンデなしで勝負ができるのは、ボードゲームのいいところだと思います。

 ただ、その男性は体の大部分が麻痺という障害を抱えているようでした。自分では車椅子を操作できず、別の初老の男性――おそらく父親――に押されて移動していました。つまり、自分で駒を持つこともできないのです。どうやって対局するのだろう、と思いました。

そして対局

 やがて、その男性と私との対局が組まれました。手合割は、私の角落ちだったか飛車落ちだったか……とにかく大駒落ちでした。男性は確か7級くらいだったと思います。

 男性は言語を発することも困難なようで、符号を言って指し手を示すこともできませんでした。しかしまったく動けないわけではなく、動かしたい駒をどうにか手で、あるいは腕全体で指し示し、付き添いの人に代指ししてもらっていました。時折「これ?」と確認してもらいながら。そんな対局でしたが、思いのほかスムーズに進行しました。

 対局は、私が勝ちました。彼は最後の一手まで指したのですが、投了のとき、とても爽やかな笑みを浮かべたのが強く印象に残っています。やはり言葉は発せなかったのですが、負けたけれどいい勝負ができたと言ってくれているようでした。それを見て、私も妙に清々しい気持ちになりました。

障害を負った棋士たち

 そんなことがあってから、障害者の将棋に関心を持ちました。視覚障害者の団体を見学したときは、盲人将棋大会というものの存在を教えていただきました。間もなく開催40回を数えるほどの、歴史ある大会です。盲人将棋は盤のマス目が枠で区切られており、駒には種類がわかるように点字が施されるなど、工夫が凝らされているのです。

 また歴史を紐解くと、視覚障害を負った棋士が存在します。現在も根強い人気を誇る戦法、石田流の創始者は、江戸時代の石田検校だと言われています。検校とは盲目の役人のうち、最高位に与えられる名称のことで、他にも石本検校という人物が、先日の寄稿でも取り上げた棋聖・天野宗歩と互角の勝負を繰り広げた記録が残っています。

 現在のプロ制度以後では、故・西本馨七段がいます。1948年の四段プロ入り後に視力を喪失し、それでも1973年に引退するまで現役で活動していました。将棋ペンクラブログに西本七段のエピソードが掲載されていますが、どれほど大変だったのかと胸を打たれます。

 これらの事実は、たとえ障害を負っても将棋は強くなれるということの証明だと思います。

障害者がもっと将棋を楽しめる環境を

 想像している以上に、障害者の間で将棋は楽しまれていることを知りました。今後、障害者が将棋を楽しむ環境が、もっと充分に整えられてほしいと思います。

 たとえば将棋会館道場の料金、身体障害者は割引となっています。ウェブサイトにも明記されていることですが、案外知られていないのではないでしょうか。車椅子で道場に入れること自体、知らない人が多いかもしれません。「お体の不自由な方へ」といった案内ページを作成するなど、もっとアピールしてもいいと感じました。

 おじさんばかりというイメージで、道場には行きづらい……普通の女性でさえ、こんな風に思ってしまうといいます。障害を抱えた人は、なおさら道場には行きづらいと感じているのではないでしょうか? 将棋ファンの拡充のためにも、そして社会の流れの上でも、障害者の方に向けたサービスの充実、体勢の整備が急務だと思います。

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 この記事を書いた私(アライコウ/@araicreate)は、将棋小説「メイジニア聖棋士団物語」を小説投稿サイト「小説家になろう」で連載し、このたび完結させました。

リンク(小説家になろうへ)

 奨励会の年齢制限でプロ棋士になる夢を絶たれた青年が、召喚された異世界で将棋普及に奮闘するという内容です。将棋小説はいろいろとありますが、ファンタジー世界を舞台にしたものは、おそらくこれが本邦初なのでは? と思っております。対象年齢は設けておらず、しかもすべて無料ですので、ぜひご覧いただければ幸いです。

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