竹俣紅女流、連珠の中村茂名人と五目並べ対決。「天下一文道会」で平手戦。戦型は花月に

2015年10月2日のTBS系「最強文化系コロシアム 天下一文道会」に竹俣紅女流1級が出場し、連珠の中村茂名人と五目並べで対決しましたので、ご紹介します。

実はこの記事、上記放送の翌日には書いていたのですが対局の勝着/敗着がはっきりわからずにいて、もう少し考えてみようと思っていたところでした。そんな時、竹俣女流のブログを見てみると。

中村名人との対局。(竹俣紅オフィシャルブログ)

番組で解説をされていた連珠の岡部寛九段が、ブログで対局の詳しい解説をされていることを知りました。

竹俣紅女流-中村茂名人の五目並べ対決を解説!(1111号室)

ああ、よかった(?)。対局の詳しい解説は上記のブログをご覧いただければと思います。

この記事では視聴者の目線で、そして将棋ファンの目線で本局の模様をお伝えしたいと思います。

五目並べ対決

五目並べと連珠は少しルールが違います。

石を5つ直線に並べることができれば勝ち、というのは変わりませんが、連珠の場合は先手(黒)のみに「禁手」と呼ばれる打ってはいけない手が課されています。具体的には三三、四四、長連が禁手で、反則負けとなります。これらはそれぞれ、3つ並んだ状態を同時に2つ以上作る、4つ並んだ状態を同時に2つ以上作る、6つ以上を一直線に並べるという意味です。

これによって先手と後手に有利不利ができないようにしています。

将棋でいうと、先手だけ千日手禁止、みたいな感じ(実際はそんなルールはないです)だと思います。

竹俣女流vs中村名人の対決は禁手のない五目並べで行われました。

中村茂名人

中村名人はとんでもない人のようで、1975年に16歳で連珠の第13期名人戦(全日本連珠名人戦)を制して名人に。その後通算25期名人を獲得。56歳の現在も名人。世界大会も2度制して現在世界ランク1位だそうです。

まずエキシビションとして、この中村名人に元衆議院議員の杉村太蔵さんがハンデ戦で挑戦。結果は、中村名人が4つ並べているのに杉村さんはそれに気付かないというミスを犯して頓死。将棋で言えば一手詰みの見逃しでした。

正直参考にならない戦いかと思いましたが、竹俣女流はこれを見て「先ほどの対局を見て、おっと言わせられるかなというのはあります」と発言。

容姿とは裏腹に

番組ではナレーションで竹俣女流のことを「中学2年生でプロ入り」「現役最年少の天才少女」「可愛すぎる女子高生棋士」などという言葉で紹介しました。そして「その手筋は、容姿とは裏腹にとにかく強気!!」とも。「手筋」の使い方としてはちょっと将棋用語の本当の意味とは違う感じですが、こうやって将棋用語を違う意味で使われるのはもはや棋士がバラエティ番組に出演した時の定跡なのかもしれませんので目くじらは立てません。

「手筋」は、部分的なセオリーとかテクニックみたいな意味。ここでは「棋風」のほうがあってたかも。でも竹俣女流を出演させてくれてありがとうTBS。

竹俣女流は「敵の打ちたいところに打て、という将棋の格言がすごく(五目並べに)似ていて、そういうところを活かしていければ」と意気込みを語りました。

平手戦

いよいよ▲竹俣紅女流vs△中村茂名人のハンデ戦での対局が始まるかとおもいきや、竹俣女流が「ちょっと待って下さい!」とストップ。

そして「せっかく名人と指させていただくので、できれば平手で教えていただきたい」と平手戦を要望。名人もこれを受諾しました。

前述のとおり五目並べにおいては先手が有利ですから、それ以上のハンデはいらぬという意地。

花月

戦型(珠形)は、先手の竹俣紅女流が花月を選択。

20151008120341-1

このように先手(黒)が斜めに2つ並び両方白に接している形が花月。「最強の攻め」の定石らしいです。強気な手筋の竹俣女流らしい戦型選択。

なお、上記の岡部九段のブログとこの記事では、局面図が異なるように見えますが、回転すれば同じものです。岡部九段は先手から見た図(こちらのほうが正しい表記法と思われる)、この記事ではテレビに映されたそのままの図となっています。

有段者の手

解説の岡部九段が「明らかに有段者の手」と指摘したのが以下の一手。

20151008120359-2

次にJ6に黒を打てれば四三を作る(4つ並んだ状態と、フリーで3つ並んだ状態を同時に作る)ことができ黒の勝利が確定。連珠ではこれを「見せ手」というらしいです。

将棋でいえば「詰めろ」。

攻める黒、守る白という展開が続きます。

中村名人のスタイル

中村名人は本気になってくるとあぐらになり、肘で足の裏のツボを押すんだそうです。これは名人戦でもやっているという「中村スタイル」。これによって慌てて打たないように気をつけているんだとか。将棋でも応用できます。手拍子で指さないように。勉強になりました。

20151008120438-3

上記の局面で、名人は「中村スタイル」に。勝利を確信しているようにも見えました。

うーん。確かにこれはまずい。これは詰み(黒がどう応じても白が5つ並ぶ)がありそうです。読み切ってみて下さい。

投了へ

竹俣女流も次の手を打たれて「ああ、なるほど」と、おそらく詰みを見つけた感じです。

20151008120447-4

将棋ファンにとっては辛い時間。

20151008120459-5

上の局面で竹俣女流が投了。白がフリーで4つ並んでいますので、どう応じても5つ並ぶことが確定します。杉村さんの一手詰め頓死と比べてはいけないかもしれませんが、竹俣女流は自分の詰みをわかっていたようですので、ご覧の方々のためにこのわかりやすい局面まで打って投了したのだと思います。

感想戦欲しい

少し局面を戻して、以下の局面。

20151008120438-3

ここで中村スタイルが炸裂したので、この31手目で黒が悪くなったのかなと思っていました。が、確信はもてませんでした。もしかしたらもっと前からかもと思っていて。

岡部九段のブログによると、この黒31手目が敗着であることには間違いないのですが、そのだいぶ前の黒15手目で形勢が白に傾いていたようです。

しかし、竹俣女流は負けに気付いても最善の粘りをしたと思います。例えば、白の20、24、32の三を単に受けると、以下のようにすぐに三三ができてしまい、黒の負けが本譜より早く確定します。

20151008124504-c

本譜では竹俣女流が一旦自分の四を作って「王手」をかけています。将棋で言うと形作り(負けを覚悟した時に、最善を尽くして相手に迫り、最後は綺麗な投了図となるようにする)のようなことかもしれませんが、それも将棋棋士らしいと思いました。

この番組には以前、豊川孝弘七段、そして糸谷哲郎竜王が「オセロ対決」で出演。いずれもオセロ界のトップに敗れています。豊川七段は中盤で負けを読み切って投了、糸谷竜王は最後まで打って投了。竹俣女流は形作りを経て視聴者のわかりやすいところまで打って投了と、文字通り三者三様の投了風景となりました。

また中村名人も、単に三三をかけるではなく、四、四、と迫っていって竹俣女流を投了に追い込んでいます。これも、視聴者がわかりやすいように配慮した(?)のではないかと思います。

それにしても、解説がないと本局の詳細がわからないですね。天下一文道会さん、次は感想戦をよろしくお願い致します。解説をいただいた岡部九段に感謝致します。

次は誰か

これでこの番組には将棋界から豊川七段、糸谷竜王、竹俣女流が参戦し、いずれも各界のトップに敗戦。

次は誰がいいですかね・・・例えば竹俣女流の師匠でどうでしょうか。森内俊之九段。永世名人の有資格者で、アタック25優勝、バックギャモン世界4位など様々なゲームに力を発揮しますし。アタック25では羽生善治名人・佐藤康光九段(肩書はいずれも現在)と3人でパネルの開け方を研究した、バックギャモンでは半年のトレーニングで世界レベルになったという逸話もあるので、番組に呼ばれたら本気で研究しそうで恐ろしい気もします。

それでは竹俣女流、中村名人、岡部九段、TBSの皆様お疲れ様でした。次回も期待しております。

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コメント

  1. 匿名 より:

    通りすがりの者です。記事を楽しく拝見させて頂きました。
    私は将棋は詳しくないのですが、連珠については多少心得があります。記事の中から少しばかりコメントさせてください。

    >>また中村名人も、単に三三をかけるではなく、四、四、と迫っていって竹俣女流を投了に追い込んでいます。これも、視聴者がわかりやすいように配慮した(?)のではないかと思います。

    四、四、と迫っていって、四の連続で勝つことを「四追い勝ち」といいます。これは格好良く、かつ強力な勝ち方です。世界レベルの試合の場合は、四を十回以上連続させて勝つ(そして、一回目の四を打つ前から、十回以上の四をすべて読み切る)こともあり、これで勝てたときは非常に気持ちのよいものです。さらに言えば、四の連続で勝てるのに三々を打つことは、名人レベルの人にとっては恥ずかしいことでもあります。つまり、名人はあえて三々ではなく四の連続で勝つことにより、五目並べの真髄を対局者と視聴者に示したことになるわけです。

    あと、これは記事で触れられていない点ですが、番組で「勝利を確信して喜びのあまり正座に居直った」とのコメントがあります。勝利の手を打つとき正座に居直るのは、相手に対する礼儀とされています。そして敗北を認めたときに正座に居直るのも、やはり相手に対する礼儀です。(もっとも、竹俣女流は最初からずっと正座でしたが)これもやはり、決着の瞬間が見苦しくならないように居住まいを正し、五目並べの真剣勝負としての心意気を示すものでした。

    将棋も連珠も、こういった真剣勝負を目の当たりにすると、身が引き締まるような、独特な気持ちになりますね。ボードゲームの大きな魅力の一つだと思います。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。連珠に詳しい方の情報ということで、ありがとうございます。

      「四追い打ち」は、なるほど。そういうことがあるんですか。確かに三三だと読み抜けがあったら怖いですし、四の連続で勝ったほうがかっこいい、すっきりした感じがあります。
      これは将棋でいえば、王手の連続で詰ませるか(四の連続)、必至をかけて次の手番で詰ませるか(三三)のようなことですねおそらく。読み切っていれば王手の連続で勝ったほうがいいのと同じで。
      これも同じボードゲームで通じるところがあるのかなと思いました。

      「勝利を確信して正座」についてはまた面白いですね。将棋では、普通、手を指すときはどんな手であっても正座になります(人によって例外もありますが)。つまり考えるときは足を崩していても、手を指すときは正座になってから指す、というのが普通です。女流棋士は正座を崩すことはあまりないようです。ですので「勝利を確信して正座」は、将棋感覚でいえば違和感のある表現でしたので今回教えてもらってよくわかりました。礼儀という観点は素晴らしいですね。

      岡部九段のブログにもありましたが、番組ではけっこう多くの箇所がカットされていたようです。できれば今回教えてもらったようなことも番組内で紹介があればよいのになあと思いました。番組にも時間の都合があるのだと思いますが。でも久しぶりに五目並べ・連珠に触れて面白かったです(連珠は昔テレビゲームやって以来でした)。

      コメントありがとうございます。

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