もし電王戦に出場したら?鈴木大介八段「勉強せず自分の力で戦う」森内俊之九段「アンチコンピュータ戦略が必要になる」など6棋士回答

2015年10月10日から11日にかけてニコニコ生放送で放送された「叡王戦本戦直前!27時間特番」において、鈴木大介八段と森内俊之九段がコンピュータ戦に対する戦略を話す場面がありました。

2人の戦略が正反対だったのでご紹介します。また、他の出演者4人についても、電王戦、またはコンピュータ将棋との付き合い方について話した場面を簡潔にご紹介します。

この叡王戦で優勝すれば、コンピュータ将棋ソフトと対戦する「第1期電王戦」へ出場することになります。

くしくもこの日、(旧)電王戦開催のきっかけとなった情報処理学会が「コンピュータ将棋プロジェクトの終了宣言」を出しました。

その中では、コンピュータがトッププロ棋士に追いつき、統計的に勝ち越す可能性が高いという分析結果をもって、プロジェクトを終了するとされていました。

鈴木大介八段の場合

運営のミスなのか、聞き手の貞升南女流初段のミスなのかわかりませんが、視聴者からの森内九段向けのメール質問が、鈴木八段に対して読まれました。

質問の内容は「電王戦のきっかけとなった情報処理学会のプロジェクトが終了を宣言したが、どう思うか?」というものでした。終了宣言の中の「トップ棋士に追いついた」という部分については、実際に対局して追いついたとわかったわけではなく、統計的に分析して事実上追いついたとされています。

それについて鈴木八段は「実際やってみないとわかんないけど。そうなんですか、残念な話ですね。私はアナログなんでやってもいないのに結果はわからない」と疑問に思っているようでした。

また「将棋は、スポーツもそうだと思うんですけど、人間は火事場のクソ力が出ますからね。それが計算できるのかな。結構思いもよらない力が出るんですよ。私クラスが広瀬さん(広瀬章人八段)に勝っちゃうんですから」ともコメント。

鈴木八段らしい豪快な発言。実際、鈴木八段は叡王戦八段予選で大本命とみられた広瀬八段に勝ち本戦入りしています。

もしソフトと戦うなら

鈴木八段は、「もし叡王戦で優勝したら、電王戦ではどのように戦いたいか?」と聞かれて以下の返答。

鈴木八段「なるべく勉強しないでやってみようかなと。自分の力で戦ってみようかなと。人間の知恵で。(みなさんコンピュータを研究されているが)しないほうがいいでしょう。しないで自分の力で勝負しますよ。万が一優勝したら誰にも文句言わせないですよね」

おおお!!なんとも新しい考え方? いや古いのか。わかりませんが、これも鈴木八段らしい豪快な発言。さらに展望を話します。

鈴木八段「ソフトは振り飛車を評価しないんですよね。うちのソフトも飛車を振ったらまた元に戻せと言ってくる。でもノーマル四間飛車でも石田流でも、評価の低い振り飛車やってみましょうかね。ただ序盤で差が付きづらいかもしれませんね。そうするとソフトのいいところが出やすいのかな」

鈴木叡王なら、電王戦では振り飛車が見られます。

森内俊之九段の場合

その後、森内俊之九段にも、情報処理学会のプロジェクトが終了するがどう思うか? という質問がされました。

森内九段「本当に終了してしまったんですか。なんか寂しい気持ちもしますけどね。実際に前回の電王戦FINALでも、いろんな意見がありましたけど人間側が3勝2敗で勝ち越していますし。コンピュータの方が計算が早いし優れている部分もあると思うんですけど、完全に人間に勝つという状況でもないと思いますし。まだまだ続くと思っていたので残念な感じもしますけどね」

確かに、電王戦FINALでは人間が勝ち越しています。「情報処理学会コンピュータ将棋プロジェクト終了」の記事でも書きましたが、情報処理学会的には終わりでも、コンピュータ将棋の開発は続きます。電王戦も、ドワンゴは最低3年は続けるとしています。本当に数年後、人間が勝つことができなくなるのか。

もしソフトと戦うなら

もし電王戦に出場したらどういう戦いをするか? と聞かれた森内九段は、鈴木八段とはまったく正反対のことを述べます。

森内九段「人間対人間の戦いとは違う戦いですので、やっぱり計算ではどうやっても人間はかないませんので。それ以外の部分で。やっぱりアンチコンピュータ戦略というか、そういうのはある程度必要になってくると思いますし、まあ、もし対戦することが決まればかなり準備して臨むことになるんじゃないですかね」

森内九段は、叡王戦本戦出場をに一番乗りで決めました。その際のインタビューでは、「コンピュータとも指してみたい」と抱負を語っていました。森内九段は、将棋のみならず、チェス、クイズ、バックギャモンなどでも実力を発揮しています。対ソフト戦というのは、対人間の将棋とは違ったゲームととらえることもできると思います。森内九段の力が発揮されるかもしれません。

他の棋士

この叡王戦本戦直前番組では、上記2人の他4人の棋士が出演。それぞれ電王戦、コンピュータ将棋絡みの質問とその答えを簡潔にまとめます。

宮田敦史六段

電王戦に出場した場合、序盤・中盤・終盤の時間配分や誘導したい戦型などの想定はあるか?

宮田六段「今の段階では想定していない。叡王戦で優勝できたら考える」

宮田六段は、普段の研究でコンピュータを使用することはないとのこと。

阿部光瑠五段

普段の研究でコンピュータは使用されている?

阿部五段「普段から使っている。よく使うのは習甦」

阿部五段は第2回将棋電王戦で対局しています。あと彼女は「全然いないですよ」らしいです。

青嶋未来四段

研究でコンピュータを使用することは?

青嶋四段「普通によく使っている。ponanzaを使用している。以前は対局もしていたが勝てないのでやめた」

青嶋四段はチェスを始めて1年。一時はチェス漬けだったようです。また小さいころの夢は鉄道運転士だったとのこと。

村山慈明七段

叡王戦で優勝すると電王戦に出場となるが?

村山七段「前回(電王戦FINAL)出させていただいて、その時はいいところなく負けてしまったので。もしまた出られれば、今度はもっといい将棋ができるようにしっかり研究してがんばりたい」

なお村山慈明七段は飯島栄治七段と仲直りしたらしいです(経緯はこの記事で)。その代わりなのか、飯島七段の新刊とグッズを宣伝して欲しいと頼まれていたようですが。

村山七段「飯島さんが新刊を出したんですけども。横歩取りの・・・何でしたっけ? タイトルがちょっと忘れちゃったんですけど、横歩取りの・・・最新の、最新というか何というんでしょうね? 横歩取りの定跡をまとめた本を出されたので皆さんよろしくお願いします

もし電王戦に出場したら?

叡王戦本戦にはあわせて16人が出場(こちらの記事に詳細)。

このうち森内九段、村山七段は明確に事前準備をするという答え。阿部五段は前回出場した時の感じからして、また青嶋四段も普段研究でソフトを使用しているということで準備して臨みそう。

宮田六段はまだわからない。

際立つのは鈴木八段の「勉強しない。振り飛車にする」という発言。興味深いですが、果たして勝算はあるのか。

他の棋士がどうなのかも気になります。本戦唯一のタイトルホルダーである郷田真隆王将は、確か研究にソフトを使用してない(データベースだけは使っている)はず。現在がちょうど過渡期なのかもしれませんが、棋士のコンピュータに対する向き合い方が色々あって面白い。

第1期叡王戦本戦は10月下旬に開幕、第1期電王戦は来春開催されます。

この記事によって、皆様がより叡王戦・電王戦を楽しめましたら幸いです。

以上、ありがとうございました。

2015/10/13追記:
この記事を書いた後に、別のところでも叡王戦本戦出場棋士らが電王戦の展望を述べていることに気づきました。以下の記事です。よろしくお願い致します。

続・もし電王戦に出場したら?行方尚史八段「トレーナーをつけて訓練する」郷田真隆王将「自分は向いていないが準備はしたい」

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コメント

  1. 長さん より:

    たいへん興味深い記事でした。御紹介、どうもありがとうございました。

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