「無敵囲い」が「新無敵囲い」に進化。名人コブラが魅せた独自の戦い

2015年11月21日から23日に開催された「第3回将棋電王トーナメント」では、コンピュータ将棋ソフトたちが個性的な戦いを見せてくれました。

特にソフトたちの個性が発揮されたのは予選ラウンド。この大会の予選はスイス式トーナメントで、出場ソフトは少なくとも8試合を戦えるので、それぞれのソフトがそれぞれの目標を持って参加できるというのが面白いところかと思います。

予選の模様はタイムシフトでもご覧いただけます。

第3回 将棋電王トーナメント 予選リーグ(ニコニコ生放送)
(この記事で記す部分はタイムシフトの3時間48分付近と、9時間10分付近です)

そのなかでも、「名人コブラ」(開発者は松山洋章さんと高橋依里さん)というソフトは、自己PR文書で「完全にエンジョイ勢です(すみません…)」と宣言していましたので、そのエンジョイぶりをご紹介します。

無敵囲い

予選第3局の名人コブラvsきふわらべ戦。

20151124-9手

先手の名人コブラは、9筋の歩を突いてそこに桂馬を跳ねるという大胆な攻撃の姿勢。一方で、3手目に▲5八飛、9手目に▲4八銀と囲いを作り始めます。

名人コブラは、▲6六角~▲5五角と、ゆっくり角を中央に進出させました。そして満を持して▲6八銀。

20151124-15手

無敵囲いの完成です。

長岡裕也五段と藤田綾女流初段による無敵囲いの解説です。

長岡五段「皆さん、覚えて下さい。これが無敵囲いです」

藤田女流「覚えておいたほうがいいですか?

長岡五段「うん、まあ、使うかどうかは別として。この形が無敵囲いと呼ばれている」

藤田女流「誰しもが1回やるんじゃないかっていう」

長岡五段「僕ももちろんやったことがありますけど」

藤田女流「王手かからないですからね」

長岡五段「王手かからない形を作るなら、確かにこれは一番早いですね。真ん中に穴熊できていますからね。実際どれぐらい良い囲いかっていうと、難しい

▲5八飛~▲4八銀~▲6八銀というわずか3手で王手がかからなくなる無敵囲い。

名人コブラはこの鉄壁の守備を盾に、敵陣に攻め駒を突撃させ、きふわらべを圧倒し勝利しました。

新無敵囲い

名人コブラは無敵囲いにこだわりがあるようで、予選第8局のメカ女子将棋戦では、進化した無敵囲いを見せます。

20151124-9b手

なんと名人コブラは、一直線に無敵囲いを目指すではなく、飛車を6筋に振り、▲5八金~▲4八銀と謎の囲いを見せました。玉の右の腹ががら空きです。どうするつもりなのでしょう。

すると名人コブラは、敵陣に桂馬を突撃させました。

20151124-19手

メカ女子将棋が守備を疎かにしているのをいいことに、敵陣左の駒を食べつくす名人コブラの成桂。

20151124-25手

そして取った駒を自陣に貼り付ける。

20151124-35手

玉の腹を補強し、無敵囲いが進化する予感。長岡五段の解説。

長岡五段「おっ、おっ。ついに。これはでも弱点を受けているんですよ。4九が一番弱点だったんで。そんなに受ける必要もなかったと思いますけど、やっぱロマンもありますから

藤田女流「はい」

飛車を犠牲にしてでも、金を取りに行く名人コブラ。

20151124-47手

そして。

長岡五段「(飛車と金の交換で)非常に損をしたんですけども、それよりも」

将棋における最強の駒である飛車。それよりも大事なもの。

20151124-49手

長岡五段「みなさん、これが新無敵囲いです

別名、超無敵囲い。

長岡五段「まあ、この先出ることは、そうそうないと思いますけど。これが新無敵囲いですね」

藤田女流「金を4枚集めるのがハードル高いですね」

ただ、敵は強豪メカ女子将棋。名人コブラは守備を重視するあまり攻め駒不足に。

メカ女子将棋の凄まじい攻撃に、鉄壁のはずだった新無敵囲いの駒たちは次々に剥がされていきました。

そしてその駒たちは、そのままメカ女子将棋の攻め駒に。その結果。

20151124-1手

将棋は恐ろしい。

エンジョイ勢

メカ女子将棋は、詰みの一歩手前までは攻めるのですが、詰まさずに相手の投了を待つ姿勢らしいです。最後はたまらず詰ませてしまったようですが。

なお名人コブラの開発者は男女二人。将棋教室の仲間だそうです。

開発者の一人、松山洋章さんによると、名人コブラが無敵囲いをする理由はその独特の棋風にあるようで「飛車を真ん中で使うのが好きみたいです。飛車を真ん中に振っちゃうと、銀も真ん中に寄せたがるんで」とのこと。もう一人の開発者、高橋依里さんは監督の役割を果たしているそうです。

名人コブラの活躍には、開発者ご本人たちだけではなく、視聴者もエンジョイしたと思います。視聴者を楽しませるという意味で、「エンジョイ勢」ということだったのかもしれません。

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コメント

  1. 匿名 より:

    プロは勝ちを目指さなければいけないので、
    プロ同士の対局ではどうしても「勝ちやすい」戦形ばかりを目にします。
    弱かろうとなんだろうと、こうした自由で楽しい対局を見れるのは
    (そして、それをプロ棋士が解説してくださるのは)
    将棋に対して新鮮な気持ちになれます。
    人間の対局だったらあまり悪い言い方はできませんが、
    ソフトなら言葉さえ選べば遠慮はいらない、という事情もあるでしょうが。

  2. 永世五級 より:

    これ、無敵囲いっていうの初めて知りました(笑)
    囲いとか戦形とかを知らない小学生のころとかにやった記憶があるような…

    人では考えない戦法やってくるのは面白いですね(^ω^)

  3. 管理人 管理人 より:

    匿名様:
    コメントありがとうございます。なるほど、そういう視点もありますね。人間なら(たとえ初心者や子供であろうと)一生懸命やっていると笑っちゃいけないと思いますが、ソフトなら、開発者ご本人たちも含めて楽しんでいるというが、良いですね。プロは生活がかかっていますし、変な将棋を指そうものならスポンサーに対しても失礼にあたると思いますし、難しそうですが。いわゆるネタ勢の活躍には微笑ましい気持ちになります。

    永世五級様:
    コメントありがとうございます。無敵囲いは、漫画のハチワンダイバー発祥だそうです。私の手元の将棋用語集(4冊)には掲載されていませんでした。私は大人になってから将棋学んだのでやったことなかったですが、人工知能と子供で同じことやるというのは面白いです。

    皆様コメントありがとうございます。

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