佐藤康光九段が色紙に「名前から」揮毫する理由。渡辺明棋王、谷川浩司九段とは意見の相違。森下卓九段は翻弄される

プロの将棋棋士・女流棋士の方々は、色紙に揮毫する機会も多いと思います。

一般に、プロ棋士の色紙は右側に「一歩千金」などの格言や自分の好きな言葉を書き(以下、本文と呼びます)、左側には肩書と名前を書きます。

それで、その書いた言葉の意味がなんだとか、字が綺麗だとか下手だとかで、将棋ファンは盛り上がるものです。

そんな色紙への揮毫をめぐり、大物棋士の間でちょっとした意見の相違というか、考え方の違いがあったようです。これは、2015年4月9日にニコニコ生放送で中継された第73期名人戦(羽生善治名人VS行方尚史八段)の解説として登場した森下卓九段が話してくれたもの。

登場人物は金井恒太五段、渡辺明棋王、佐藤康光九段、谷川浩司九段、そして森下卓九段自身です。

色紙の揮毫をめぐる意見の相違

3年ほど前、渋谷で行われた東急将棋まつりで、金井五段が色紙を書いていたときのこと。金井五段は色紙を書くときに、まず左側の名前から書き、そして右側に本文を書いていました。すると渡辺竜王(当時)がやってきて

「金井君、色紙は右(本文)から書くものだよ」

と指摘。渡辺竜王は棋士になった当初は字が苦手だったそうなのですが、指導を受けて上達していますので、金井五段に指摘したのだと思います。

ここで黙っていられなかったのが、その近くにいた、人がいい森下九段。実は森下九段も名前から書く派。思わず

「すみません、私も、名前から書くんですよ」

と割り込みました。それだけならよかったのかもしれませんが、さらに近くにいた佐藤康光九段もやってきて

「私も名前から書きます」

と続きました。渡辺竜王は、せっかく金井五段に指導中だったのに2人の大物棋士に割り込まれて、

「でも色紙って右から書くもんですよね・・・」

と渋い顔をしていました。

名前から書く理由は

後日、森下九段と佐藤康光九段が仕事で同席した際、上記の話になりました。森下九段は色紙を名前から書く理由について

「色紙は右から書くと、左を書くときに手が汚れちゃう。色紙も汚しちゃう。しょうがないので右から書きますよ」

と話しました。ところが佐藤九段はそんな理由で名前から書くなんて発想はなかったようです。佐藤康光九段が名前から書く理由は

「我々、将棋指しが書く色紙は、名前に価値がある。佐藤康光という文字に価値がある。だから、名前から書くんです」

翻弄される森下卓九段

佐藤九段の話を聞いた森下九段は愕然とし「手が汚れるなんて理由じゃないんだ・・・。さすが佐藤康光だ。びっくりした。名前がメインなんだ。私は手が汚れるからって・・・」と、佐藤九段の理由に感心したということです。

ところがさらに後日、森下九段が仕事で同席した谷川浩司九段(将棋連盟会長)に上記の話をして「佐藤九段に関心しましたよ。名前に価値があるから名前から書くって」と話したところ、揮毫を右(本文)から書く派の谷川九段は

「うーーん、ちょっとその話は・・・無理がありませんか」

と、ぼそっと発言。

森下九段は「この人、ドライだ!」と思いつつも「そう言われたら、無理があるかな」と、心が揺らいだそうです。

色紙にもドラマが

森下卓九段は「右から書くのが筋なんですけどね。色紙にもドラマがあるんですね」と述べていました。

その話を聞いていた、この日の聞き手・鈴木環那女流二段は「そうですよね、棋士は書道家ではないですから。すごい」と佐藤九段の意見に感心。また谷川九段の「無理がある」発言には「なんとなく、(その光景が)目に浮かぶような」とも述べていました。

話が尽きない森下九段

ちなみに、なぜこの色紙の話になったかというと、森下卓九段の師匠である故・花村元司九段が色紙を大切に丁寧に書くという話からのつながりでした。花村九段は、後援会の方から「何十枚もの色紙を丁寧に書くんですね」と言われたとき「書く方は何十枚でも、貰う方は1枚1枚だから」と述べたことがあるそうです。

私は電王戦リベンジマッチ以来、森下九段に大注目しているのですが、今回のお話も大変おもしろかったです。この日の名人戦はゆっくりした展開だったのですが、話のネタが尽きることなく、話し続けてくれました。

森下卓九段、お話いただきましてありがとうございました。

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コメント

  1. やったか? より:

    森下九段は、話のタネが尽きないですよね。頭の回転がお速いんでしょうか。まさかアイドル(熊井友理奈さん)の話まで出てくるとは思いませんでした。そしていずれの話題にも対応できるカンナさんの高性能っぷりが印象的でした。鈴木環那女流二段も頭の回転が速いですよね。うらやましいです。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      そういえば、アイドルの話もされていましたね。ベテランならではというか、引き出しが多くていいですよね。
      鈴木環那女流は、またパラパラを踊ってくれるのを期待しています。鈴木女流もひそかにけっこう面白い人だと思っています。
      2人のコンビもよかったですね、対局は突然終わりましたけど。

      コメントありがとうございます。

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