大河ドラマ「真田丸」に朝倉象棋。山崩しに真田兄弟の性格が現れ、醉象はやがて太子に

2016年1月10日から開始された今期のNHK大河ドラマ「真田丸」の第1回「船出」に、将棋のシーンが出てきましたのでご紹介します。

本将棋にはない駒「醉象」を、主人公が動かす場面がありました。理由は後述しますが、指されていたのは「朝倉象棋(朝倉将棋)」だと推測しています。

なおたまに見間違うのですが、オープニングのキャスト紹介のところで、藤井猛九段がこのドラマに出演しているのかと思ったら藤井隆さんでした。

真田信幸・真田信繁の兄弟

時は天正10年。新府城で人質の身分にあった、真田信繁とその兄の真田信幸。

(注)
天正10年は1582年。新府城は、現在の山梨県韮崎市。城主は武田勝頼。

真田信繁は、ドラマでは「源次郎」とも呼ばれている。後に真田幸村の名で知られる。堺雅人さんが演じる。この物語の主人公。

真田信幸は、ドラマでは「源三郎」とも呼ばれている。名前は源三郎だがこっちが兄。大泉洋さんが演じる。

山崩しにみる兄弟の性格

武田領に侵攻している織田信長の軍勢が、新府城に迫っている状況。

その新府城では源次郎(弟)が楽しそうに「山崩し」をしています。ドラマでは「山崩し」と言われていましたが「将棋崩し」とも呼ばれる、将棋の駒の山から音を立てずに一枚ずつ駒を抜いていくゲーム。状況が状況なだけに、決して楽しそうではない源三郎(兄)。

弟「兄上の番ですよ」
兄「源次郎、もういい」
弟「なんですか!」
兄「今やることか?」
弟「次、いつできるかわかんないから今やるんです」
兄「ではせめてこんな子供の遊びではなく、きちんと将棋を指そう」
弟「だって、兄上と指したって楽しくないんですよ」
兄「なんだそれは?」
弟「兄上の手は、まっとうすぎて、なんていうのかな、面白みに欠けるんですよ」
兄「おまえ、俺に勝てぬからといってそういうことを言うか」
弟「山崩しもバカにはできませんよ。兄上のお得意な定跡が使えぬゆえ、意外に奥が深いのです。降参ですか?」
兄「ふざけるな! 山崩しにだって定跡はある。まずは決して、無理をせぬこと」

しかし源三郎(兄)は初手で音を立ててしまう。大笑いする源次郎。

脚本は三谷幸喜さんです。この何気ない会話の中に「山崩しにだって定跡はある」という冗談を入れつつ、兄弟の性格を端的に表現しています。

つまり兄は常識人で、定跡を大事にする人物。弟は定跡にとらわれず、兄を「面白みに欠ける」と言う。ドラマの冒頭では、弟が独断で常識外の行動をしてしまい、兄がそれを咎めるシーンもあります。

将棋用語としての「面白い」

兄を「面白みに欠ける」と言った源次郎。

「面白い」は将棋用語で2つの意味があります。1つは発想がユニーク、のような意味で、他の人にはなかなか指せないような指し手や作戦のことを言うことがあります。

信長の侵攻を前に劣勢に立たされる武田・真田にとっては「面白い」一手が必要なのかもしれません。

もう一つは、明確に有利とまでは言わないまでも、わずかに良さそう、良くできそうな局面について「先手が面白い」などと表現することがあります。

朝倉象棋か?

兄に勝てず山崩しに逃げていたかに思われた源次郎ですが、その後に山崩しではない将棋を一人で並べるシーンがあります。兄に倣い、定跡を覚えようとしているのか。

部分図ですが、以下の様な局面でした。

20160112-0手bubun

使い込まれた古い盤。おそらく盛上駒(でもこの時代は盛上駒はなかったはず? だから違うかも)。駒台はありませんでした。

上図の通り、「醉象(すいぞう)」という駒があります。醉象だけフォントが違うのは許して下さい(ドラマでもこの駒だけフォント違ったかも)。

源次郎は、兄とシリアスな会話をしながら次の手を指します。7七にあった醉象を8七に。

20160112-1手bubun

端から迫る敵を、逆に責める一手?

醉象の存在

醉象は、小将棋、中将棋、大将棋などで使われる駒。現在一般に「将棋」と呼ばれている「本将棋」にはない駒です。大河ドラマの解説もする将棋界のタキシード仮面、itumonさん。

真田丸で指されていたのは、使用されてる駒や盤の大きさからしておそらく、小将棋か、小将棋に駒の再利用ルールを加えた「朝倉象棋」だと思われます。

小将棋や朝倉象棋は、本将棋とおなじく9×9マスの盤を使います。

初期配置はいずれも以下のように、本将棋とほぼ同じ。

20160112-0手4bubun

醉象が中央二段目にあります。醉象の動きは、真後ろ以外に1マス進めるというもの。

小将棋と朝倉象棋の違いは、取った駒を再使用できるかどうか(再利用できるのが朝倉象棋)ということだけらしいです。朝倉象棋は、醉象以外のルールは本将棋とほぼ同じ。

小将棋か朝倉象棋か

大河ドラマで指されていたのは、小将棋なのか、朝倉象棋なのか。断定できませんが、以下の局面をもう一度見ると。

20160112-1手bubun

この端の関係、持ち駒再利用ルールがないとこのような配置にならないのではないか、と推測します。先手の香車が一つだけ前に出ていますので、頭に歩を打たれて取った形跡ではないかとか。後手の香車も歩を取ってあの位置にあるんじゃないかとか、思いますね。つまり朝倉象棋だと考えられます。

醉象にだけある特別なルール

「醉象」について補足しておきます。

まず「醉象」は朝倉象棋においても、他の駒とは違って再利用できないそうです。相手の持ち駒になることはないということです。

また「醉象」が敵陣に入って成ると「太子(たいし)」になります。動きは王将と同じで全方向1マス進める。

太子ができると、王将が取られても、太子が王将の代わりになるそうです。王将が討ち取られても太子が後を継ぐ、ということです。そうなると太子が詰まされるまで対局は続きます。

織田信長の猛攻。武田方の武将は次々に信長に寝返ります。武田方の一角である真田家も難しい立場に。

真田丸では、源次郎が「存亡のかかった戦ならば、なおのこと、先手先手を打つことが大事なのではありませんか」と、兄と議論する場面があります。現在の王将ともいえる兄弟の父親、真田昌幸は「一つ打つ手を誤れば、真田は滅びる」と兄弟に告げます。

今後、ドラマはどんな展開になるのか。

大河ドラマ「真田丸」は、毎週日曜日午後8時からNHK総合テレビで、午後6時からBSプレミアムで放送されています。また土曜日の午後1時5分からはNHK総合テレビで再放送もあります。

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コメント

  1. 長さん より:

    微妙にこの大河ドラマ。「朝倉将棋の時代」から、ズレてますね。
    この時代になると。「普通の日本将棋を真田親子は指している」として良かったのではないかと私は思います。敢えて、酔象の有る将棋を出してきたのが、このNHK大河ドラマでは懲りすぎ、考えすぎだったかと。ちなみに朝倉氏の遺跡は福井県。真田親子は長野県と、やや離れてますので、「お国の将棋」とも言えないですしね。年老いた水無瀬兼成が、これからたった9年後の1591年の彼の将棋図に、朝倉将棋は載せていないです。また1582年から見て約30年前の1550年代に。後奈良天皇が将棋から酔象を取り除くように」との詔を出していたと記録されている訳です。朝倉将棋は、この年号の時点では。全国レベルでは、もう、あんまり指されなかったのではないかと私は思います。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。
      参考になるご意見ありがとうございました。このコメント欄を見られる方にとっても有益な情報かと思います。
      時代考証的には色々あるのかもしれませんが、私としましてはせっかく将棋が出てきたので楽しんで視聴する方針です。
      それに史実ではそもそも彼らがやっていたのは将棋ではなかったんじゃないかという話もあるぐらいですし。あの一瞬の場面ですからね。細かく考証すればいいのかもしれませんが、そうすると時間もかかりすぎて、ドラマで将棋使ってくれるところがなくなるんじゃないかということもありますし。
      しかし情報ありがとうございました。

  2. 星野なな子 より:

    おそらく朝倉象棋ではなく猛豹も居たのではないかと思いました。
    朝倉象棋なら持ち駒の再度使用可能の方法ですので87に移動するという構想がそもそもなんか不自然です。
    むしろ、再使用不可のル~ルで87移動後に86に打たれることが無いことを見ての87酔ではないかと感じました。

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