森下卓九段、将棋電王戦出場のプレッシャーを正直すぎるほど正直に語る「豊島さん、負けてくれないか」

将棋電王戦に出場する棋士たちの準備の大変さはこれまでの記事でもお伝えしてきたところですが、そのプレッシャーについても大変なものがあると思います。

電王戦FINALに出場した永瀬拓矢六段も、負ければ「棋士の名誉を傷つけられること」だと語っていますし、多くの棋士が少しはそのような気持ちがあるものと思われます。

2015年4月4日に開催された将棋電王戦FINAL第4局のなかでは、解説の森下卓九段がそのプレッシャーについて、大変正直に語ってくれましたので、ご紹介したいと思います。

森下卓九段は、2014年の第3回将棋電王戦に副将(4番手)として出場、コンピュータソフト・ツツカナに敗れています。

めちゃくちゃ緊張した

森下卓九段は、電王戦FINAL第4局のニコファーレでの解説者として登場。第5局を戦う阿久津主税八段、および第4局の現地レポーターである香川愛生女流王将と中継で話をしました。

そのなかで、香川女流王将から「対局前の最後の1週間というのはどういう気持ちでしたか」と、1年前の対局前の状況を聞かれた森下九段は「いや、めちゃくちゃ緊張しました」と返答。

対局が決まった当初はあまり緊張感がなかったそうで「たまには解説される側になりたい」ぐらいの気楽な気持ちだったそうなのですが、最後の1週間は「本当にきつかったです。だんだん近づくにつれ、きつくなってきて。(自分の1週間前に対局した)豊島さん(豊島将之七段)が(ソフトに)勝ちまして。プロ側1勝2敗で自分の対局を迎えたので、私が負けるとプロ側の負け越し確定だったんです」と当時の状況を説明しました。

豊島さん、負けてくれないか

そして「正直言って、豊島さん、ここで負けてくれないか、という気持ちもありました。恥ずかしい話ですけどね」と、正直に述べていました。

もし森下卓九段の1週間にコンピュータソフトと戦った豊島将之七段が負けていれば、プロ側3連敗となり、プロ棋士5対コンピュータ5で争う団体戦としては敗北が決定するという状況ですが、それでも「負けてくれないかと思った」というのは自分の対局に団体戦の敗北がかかっていいるのはきつすぎる、という率直な告白。

森下九段は重ねて「恥ずかしいんだけど、『豊島さん、ここで負けてくれたら私が楽なんだけど』というぐらい思っていました」と述べました。

神頼み

森下九段は、豊島七段とコンピュータソフト・YSSが戦い豊島七段が勝利した夜に、野月浩貴七段らと焼き肉に行って大騒ぎ。しかしそれを最後に3年間、お酒とコーヒーを一滴も飲まないと決め、「それで神様、勝たせてくれないかと。対人間だとしないが、機械なので神に頼ってもいいかなと思って」と神頼みしたことを告白していました。

実際それから一滴も飲んでいないらしく、体重が8キロ落ちたということでした。

また、森下九段は「豊島さんの段階で3連勝していても、自分だけ負けるのもきついじゃないですか。だから本当にきついんですよ。どう転んでも」と発言。

香川女流王将は、そんな森下九段の思わぬぶっちゃけ話に「大変、コメントが難しいお話・・・」と述べ、電王戦FINAL第5局を戦う阿久津主税八段は「自分も全勝とか全敗だったらプレッシャーがすごいかなと少しは考えたが、森下先生みたいにストレートには言えないなと・・・」と、正直すぎる話に戸惑いながらコメントしていました。

棋士人生で2回だけ

さらに森下九段は、32年の棋士人生の中で本当にきついプレッシャーを感じたのは「C級2組順位戦の5期目と、ツツカナ戦だけ」だったと発言。

森下九段は17歳でプロデビューし活躍が期待されたものの、なかなか順位戦C級2組から上がれずに5期目を迎えていましたので、この時のプレッシャーのことだと思います。

C級2組順位戦を戦ったのは21歳のとき、ツツカナ戦は47歳ですから、森下九段にとっては26年ぶりのプレッシャーということになります。また、タイトル戦には6回登場していますが、これよりもツツカナ戦のほうがプレッシャーが上だとは・・・。

負けたらどうしようか、という勝負

森下九段は「プレッシャーを感じるような勝負はできないんだろうな、と思っていたが、ツツカナとやるときのプレッシャーは堪えました。タイトル戦とか決勝戦は勝ちたいとは思うが、負けたらどうしようかと思う勝負はなかなかない。そういう意味で、ツツカナ戦は負けたらどうしようかと思っていたので厳しかったですね」とプレッシャーの理由を説明。

しかし森下九段はこれだけ言っておいて、阿久津八段への助言を求められると「自分で考えるしかない。将棋指しらしく」と助言を拒否しました。

歴史の転換点

第3回将棋電王戦では、森下卓九段に続き大将の屋敷伸之九段もコンピュータに敗れ、プロ棋士の1勝4敗でシリーズを終えています。

一方、この1年後に開催されている「将棋電王戦FINAL」では、第4局の村山慈明七段が「(コンピュータに勝ったら)ヒーローになれる」と語るなど、プロ棋士とコンピュータの立場が違うものになりつつあります。

まさに歴史の転換点といえるのだと思います。

そんな転換点をど真ん中で体験した森下九段、正直すぎるほど正直に語っていただきまして、ありがとうございました。

将棋ワンストップをご覧いただきありがとうございます。ぜひシェアをお願いします

記事の追記や更新の通知はツイッターで行います。フォローをよろしくお願いします!

スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。