「ものの歩」第18話。十歩が相手の悪癖を突く早石田。矢倉しか指さない信歩との戦いを控えて策士ぶり発揮

週刊少年ジャンプの漫画「ものの歩」の18話です。

先日、これまでのあらすじをまとめた記事を書きました。まだご覧になってない方、振り返りたい方はこちらをご覧いただければと思います。

将棋漫画「ものの歩」これまでのあらすじ

現在は都大会の最中。前回は、信歩がジャンケンのグー(矢倉)しか出せない状態で、パー(振り飛車)を出してきた相手を撃破。

「ものの歩」第17話。ジャンケンでグーしか出せない信歩。彼をめぐる女子たちの青春

今回は、信歩に「戦法を矢倉一本に絞る(=ジャンケンでグーだけ出す)」ことを強く勧めた相楽十歩(鎌谷商業)と、ナルシスト臭漂う岬真悟(駒江第一)の対戦です。

あらすじ

相楽十歩率いる鎌谷商業と、岬真悟率いる駒江第一が準々決勝で対決。

十歩は、再び信歩と将棋で真剣勝負をするために、鎌谷商業に転入した。この都大会で勝ち進めば準決勝で信歩と対戦することになる。

駒江第一の岬真悟は、劣勢になったら悪あがきせず潔く投了することを美学にしている。岬は、19歳の若さで将王戦の挑戦者となり、七番勝負第7局で形勢不利になるとすぐに投了した歌川雪之丞五段に憧れがあるようで、歌川五段の扇子を持ち歩いている。

劣勢即投了という岬に対し、十歩は序盤で一気に優位に立ち投了に追い込む作戦を目指した。

対局が始まる。

20160125-9手

十歩は、なんと早石田を採用。振り飛車の急戦策の一つ。奇襲とかハメ手などとも言われることがある戦法。いきなり歩を敵陣につっこませて開戦する十歩。後述しますが、局面図は正確ではない可能性があります。

20160125-48手

岬は丁寧に受ける。岬は駒江第一の部長でもある。劣勢になったら投了という美学と、それでも勝たねばならぬという部長の立場を両立するためこの1年間「ただの一度も劣勢になったことは無い」(!!?)。以下の局面になった。先手番。

20160125-0手

十歩は相手が手強く少し怯むが、信歩と戦うために奮起。

20160125-1手

▲7二歩。十歩はこの手にかけた。この手を見た岬も「・・・・・・いい手だ」と心の中で密かに思う。

まさかの早石田

十歩が採用した「早石田」は、振り飛車の超急戦策。振り飛車の中で、飛車を左から3筋に振る三間飛車の中の「石田流」という戦法の中の超急戦の戦法です。(「振り飛車」の中の「三間飛車」の中の「石田流」の中の超急戦が「早石田」)

日本将棋用語事典には以下のように説明があります。

早石田は、開始早々いきなり決戦となり、玉を囲いに入れる前に本格的な戦いに入る。

一時流行したようですが、現在はプロの間ではほとんど指されていないようです。アマチュアでもあまり見かけないと思います。理由は対策が整備されたことによって、相手が受け間違えなければ早石田側が序盤で不利になってしまうということだと思います。また、対策を知らない相手や格下に対して使うのはハメ手とか言われてしまって印象が悪い(?)というのもあるかもしれません。

しかしこれをあえて採用した十歩。「劣勢になったら投了する」という岬だけに使うつもりなのか、それとも準決勝で当たる信歩との戦いでも採用するのか。

十歩は、「事前にわかっている相手の弱点を突く」という作戦を採用しているとも言えるのですが、この方針は信歩戦でも貫かれるのか注目されます。

開始早々に決戦か

前回、信歩は2回戦で振り飛車の相手に対し、矢倉で勝ちきりました。

「ものの歩」第17話。ジャンケンでグーしか出せない信歩(再掲)

矢倉は振り飛車に相性が悪いのですが、それでも矢倉に組ませてもらえたので、自分の土俵で戦えました。

いつもこのサイトをご覧になっていただいている方にとっては、しつこく感じるかもしれませんが、やはり十歩は可愛くなったとはいえ策士です。岬戦でも相手の悪癖を突く奇襲に出ました。十歩が「矢倉しか指さない」という信歩を相手に、序盤作戦でつけ入る余地は十分にありそうです。矢倉に組む前に決戦となる戦型を採用するというのはありえることです。逆に、信歩だけにはじっくりとした戦いを指向するかもしれませんが。

ただ、十歩は少なくとも「振り飛車が指せる」ということは言えそうです。前回、前々回も書いた「信歩がグー(矢倉)しか出せないのは、十歩の謀略にハメられたから」説が現実味を帯びてきたような気がしなくもないです。

次回、十歩と岬の戦いに決着がつくそうです。▲7二歩は、良さそうな手に見えます。

局面図について

今回4つの局面図を掲載しましたが、正確ではない可能性があります。

というのも、まず1つ目の局面がこちらです(再掲)。

20160125-9手

この局面図自体、実は右下のほうが十歩の頭に隠れており、右下は推測です。妥当な推測だと思います。ここで、岬の角側の端歩(△1四歩)は突いてありました。これは確実に突いてありました。

ところが、最後の図(再掲)を見ると。

20160125-1手

この図も駒台の一部が隠れていました。盤上はこのとおりです。端歩に注目です。△1四歩と突いたはずの歩が1三に戻っています。歩は前にしか進めません。将棋は取った駒を再利用できるルールであるとはいえ、この動きは不自然です。したがって、作画上のトラブルがあったのだと思います。毎週毎週、このように漫画を連載するのは大変なことで、局面も作るとなるとさらに大変だと思います。トラブルを咎めるつもりはありません。ただ、読者の皆様が誤解すると良くないと思ったため、このように書いておきました。

こうやって毎週連載してくださる作者の池沢春人さん、監修の橋本崇載八段に感謝の言葉を述べたいと思います。ありがとうございます。

今回は以上です。

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コメント

  1. 匿名 より:

    十歩は噛ませ犬で、岬に敗退して、信歩とはやらないんじゃないのかな。
    岬は信歩とやって、粘る大切さを知るというオチだと思うけれど。

  2. 匿名 より:

    一度戦ったライバルキャラは主人公と当たる前にかませ犬になってしまうのが
    よくあるパターンですが、テニプリや黒子のバスケのように
    「ライバルキャラが新たな力を得た」ことを示すために戦いを演出するパターンもあります。
    前よりも強くなったことを示す何かがないと、十歩は負けるでしょうね。
    あと、十歩が「投了しなかったせいで、負ける将棋で勝った」経験をどう思ってるのか
    気になるところ。

  3. 匿名 より:

    早石田の急戦ルートは▲7六飛で受けられないタイミングで
    居飛車が△8五歩と伸ばすことで始まるのですが、
    石田流側の対策が進んだこと+別の有力ルート(▲7五歩に△1四歩や左穴熊)を開拓しているので
    むしろ居飛車から避けてる印象が強いですね。
    (今回の十歩岬戦のような鈴木流▲7四歩は居飛車指しやすいと言われてますが)

  4. 管理人 管理人 より:

    皆様コメントありがとうございます。

    上の匿名様:
    なるほど。そういう可能性もあるんですか。岬はナルシストで脇役かと思っていました。ただ、彼の美学(劣勢になったら投了)が覆り、粘る大切さを知る描写はありそうですね。

    真ん中の匿名様:
    ご紹介の作品は2つとも読んだことがないのですが、噛ませ犬じゃないパターンだとすれば、十歩は岬戦で何か新たな力を得るのかもしれません。信歩は終盤型、岬は序盤から堅い戦いをするのが得意だと思いますが、十歩はイマイチどんな棋風なのかはっきりしません。この戦いで新たな力を得ることで棋風がわかるかもしれませんね。それか本当に噛ませ犬になるか。

    下の匿名様:
    なるほど専門的なご意見ありがとうございます。私も「早石田ってだいたいこんなイメージ」というのはあるのですが、詳しいことは正直わからないです。やっぱり▲7四歩は居飛車側が指しやすいんですね。彼らの棋力がどの程度であるのかはよくわからないのですが、アマチュア同士だといい勝負といったところでしょうね。特に信歩は何が何でも矢倉を目指すぐらいなので、あまり序盤の定跡とか、多少の作戦負けとか気にしてないのかもしれません。

    皆様コメントありがとうございます。

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