「ものの歩」を読んで感想を書いてみました。理解しやすいストーリーの男女混合シェアハウス漫画です

週刊漫画雑誌の「週刊少年ジャンプ」(No.42、9月28日号、9月14日発売)で、将棋漫画の連載がスタートしたというので、その第1話(作中では第1局、と表現されている)を読んでみました。

この漫画のタイトルは「ものの歩」。

簡単にネット上での評判を確認したところ、よろしいようです。当サイトは将棋サイトですので、良い漫画評論はできないと思いますが、ストーリーを紹介し、私(管理人)の個人的な感想も少し述べたいと思います。

この記事はネタバレを含みます。といってもまだ第1局なので、バラされても問題ないとは思いますが。

概要

作者は池沢春人さん。「クロガネ」という作品が有名。しかし私はそれを読んでいませんので、比較考察はできないです。申し訳ございません。その分先入観なく感想を述べます。

監修は橋本崇載八段。棋士としては竜王戦1組、順位戦はB級1組でA級に在籍経験もある実力者。近年の目立った活躍といえば前期の第64回NHK杯テレビ将棋トーナメントでベスト4。準決勝では行方尚史八段に二歩で敗戦。モデルでもあり、将棋バーも経営しています。石川県出身、剱持松二九段門下、32歳、愛称ハッシー。

英語の題名は「MONONOFU」(同誌表紙に記載)。

登場人物

第一話で登場し、この後にも重要な役割を果たすであろう登場人物たちです。

高良信歩(たから しのぶ)

本作の主人公。高校1年生になる少年。実家には血のつながっていない母親がいてなじめず、居づらい。しかし高校の寮は老朽化により入居できない。そのため下宿を探す。頭がいいわけでもなく要領も悪いようだ。性格も少しネガティブ。黒い髪だが、頭頂部を赤く染めている。右手に謎の包帯を巻いている。登場時点では将棋のルールも知らない。みなとに「居飛車顔」と評される。振る方ではなく、振られる方だということか。

直井泰金(なおい やすかね)

信歩の才能を見抜き、世話役となるであろう少年。シェアハウス「かやね荘」のリーダー的存在だと思われる。いつもニコニコ。信歩がネガティブな性格なので、対称的だ。ミディアムな金髪にメガネ。時々メガネが鋭く光る。奨励会員である。

銀雅(ぎんが)

かやね荘の住人の少年。背が高そう。第一話ではコーヒーを買ってくる程度の脇役に甘んじている。世間知らずそうだ。黒髪。奨励会員。

香月(かづき)

かやね荘の住人の少女。ヘッドホンを常に携帯しているようだ。投了した相手に土下座を求める。きっとドSである。青髪。かやね荘が奨励会員限定であることから、香月も奨励会員であると考えられる。女流棋士ではなく、棋士を目指していると思われる。将棋界の「かずき」といえば木村一基八段であるが、香月も受け将棋なのだろうか。

2015/9/16追記:
香月は少女ではなく、少年(男性)の可能性が高いことがわかりました。詳細はコメント欄にご指摘をいただきましたので、参照ください。今後何か追加の情報が出ましたら、本記事を修正したいと思います。

みなと

かやね荘の住人の少女。第一話の季節は3月~4月上旬ぐらいであり他の住人は長袖長ズボンを着用しているが、彼女だけはキャミソールとショートパンツを着用している。暑がりだと思われる。「私より先に風呂に入ったら殺す」と述べていることからきっとドSである。明るい茶髪。奨励会員で棋士を目指している。

桂司(けーし)

かやね荘の住人の少年。明るい金髪で、少年漫画の主人公のような出で立ちである。主人公に社会の仕組みも教えてくれそうな存在だ。第一話では女性の好みを自ら表明している。みなとのことが好きなようだ。奨励会員だが、住人のなかでは信歩を除き最も将棋が弱いようである。

あらすじ

将棋のルールさえ知らない信歩が、奨励会員限定のシェアハウス「かやね荘」に手違いで入居する。

かやね荘の間取りは4LDK。千駄ヶ谷駅徒歩10分の好立地。「荘」という名からしてクソオンボロアパートかと思いきや、塀や植木もある近代的な一戸建てである。家賃は、住人の代表が一括して、住人の人数に関わらず定額を大家さん(か不動産会社)に納める形式をとっているようだ。なので人数が多いほど一人あたりの家賃が安くなり、人数が減れば一人あたりの家賃は高くなる。したがって、正確にはシェアハウスというより「ルームシェア」と言ったほうがいいかもしれない(シェアハウスだと基本的には住人一人一人が個別に賃貸契約するので、住人の人数変動によって一人あたりの家賃が変動することはない)。1人3万円だということから、合計18万円ぐらいと思われる。

信歩は奨励会員でないが、この家賃システムのために歓迎されてかやね荘に入居した。

かやね荘では住人たちによって日夜将棋の練習対局が行われている。

住人の名前は泰金、銀雅、香月、桂司、みなと、ということで、全員が将棋の駒からとられているようだ(それぞれ金将、銀将、香車、桂馬、と金?)。そこに信歩(歩兵)も参加する。「めぞん一刻」方式である。

この後、飛男(とぶお)とか角美(かくみ)とか玉次郎(たまじろう)とかが出てきそうではある。

また、「歩」の裏が「と」、つまり信歩とみなとは表裏一体みたいな設定が、どこかで登場しそうだ。例えば生き別れた兄妹とか。

信歩、将棋に興味を持つ

信歩は勉強も苦手(問題を要領よく解くのが苦手)だし日常生活でもうまく立ち回れない不器用な少年である。漫画におけるできの悪い主人公の代表格はドラえもんの「のび太」であるが、信歩はそれに加えて、家庭環境も良くなく、ネガティブ思考気味でもあるので、のび太くんより救いようがない。

そんな信歩が将棋に才能を発揮する。かやね荘に入居し、住人から勧められて将棋を覚えたばかりにも関わらず、難問の詰将棋(後述)をあっさりと解いてしまうのである。のび太くんのあやとりである。

信歩は、泰金の「報われない努力など無い」という言葉(谷川浩司名人が弟弟子の井上慶太五段(当時)に送ったという手紙に書かれていた言葉からとったと思う)に感動。

そして第一話の最後では調子に乗って「自分もプロ棋士を目指す」と住人たちに宣言する。もちろん常識的に考えれば、高校1年生で将棋を覚えてプロになるというのは不可能である。信歩の発言は、プロ棋士になる仕組みをわかっていないために生じたものである。

その信歩の宣言を聞いた住人たちは唖然として「はああああああああああ!!?」と叫ぶという反応を示す。実に冷たい。私だったら「そうだね、とっても難しいかもしれないけどやってみる?」とか言っておいてから徐々に現実をわからせるだろう。しかし、将棋指しは元来、相手の悪手を咎めたくなるのだろうから、彼らの反応はそれをよく表しているといえる。

第一話最後のコマ(将棋の駒ではなく漫画のコマ)には、「その歩は打たれた」という言葉とともに、盤上で敵王の頭を叩く歩が描かれている。もちろんこの歩は信歩を暗喩しているものだ。外の世界から、盤上という将棋の世界に来た。では叩かれた王は何者なのか。きっと強大な敵が現れる、ということを示唆しているに違いない。

個人的な感想

私は漫画はほとんど読まないので、これが面白いのかどうなのか、判断が難しいです。でもとてもわかりやすかったです。内容が理解できないということはないと思います。

第一話の後半は、最弱の「歩」が最強とも言える駒「と金」に成るというわかりやすくかつ将棋の醍醐味でもある部分で主人公が自分の境遇をかさねあわせて感動し、その後、主人公が自分では気付かなかった能力を発揮して難問の詰将棋(後述)を解く、という理解しやすい展開。初めて野球をやった少年が見よう見まねでバットを振ってたらホームランとか、モンスターが襲ってきたので武器を振り回してたら必殺技が出たとか、そういうのに通じると思います。少年漫画誌らしいストレートな展開といえると思います。

シェアハウス漫画(正確にはルームシェアであるが)としての側面もあります。

私は「めぞん一刻」は読んだことはあります。めぞん一刻はアパートの住人たちの話で、各住人の名前が部屋番号を表しています。5号室=五代など。ストーリー中でも紹介しましたが、「ものの歩」にもその要素があります。めぞん一刻では、主人公が管理人さんに惚れるわけですが、ものの歩でも、男女が一緒に住んでいるからには恋愛要素があるかもしれませんし、壁を破って隣の部屋に侵入する住人が現れるかもしれません。そういうのはシェアハウスの楽しみの一つでもありますし、ものの歩をシェアハウス漫画として読んでも面白いと思います。

というか、第一話に限れば、将棋漫画として読むよりシェアハウス漫画の中に将棋要素が入っている感じととらえたほうが私としてはしっくりきて心地いいです。将棋サイトの管理人と思えぬ感想かもしれませんが、将棋の世界では「事実は小説よりも奇なり」というような出来事も多くあって。

せっかく漫画の世界ならではの少年少女混合シェアハウスというファンタジーな設定があるので、それを活かした展開を希望したいですね。たぶん少年誌なので、(将棋の世界での)主人公の成長、対局で強敵を倒す、というのがストーリーの中心になりそうなのですが、個人的には将棋で味をつけたシェアハウス漫画を読みたいという気持ちになってきました。

ただ、少年ジャンプの読者のほとんどは将棋ファンではないでしょうから、戦いや主人公の成長を描くことで将棋の世界を知ってもらうというのも、それはそれでいいのかなとも思いました。

なんともまとまりを欠いていますが、以上個人的感想でした。次回も読んでみないとわかんないですね。

詰将棋

作中で登場した詰将棋を紹介したいと思います。

将棋覚えたての信歩が解き、住人たちを驚かせた難問です。

答えは図の下に。

20150915-tsume3-0

え?・・・これ難しいの?だってまず▲2九香でしょう。

20150915-tsume3-1手

受け方(以下、後手といいます)が2二に合駒をしたり、△1一玉と逃げたりしたら、▲2二とで詰みなので、△1二玉と逃げるしかない。それでも▲2三香成 △1一玉 ▲2二と、で5手詰みですね・・・?

20150915-tsume3-5手

というのは甘くて、これは簡単だと思わせる罠。持ち駒も余りますし。でも一応初段レベルの私でも罠にかかりましたよ。

▲2九香と打ったところで、後手が2三に合駒(中合い)をする手があります。

20150915-tsume3-2手

もちろん詰将棋においては後手の持ち駒は盤上の駒と攻め方(先手)の持駒以外の「残り全部」で、どの駒を合駒すればよいのか(後手としては最善なのか)、検討を尽くす必要があります。

これはまず将棋を覚えたての人は解けないと思います。

この問題は「大道詰将棋」とよばれる有名な詰将棋の「香歩問題」。正解は、

▲2九香 △2三銀 ▲2二歩 △1一玉 ▲1二歩 △同銀 ▲2一歩成 △同銀 ▲1二歩 △同玉 ▲2三香成 △1一玉 ▲1二歩 △同銀 ▲2二と

の15手詰め。2手目に銀で合駒するのが最善だとわかって読みきったとはすごい。

第二話以降は

週刊少年ジャンプは週刊誌なので、来週には第二話が出ます。

私は将棋ファンになったのが最近ですから、こうやってリアルタイムに連載されている将棋漫画を最初から読むというのは初めての経験で、新鮮です。第二話以降の感想も述べさせていただくかもしれません。その際はよろしくお願い致します。

私は普段漫画を読まないため、ストーリーの解釈で不備があるかもしれません。もしなにかお気づきの点がございましたら、コメントか、お問い合わせかツイッター(@shogi1com)で、ご連絡いただけますと幸いです。

以上、ありがとうございました。

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コメント

  1. 通りすがり より:

    読売プレミアムで将棋を題材にした「盤上の向日葵」という連載小説をやっています。将棋関係のサイトなどでどこも取り上げていないので、読んでみてくださいな。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      知りませんでした。そのような小説があるんですね。

      しかし、私は読売プレミアムの会員ではありませんし、そのためだけに有料会員になるのは躊躇しますね・・・。

      もしよろしければ、書評などをご寄稿いただけないでしょうか。広く知っていただくきっかけになるかもしれません。

      よろしくご検討をお願い致します。

  2. 匿名 より:

    香月さんは男性の可能性が高いと思いますよ
    ・桂司に投了を迫った場面で胸板を厚く描いている
    ・背が高く、体格がいい
    ・鎖骨フェチと暴露された
    ・泰金さんは「香月ちゃん」と呼んだが、信歩君のことも「信歩ちゃん」と呼んでいる

    信歩君は普通に考えたらプロどころか奨励会もかなり難しいですが、そこは少年漫画ですから。初心者からプロを目指すストーリーだと、マガジンにベイビーステップというテニス漫画があります。こちらの主人公は高校一年でテニスを始めて、高校三年で大人やプロもいる全日本のトーナメントで準決勝まで勝ち進んでいます。こちらも普通なら考えられませんが、展開がうまく不自然さは感じさせません。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      ご指摘ありがとうございます。香月が男性!た、たしかに・・・。私としては、

      ・桂司の「香月は鎖骨だぜ?」発言については、女性が男性の鎖骨を好んでいるものだと考えた
      ・香月が「汚さないでよね」と、女性らしい言葉で発言している
      ・髪が長い
      ・なんか可愛い

      ということを申し上げておきますが、おそらく匿名様が漫画をよく読まれる方であれば、匿名様のほうが正しい可能性が高いです。私はほとんど漫画読まないので、特に絵を見て男か女か判断する能力に欠けていると思います。もし何か追加の情報があり性別がわかりましたら記事を修正いたします。

      そうですね、漫画なので夢のある展開でもなんら問題ないと思います。私はそっち方面での活躍がメインになるより、シェアハウス設定を活かした展開を希望なのですがそれが少年誌の読者にうけるかどうかはわからないですね。

      ご指摘、コメントありがとうございます。

  3. ヒロ より:

    自分も香月ちゃん女子希望で読んでましたが
    桂司がDVDで「みなとに見つかるなよ」と言ったシーンで
    あれ?香月は?っと思って
    その後の上の方が指摘する投了迫るシーンの胸板で夢潰えました

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