木村一基八段、NHK杯で欲張り爺さんになる

2015年11月15日放送の第65回NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦第15局(▲木村一基八段vs△森内俊之九段)の感想戦で、木村八段が色々とボヤいてくれましたのでご紹介します。

木村八段といえば、「千駄ヶ谷の受け師」や「保険のおじさん」と呼ばれる受けの達人であり、解説名人と言われるほどの人気のある解説も有名ですが、感想戦でも楽しませてくれます。

この記事には対局結果が含まれますので、まだ放送をご覧になっていない方はご注意下さい。

司会は清水市代女流六段、解説は島朗九段でした。詳しい棋譜はNHK杯公式サイトで御覧ください。

感想戦で

終局後。

後手の森内九段は手を口にあてるポーズ。木村八段は腕組み。

木村八段「いやー。ひどかったですかね」

感想戦は仕掛けのあたりから。木村八段の乱れた駒たちをそっと直してあげる森内九段。

20151115-49手

この局面は実戦例があるようで。

清水女流「この形は実戦例が?」

木村八段「いや、この形(1五歩が1六歩)なんですけどね。本譜は一手得している。・・・一手ぐらいどうってことなかったか

自信しかなかった

木村八段が攻める。

20151115-69手

島九段が木村八段にこの局面について尋ねた場面。

島九段「自信のほどは?」

木村八段「ここはもう、自信しかなかった

森内九段「(笑)」

棋風の受け将棋を封印し、この日は快調に攻める木村八段。

20151115-74手

形勢は楽観視していたようで。

木村八段「いいはずだと思っていたんですけどね」

島九段「木村さんの攻めも巧妙を極めましたね」

木村八段「いやーここで悪手が出るんですよ。きっとこのへんから出ると思ってたら、ほんとに出ちゃった

負けない一手

玉頭を叩く。

20151115-75手

ここで一言。

木村八段「王手してる間は負けないから

歩を取り込み玉頭に迫った以下の局面。

20151115-79手

普通の一手に見えたが。

木村八段「普通で負けちゃったか。おかしいな」

欲張り爺さんになるか、泣いちゃうか

以下の局面では。

20151115-82手

王手飛車取り(△3五角)をかけられるのをわかっていながら。

20151115-83手

飛車で香車を取る。

木村八段「欲張り爺さんでした?

森内九段「(笑)」

木村八段「取れるもんは取っとけっつって」

「将棋の強いおじさん」「保険のおじさん」は、年老いて「欲張り爺さん」になりました。

なお、飛車で香車を取る手に代えて、▲2七歩と打つ手はどうかというと。

木村八段「しかし今更歩(▲2七歩)もなあ」

森内九段「ちょっと時間かかりますもんね」

木村八段「いや、歩打って負けたら泣いちゃうなと思って

つまり本譜のように「欲張り爺さん」になるか、歩を打って「泣いちゃう」かの二択を迫られていたということですね。

勝ちがなければ

感想戦で以下の手を指摘した木村八段。

20151115-c87手

島九段「よく見えてるぅ」

木村八段「いやーさっき見えてればよかったですけど」

本譜は玉を▲6八玉と逃げたが、▲6九玉と逃げておけば(下図)難しかったようで。

20151115-b88手

ここで木村八段。

木村八段「これで、勝ちがなければ・・・負け。当然ですけどね

どこまで行っても

先手が▲6九玉とした仮定は、感想戦の後半で詳しく検討されました。

20151115-b90手

上図で先手に手番が回ってくる。

木村八段「寄せ方を試されているか

しかしうまくいかないようで。

木村八段「(小声で)どこまで行っても勝てないのか・・・(少し声を大きくして)どこまで行っても勝てないですかね

悲しい運命

最後の方はちょっと聞き取れない部分もあったんですが、あれこれ検討しながらだいたい以下の様なことをおっしゃっていました。「負ける運命」という悲しい言葉も出てきました。

木村八段「そうか、頓死する・・・予定になっちゃってるのか。これは失敗。ってことはやっぱり負ける運命にあったか。それは悲しいですね。それでも詰みか、それでも詰みですか。いやーわかりませんね。勝ちはあるような気がするんですけど、正直言って明快でもないし。(駒を動かしながら)やってるだけだな。まあ難しい」

わずか10分あまりの感想戦で、これだけのボヤキを聞けてお得でした。他の棋戦でもボヤいているのを聞いていますが、地上波の、NHKでもこのボヤキです。

この対局の詳しい解説と棋譜はNHK将棋講座テキスト(2016年)2月号に掲載されるとのことです。このボヤキを思い出しながら読むと、いっそう楽しめると思います。

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コメント

  1. 永世五級 より:

    この対局生で見てましたが、前の時間のひふみんインタビューが吹き飛ぶくらい面白かった(笑)
    受けを捨ててまで迫った木村八段の執念を感じましたが…残念でした。

    感想戦、初級者の私にはちょっと早すぎでしたがそれでも木村さんのボヤきと島九段の解説が分かりやすかったので、巻き戻しながらゆっくりみたいです。

  2. 管理人 管理人 より:

    コメントありがとうございます。

    面白かったですね。私もまだプロの対局を全部楽しむには棋力は不十分だと思いますが、この将棋はそんな私でも分かる部分が多くて良かったです。
    NHK杯にしては感想戦の時間も10分ほどあって、ポイントはわかったと思いますが、やはり詳しくはNHKテキストで、っていう感じですね。

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