棋士が対局中に棋譜用紙を確認する理由4つ(千葉幸生六段の場合)

将棋では、棋士が対局中に、記録係に棋譜用紙を見せてもらう場面があります。

棋譜用紙には、それまでの指し手の他、対局者名や棋戦名、対局場、対局日時、一手ごとの消費時間、通計消費時間なども書かれています。

一見、対局者が対局中に棋譜用紙を確認する必然性がないように思います。指し手を覚えていないプロはほとんどいないと思いますし、残り時間を知りたければ、記録係に訊けばいいし。まさか棋戦名や対局者名を確認するわけでもないと思いますし。

でも見せてもらっていることがある。なぜなのか。

時間を見る

2015年10月6日の第63期王座戦(羽生善治王座vs佐藤天彦八段)第4局のニコニコ生放送では、メールで「対局中に棋譜用紙を見ることがありますが、何を確認しているんでしょうか?」という質問が寄せられました。

解説の千葉幸生六段がこの疑問に答えてくれました。

千葉六段「一番気になるのは残り時間。と、今までの時間の使い方を振り返っている」

なるほど。まず第一に「残り時間の確認」。記録係に訊けばいいところを、自分で棋譜用紙を確認しているということですね。ただ、棋譜用紙を確認すれば自分の残り時間だけではなく、相手の残り時間も確認できるというメリットがありそうです。

そして2番目は「時間の使い方」。

高度な戦略

これについては、千葉六段から補足がありました。

千葉六段「僕の場合、そこでそんなに戦略立てているわけじゃないが、深読みする人だと、相手はここまで研究していたんじゃないか、とか考える人もいるかもしれない。相手がここで長考したから、ここで読み筋を外したんじゃないかとか」

これはよく聞く話ですね。相手の時間の使い方を見て、ここまでは予定通りだったとか、研究済みの進行だとかを確認することで、この後の戦略を立案しようということだと思います。

この話を聞くと、プロ棋士のやることって高度だと思うんですよね。当たり前ですが、ただ最善手を目指すだけではない、相手との戦いだというのがわかります。これはコンピュータ将棋でもやってるのか? という疑問が生まれました。やってたらすごいです。

記録係のために

千葉六段はさらに他の理由もあると言います。

千葉六段「記録係が初めての子とかで、不安そうだと、『この子大丈夫かな?』と確認する」

優しい。自分の生活をかけた勝負の最中にこの優しさ。つまり第3の理由は「記録係の仕事ぶりを確認」。

記録係の睡眠阻止

そして4番目の理由は。

千葉幸生「あと、記録の子が眠そうだと『一枚見せて』って起こしてあげる」

郷田真隆王将は「ちょっと!」と言って記録係を起こしましたが、千葉流は「一枚見せて」。優しい。つまり4番目の理由は「記録係を起こしてあげる

そういえば、この日は対局者の佐藤天彦八段が昼食後にあくびをする場面がありました。

その時、聞き手の室谷由紀女流二段が「お昼ごはんの後は眠くなりますか?」と千葉六段に質問。千葉六段は「対局中は眠くならないけど、記録係の方がむしろ眠くなるかもしれない。寝るわけにはいかんのですが、寝るわけにはいかんですけどね」と繰り返していました。

また、わざと駒音を立てて記録係を起こす棋士もいるようです。記録係の睡眠防止にはいろんな手筋があるようです。

まとめ

まとめると、

「残り時間の確認」
「時間の使い方の確認」
「記録係の仕事を確認」
「記録係を起こす」

この4つを一気にできる一石四鳥の行為が「棋譜用紙の確認」。

一手でいろんな効果がある。お得です。

千葉六段がおっしゃった4つの理由以外にも、何かあるかもしれません。例えばなんとなく気分転換とか、相手に何らかのプレッシャーを与えるとかですね。

また、僅かですが、もしかしたら棋戦名や対局者名を忘れて「あ、これ竜王戦だったんだ」とか「ああ、この人○○四段っていう名前なのか」とか確認している可能性もあります。

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