将棋の普及と文化・言語の話。「将棋を世界に広める会」のシンポジウムで気になったこと(その2)

「将棋を世界に広める会」の20週年シンポジウムで気になった話をご紹介する記事の第2弾です。

第1弾は以下です。

将棋の普及とお金の話。「将棋を世界に広める会」のシンポジウムで気になったこと(その1)

今回は将棋の文化的側面や、海外に広める上でハードルになりそうな言語の問題に関連する、出演者の発言をピックアップしてみました。今回も、少々乱暴ではありますが、気になった点の要約と私(管理人)の個人的な所感をまとめてあります(所感は読み飛ばしていただいてもいいと思います)。

出演者は青野照市九段、北尾まどか女流二段、カロリーナ・ステチェンスカ女流3級、81Dojoの川崎智秀さん、および羽生善治名人。出演者の紹介は第1弾の方に書いてありますので、必要に応じてご覧下さい。よろしくお願い致します。

ユネスコ無形文化遺産に登録?

まず日本将棋連盟専務理事である青野照市九段の発言から。「世界に広める」手段になりえる?

青野九段「将棋をユネスコの無形文化遺産に登録できないかという話を、棋士総会で提案した」

ユネスコ無形文化遺産と聞くと突拍子もない感じもします。しかし日本で言えば、能楽、歌舞伎、雅楽などの芸能・芸術分野も登録されています。2013年には「和食」も登録されました。

無形文化遺産に登録されて何がいいのか、具体的なことはわかりませんが、国などは登録された文化を守ることが義務となるようです。そうすると結果的に他のゲームに比べて何らかの優遇措置(予算とか?)があったり、注目度を高めたりできそうです。

このシンポジウムでは、「将棋のイメージを高めて欲しい」と羽生善治名人にお願いした方がいましたが、ユネスコ無形文化遺産ともなれば世界的にイメージは向上しそうです。

チェスのGMが将棋に興味

81Dojo管理人の川崎智秀さんの話。

川崎さん「各国では、将棋の普及活動が『自立』しつつある。これを支援するために現地とタイアップしていくことが必要。将棋に対する情熱がある一部の人は、自力で日本とインタラクトしている。チェスのGMのニールセンさん(Peter Heine Nielsen)は、Facebookでチェス仲間に『将棋がすごいぞ』と紹介している。その日のタイトル戦の情報を引っ張ってきて、それをコンピュータソフトで解析して評価値がどうなっているとかを紹介している」

ニールセンさんは自力で将棋の情報を収集してFacebookで紹介しているらしい。チェスと将棋は同種のゲームなので受け入れられやすそうですし、これは面白い流れ。

また、西尾明六段による英語の将棋ブログも画期的である、と言及がありました。西尾六段は寄せられた質問にも英語で回答しています。例えば以下の記事ではニールセンさんがコメントし、西尾六段が答えています。

Basic Tactics For Breaking Yagura Castle (4)

将棋世界・週刊将棋の英語化を

前回の記事でも触れた、英語書籍の話。カロリーナ・ステチェンスカ女流3級から将棋世界、週刊将棋編集部への提案。

カロリーナ女流「英語で将棋を語ることは本当に必要です。世界は常に回っている。将棋も世界中に紹介されるためには英語が必要。例えば、将棋世界、週刊将棋はまだ翻訳されていません。こんな面白いものが英語になっていないのは残念です。このボリュームを英語にするのは普通でない努力が必要でしょう。それでもみんなは待っています」

タイトル戦とか、大きな話題や外国の方にも興味がありそうな記事はだけでも翻訳されたらよいかもと思いつつ、確かにすごい大変そう。前回も書きましたが、原文が翻訳しやすい日本語で書かれていることが重要だと思いながら聞いていました。

漫画・アニメの影響力

いまや日本を代表する文化となった漫画やアニメ。このシンポジウムが開催されたのは、ちょうど「3月のライオン」のアニメ化が発表された時期でした。

青野九段「子供の大会などを見ても、囲碁より将棋をやる子のほうが圧倒的に多い。ところが『ヒカルの碁』の全盛期には、囲碁のほうが多いんじゃないかっていうぐらい囲碁の方に行ったことがあって。『ヒカルの碁』が終われば将棋のほうが多くなるんですけど。漫画の力というのは、これがいかにすごいか、これを利用というか一緒にやったほうがいいという認識がないと」

日本でアニメが放送されると、すぐに世界中に(一部は合法的に、一部は違法に)翻訳されて広まるらしいです。その影響は計り知れない。

詩で駒の動きを覚える

北尾まどか女流二段の話によると、どうぶつしょうぎはポーランド、フランス、台湾、韓国でローカライズされており、中国ではベネッセと協業で幼稚園児向け教材として配布されるらしい。ベネッセの中国における会員数は10万人。そんな中国での話。

北尾女流「上海の将棋人口は少し前に60万人、現在はもっと増えている。上海の小学生は、駒の動き方を詩のようなもので覚えている。『歩は一歩前に進みます、香車はまっすぐたくさん進みます』みたいな、それを子供たちが唱えて覚えている」

駒の動きを歌で覚えるとは新しい。九九とか、アルファベットでもそうですが、リズムにあわせて覚えるのは効果的なのかもしれません。子供さんに教える時の参考に。

正座の問題

現在、プロの多くの対局は正座で行われています。しかし外国の方にとっては正座はやはり苦しいようで。

カロリーナ女流「正座は辛いです」

カロリーナ女流の「正座は辛い」はもう定番ネタみたいになっています。私も子供の頃、正座をしなければならない習い事をしていたので、気持ちはわかりつつも、慣れの問題もあるかと思いました。ただ、年をとってくるとまた辛くなるらしいですが。正座によって対局に支障をきたしたという例も、いくつかありますね。

将棋と正座の文化は今後どうなるのか。

青野九段「椅子対局が悪いというわけではないが、先ほどのユネスコ無形文化遺産の話も含めて、将棋は単なるゲーム性だけではなくて、着物を着て正座をして挨拶をしてという儀式、取った駒を使える世界、駒の美術工芸品としての価値、これらの組み合わせで、世界に誇れる日本の文化だといえる。主催者が言うのであれば椅子対局でもいいが、困らないのであれば正座がいいのではないか」

和服と英語

北尾女流が海外で和服を着るのも、文化を知ってもらう意味があるようです。

北尾女流二段「海外に行く時に和服を着ていくのは、日本的なアイコンとしてわかりやすいから。注目していただけるし、将棋が日本の文化だとわかっていただける」

なるほど確かに。そう言われると男性の棋士も和服を着ていったほうがいいかもしれないですね。

英語がしゃべれなくても

最後に、英語ができない人にとって希望がある話。北尾女流はこれまで20カ国を訪れて普及活動をして、1年の3分の1は飛び回っているらしいのですが。

北尾女流二段「実は私は英語は全然できない。いまだにしゃべれない。それもあって、言葉はひたすら将棋用語を日本語でしゃべっている。興味を持ってくれた方には覚えてくれるし、それで話が通じる」

元々ボードゲームは、言葉が通じなくても楽しめる遊びです。それに世界各地にはチェスをはじめとした将棋類が存在しますので、外国の方であってもルールの飲み込みが早いんじゃないかと思います。そして興味を持つきっかけとして「日本の文化」があると。これはかなり強みになんじゃないかと改めて思ったのでした。

例によって、少々乱暴なピックアップの仕方になりました。もし前後関係含めた発言の詳細をお知りになりたい方は、コメント欄に記入いただくかお問い合わせいただければと思います。

以上、最後までありがとうございました。

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コメント

  1. 長さん より:

    日本将棋は、北尾まどか女流二段も含む、将棋連盟による海外普及が活躍中ですが。
    日本の将棋のうちで、日本将棋以外は啓蒙の有力拠点が。外国の例もあるんですね。
     たとえば中将棋なんかだと。逆にオランダのプログラマーが、Hachuという
    ソフトを作って、日本人に対し、盛んに啓蒙してくれていますね。81DoJoも
    日本における中継点になっています。その際、言語。現実大きな壁ですね。一例は。
    「Hachuソフトにバグあるよ。ソフト側は、獅子の二歩動きが正常にできるが、
    人間側が、跳び越え動きだけ出来て、玉将動きを二回して一手とする、日本将棋で
    もあんまりなじみの無い、独特な動きができない。」って言うの。オランダ語で、
    どう表現するんでしょうねぇ。
    このソフト。大将棋の方では、何とか私でも勝てそうですが。中将棋のソフトと
    しては。少なくとも私には、歯がたたないほど強いんですけど。残念ながら。
    人間側のソフト上の操作に関して。合法手のうちの有力な一部が操作できない。
    恐らくソフトのバグがたまたまるようなのですね。そのせいか。
    中将棋指せる方の中で。ここ一年、この有力ソフトが話題になっている様子が無い
    ようで。実にもったいない話があるもんですね。
    中将棋に精通している方と。杉田玄白レベルで、オランダ語の堪能な方が。どこか
    におられると良いんですがねぇ。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      本将棋でもそれほど低くないハードルだと思いますから、それより競技人口や関心がある人が少ないと思われる将棋類は厳しいですね。それに精通していてオランダ語ができる方となるとさらに難しいですね。

      言語の問題は、翻訳ソフトなんかで、なるべく平易な日本語を入力して、目的の言語に変換してみると良いかもしれません。
      そして変換された文章を再び日本語に翻訳してみて、日本語がおかしければ、最初に入力した日本語の書き方をもっと工夫してみる、という具合にして文章を作成し、報告すればなんとかなるかもしれません。
      私も外国の方との仕事で、そういうやり方をしたことがあります。

      コメントありがとうございます。

      • 長さん より:

        Een bug in Hachu software. Zachte kant , maar leeuw twee stap
        beweging succesvol kan zijn ,
        Menselijke kant , kunnen alleen verplaatsen over te
        springen , en één kant was tweemaal de Gyokusho beweging
        in Japan Shogi
        Zoveel onbekende , niet ook uniek beweging .

        googleに入力すると、一応上のようにオランダ語出力されますね。
        合っているのか、全然通じない文になっているのか・・・

        • 管理人 管理人 より:

          はい。そのオランダ語を再びグーグル翻訳で日本語に翻訳すると

          Hachuソフトウェアのバグ。ソフト側が、ライオン2段階
          運動は成功することができ、
          人間の手は、唯一に上に移動することができます
          ジャンプ、片側二回Gyokushoの動きでした
          日本将棋
          非常に多くの未知のではなく、さらにユニークな動き。

          となります。なんとなーく通じますが、もっと平易で翻訳されやすい日本語を用いると良いかもしれませんね。

          日本語→オランダ語→日本語、と翻訳することで、最初の日本語の文がただしく翻訳されたか、ある程度は確認できそうです。

          • 長さん より:

            往復翻訳の御紹介。どうもありがとうございました。
            「zijn」が、オランダ語で獅子なのかどうかが、一番心配でしたね。ぱっと
            見に麒麟のような気もしますんで。日本語の返し翻訳結果を見る限り。
            Mullerさんなら、何に言いたいのか、100%判ると思いました。
            このページもgoogle検索で普通にヒットしますんで。作者は
            検索エンジンを使っているなら、気が付くでしょう。よって、ここへの
            更なるオランダ語の書き込み等は止めます。ありがとうございました。

          • 管理人 管理人 より:

            はい、お役に立てたならよかったです。

            あ、そうですよね。我々も外国の方からちょっと変な日本語でも受け取ったら解釈しようと試みますし。

            あと、応用編としては日本語を英語にしてから(ここは自力で翻訳)、英語をオランダ語にする(ここはグーグル翻訳で)という方法だと、翻訳精度があがるかもしれません。
            何かの時の参考に。コメントありがとうございます。

  2. ななし より:

    81dojoのHIDETCHIさんのブログでこちらの記事が紹介されていますね。
    もっともっと海外に広まるといいですね。

    • 管理人 管理人 より:

      情報ありがとうございます。すべての記事を紹介していただいていて、ありがたいですね。

      そうですね、海外にももっと、国内にももっと、という感じですね。
      相乗効果というか、日本で定着していることが海外の方にとっては魅力に映るでしょうし、海外で広がっていることが日本国内でも価値を感じてもらえる、というふうに思っています。

  3. ななし より:

    あと、あそこで紹介されている動画は公式とされていますね。

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