藤井猛九段、居玉金金で佐藤天彦八段に勝利!新たなる藤井システムの誕生か

 はじめまして。アライコウと申します。普段はフリーライターとして活動しておりますが、数年前から将棋にのめり込み、今ではすっかり生活の一部になりました。

 このたび縁あって、将棋ワンストップ様に寄稿させていただくことになりました。ぜひお読みいただければ幸いです。

藤井九段、竜王戦決勝トーナメントへ

 2015年5月26日に行われた第28期竜王戦1組出場者決定戦(5位決定戦)、藤井猛九段-佐藤天彦八段戦は、藤井猛九段が勝利し、決勝トーナメントへの進出を決めました。

 この対局は日本将棋連盟モバイルで中継され、全国の将棋ファンが固唾を飲んで見守りましたが、とりわけ注目されたのが先手だった藤井九段です。Twitterで「藤井猛」「藤井九段」と検索してみると、彼の将棋に魅了されたファンが、いかに多いかというのがわかります。

 さて、将棋に興味を持って間もない方々は、不思議に思ったかもしれません。なぜ藤井猛という棋士は、これほどまでにファンの熱い視線を浴びているのか? と。

 あらためて実績を確認してみると、竜王戦は竜王位3期を含む1組以上12期、順位戦はA級10期という、まさに超一流の数字です。しかし藤井九段の人気ぶりは、この数字だけでは説明できないものがあります。

 思えば私(アライ)が藤井九段のことを知ったのは、将棋に興味を持って間もない頃でした。初心者の耳にもしょっちゅう話題が入ってきたのです。なぜそんなにも話題になっているのか、当初はよくわかっていませんでしたが、やがて知ることができました。藤井九段は単に強いだけではない、唯一無二のユニークな棋士であることを。

 そこで今回は、主に初心者の方のために、藤井九段の魅力とは何かについて書いてみたいと思います。

独創的な戦法「藤井システム」

 将棋の戦法は、居飛車と振り飛車の2種類に分類されます。藤井九段は振り飛車のスペシャリストとして知られています。

 その藤井振り飛車の代名詞といえるのが「藤井システム」です。詳しい説明は藤井猛九段公認応援サイトの鰻屋本舗さんに載っていますが、ざっくり説明しますと――

1.最強の囲い・居飛車穴熊。振り飛車の天敵として猛威を振るっていた。
2.しかし居飛車穴熊は構築するまでに手数がかかり、隙ができることも。
3.その隙を突くため、守りを省略して居玉(自分の王様を動かさない)のまま攻めかかる。

 という、非常に特徴的な戦い方です。将棋の初心者がまず教わることは「王様を移動させ、金銀で守りましょう」というものですから、そのセオリーに反する藤井システムは、プロの目からも衝撃的に映りました。この革命的な戦法を原動力として、藤井九段は竜王位を3期獲得、また独創的な戦法を編み出した棋士に贈られる「升田幸三賞」を受賞し、一躍トップ棋士の仲間入りをしたのでした。

 藤井システムは構想、威力の素晴らしさはもちろんですが、その形が美しいと思います。将棋では悪型とされる「玉飛接近」、それを起点にして歩や銀桂をぐんぐんと盛り上げていく。さながら尖塔高き城のようです。

「角交換四間飛車」の発展

「なるほど、藤井システムを編み出した功績があるから、藤井九段は人気なんだ」

 正解です。ですが、これだけではないのです。

 藤井九段はその後も他の棋士がやらないような、ユニークな振り飛車を追求します。そして「角交換四間飛車」という戦法で、再び脚光を浴びます。それまでは角を交換しない振り飛車が一般的だったので、藤井システム同様に将棋の序盤戦術そのものに変化をもたらしたといえます。

 角交換四間飛車は藤井九段の考案ではないのですが、その定跡の整備にもっとも貢献した棋士として、二度目の升田幸三賞を受賞しました。角交換四間飛車が広まると同時に、従来の四間飛車は「ノーマル四間飛車」と呼ばれるようになりました。こうした用語の派生も、藤井九段の功績と言えるでしょう。

 藤井システムが城ならば、角交換四間飛車はロケット発射場でしょうか。勢いよく角を発射したら、81マスの宇宙、好きなところに配置できるのです。自由でロマンあふれる戦法だと思います。

玉も金も動かさず勝つ!

「なるほど、角交換四間飛車を広めたから、藤井九段は人気なんだ」

 正解です。しかしこれでも藤井九段の魅力を説明するには不足なのです。ここで冒頭の佐藤天彦八段戦に話を戻しましょう。

 どのような内容だったのかは説明が長くなってしまうので割愛しますが、この対局がいかにすごかったのかは、終局図をご覧いただくだけでわかります。

kifu20150527-119手

 注目ポイントは、藤井九段の自陣です。なんと、最初から最後まで王様と2枚の金が動いていないのです。

 本局は藤井システムの出だしではありませんでしたが、途中、モバイル中継の棋譜コメントに「藤井システムを連想したのは記者だけではないだろう」と記載されました。藤井システムは居玉のまま攻めかかるとご説明しましたが、相手の対応によっては移動させます。ところが本局はずっと居玉&居金×2。藤井システムの誕生局とされる1995年の対井上慶太六段(当時)戦でもそうだったのですが、これは47手での終局でした。100手を超えた将棋では前代未聞ではないでしょうか。「新・藤井システム」「ネオ藤井システム」――Twitterでファンたちの熱狂的な声が踊りました。

 終局後、棋譜コメントにはこう追記されました。「藤井の新構想は成功していた」と。

今も進化し続ける藤井振り飛車

 藤井九段の人気の理由が、おわかりいただけたでしょうか。過去に功績を作ったからではなく、今も作っているのです。独特の構想を「何度も何度も」編み出しているのです。もちろん他にも、新しいことに挑戦している棋士はいます。しかし藤井九段のチャレンジ精神は、その棋譜に表れているように、傑出しています。

 私は居飛車党なので、振り飛車を指すことはほとんどありません。しかし藤井九段の振り飛車には、いつもワクワクさせられます。竜王戦決勝トーナメントで、そして間もなく開幕する順位戦で、どんな将棋を見せてくれるのか今から楽しみです。

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 この記事を書いた私(アライコウ/@araicreate)は、将棋小説「俺の棒銀と女王の穴熊」を、タイトル戦の中継でもおなじみのニコニコチャンネルにて連載しています。

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 おかしなタイトルだとしょっちゅう言われておりますが、真剣に将棋を扱っております。プロや奨励会の厳しい世界を描いた将棋小説や漫画が多い中で、それよりはのんびりとした、学生の部活としての将棋を描いているのがセールスポイントだと思っています。また、ラブコメ要素を交えており、中学生以上を対象年齢にしています。ご興味がおありの方は、ぜひご一読ください。

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コメント

  1. あなあき より:

    「信者」は別にいても構わないけど
    あからさまに「布教」されると、ひいてまうわなwww

  2. kewpiehoney より:

    藤井先生のファンが多いのは、お顔も一つの要因らしいですね。

    http://shogi1.com/fujiitakeshi-3000mai/

    私は(お顔も好きですが)解説も好きです。
    藤井聡太くんに負けないように頑張ってほしいです。

  3. 管理人 管理人 より:

    あなあき様:
    コメントありがとうございます。

    今回記事を書いたのは私ではありませんが、布教してしまうほどの魅力的な方なのだと理解しました。
    同じような記事はネット上に複数あります。そのうち当サイトがどれほど影響力があるかわかりませんが、布教されたとすれば、それも著者の能力だと思います。

    kewpiehoney様:
    あの企みのにじみ出たお顔の良さは、将棋ファンの多くの人が認めることと思います。
    おっしゃるとおり解説や、それに終盤のFANTASYもファンの心を掴んでいると思います。

    大丈夫、まだまだあのポジションは譲らないでしょう。コメントありがとうございました。

  4. 北村 より:

    観るだけで将棋そのものにはあまり詳しくない者にとっては、最近の対局からその魅力を解説してもらえるのはとても有難いと感じます。

    佐藤天彦八段と藤井九段というと、藤井九段の角交換の「こだわり」を佐藤八段が解説した以下の動画を思い出しました。
    http://www.nicovideo.jp/watch/sm25389718
    佐藤八段の話から伺い知れる藤井九段のユーモアも、魅力の一つですね。

  5. やまねこ より:

    藤井ファンではありませんが、藤井九段の序盤研究の熱心さには頭が下がります。藤井システムは棋理をはずさないように古典的な指し方を踏襲した繊細な戦法であることが分かります。

    藤井システムの「主導権を握る振り飛車」という発想は、石田流、阪田流など古くからありましたが、四間飛車での実践的な戦法にしました。主導権を握るために囲いを省略して居玉になりました。一方、居玉で戦う戦法は相掛かりやカニカニ銀などにあり、さらに居玉は案外固いことはプロ間では知られていました。これらを体系的にまとめ上げたのが、藤井九段の功績です。

    角交換四間飛車は、ゴキゲン中飛車とともに、現在の「主導権を握る振り飛車」の中心です。大山十五世名人が振り飛車で活躍していた時代は、振り飛車は基本的に受け身で反撃を狙う戦法で、ましてや振り飛車から角交換を初形から挑むとは考えられていませんでした。

    振り飛車は覚えやすいので、初心者にお勧めの戦法に挙げられるのですが、受け身になりやすいのが難点です。藤井九段は、カウンターがうまくいかないアマチュアの振り飛車党に新たな可能性を示したので、絶大な人気があるのだと思います。

    また、角交換四間飛車は、石田流、阪田流などをベースにしつつも、角換わりの要素もあるので、プロの居飛車党が使っているのではないかと見ています。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      私は棋力が低くて、藤井九段の研究の成果というものはもちろん知っているのですが、その凄さが正確に体感できないのが悔しいと思っているところです。
      現在、それも含めて、将棋サイトを運営する身として棋力向上に取り組んでいます。

      あと、正直言いまして戦法もここ1、2年ぐらいでタイトル戦やNHK杯などで指された代表的なものしか知らないので、本などを読みながら知識を充実させようとしているところです。
      本来将棋サイト運営者としては知っておくべきなのでしょうが、知識が追いついていないのが現状です。

      ところで、私はノーマル四間飛車も角交換四間飛車も指すのですが、初心者に教えるのにも角交換四間飛車は魅力的だと感じています。自分から動いていけるのがいいですよね。
      よく初心者はコンピュータ相手に練習すると思うのですが、攻めてこないコンピュータもあって。そういう時も自分が主導権を握れて攻めることができたほうがやっていて楽しいと思います。

      ここを見る方にとっても、有益な書き込みをありがとうございました。

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