週刊新潮の「将棋電王戦に羽生名人参加」記事の信憑性を考えてみてよいか

まず、事の流れを簡単に整理します。

2015年3月から4月にかけて行われた将棋電王戦は、プロ棋士5対コンピュータ将棋ソフト5の団体戦による対局形式としては最後とされ、「将棋電王戦FINAL」として開催されました。

しかし、その最終第5局終了後の記者会見で、同棋戦主催者であるドワンゴの川上量生会長、および日本将棋連盟の谷川浩司会長から、電王戦の後継にあたる棋戦について、タッグ・マッチを白紙撤回し、それに代わるものを協議・検討中であるとの発言がありました。

そして5月22日、ニコニコ生放送に突如「将棋電王戦に関する記者発表会」という番組が現れました。6月3日に放送されるというこの番組で、上記の協議結果が発表されると思われます。

ところが。5月28日に発売された週刊新潮6月4日号には以下の見出しの記事が。

トッププロ参加トーナメントになる将棋電王戦に「羽生名人」参加でよいか

まさかドワンゴと連盟が発表する前に、週刊新潮が記事を書くとは。スクープなのか。しかし、この記事って・・・。

だいたいタイトルからして「・・・よいか」。こんなタイトルありなのか。謎だ謎すぎる。

思わず真似してしまった。

というわけで、記事の信憑性を私(管理人)なりに考えてみます。

福原愛、朝日新聞、UFO、電王戦

まず、この記事は「瀬戸際の歩き方 ワイド特集」と題された特集の一部です。

特集は電王戦も含めて7項目。他の項目は、例えば「卓球の福原愛がリオ五輪の切符を諦めるような、14歳の新星(伊藤美誠)が現れた」とか「朝日新聞の社会面に掲載された『訂正お詫び』は4月1日から5月25日までに21回、39%におよぶ」とかいうもの。

つまり福原愛選手や朝日新聞を「瀬戸際」にあるとみなしていて、それらの動向を1ページ程度で簡単に紹介した記事が掲載されているのです。

中には「UFO研究家の矢追純一の指定席を脅かす男が現れた。それはプロレスラーのザ・グレート・サスケだ。サスケはUFOを3回見てUFO研究に没頭している」とかいう項目もあります。

その特集の最後の項目として出てくるのが「将棋電王戦に羽生名人参加」の記事。これは日本将棋連盟が、あるいは人類が瀬戸際に立たされているということだと思います。

ベテラン棋士って誰だよ・・・

記事は、ある「ベテラン棋士」の話がソース。この棋士の話がすべて。

このベテラン棋士が誰かは書かれていません。引退棋士なのか現役棋士なのか、段位や経歴、それになんで週刊新潮にこんなこと喋ったのかさえ書かれていないです。ただ「ベテラン棋士」と。

このベテラン棋士の話の要点は3つ。

1つは「電王戦が来年(2016年)も開催されるが、それは団体戦ではない」ということ。

2つ目は「トッププロ棋士も参加するトーナメントと、コンピュータ将棋ソフト同士が対局する場が別々にある」ということ。「トッププロ棋士も参加」の正確な意味は、わかりません。少なくとも全棋士参加とは書かれていません。

そして3つ目が「それぞれの優勝者同士が対局する」ということ。

これらと、プロ側のトーナメントは羽生善治名人が勝ち抜く可能性が高いということをもって

羽生名人がコンピュータと真剣勝負する可能性が高まっているのです

と結論づけています。

まあ確かに・・・全棋士でトーナメントをしたら羽生名人は優勝候補の大本命です。

ドワンゴが突きつけた条件

日本将棋連盟がこの棋戦を行う背景も「ベテラン棋士」が解説しています。この棋士の話によれば

ドワンゴが、スポンサーを続ける条件として羽生名人の出場を突きつけた

とあります。日本将棋連盟はその台所事情(新聞社のスポンサー料削減)から、「大口出資者」であるドワンゴのこの要求をのむことになったと。

ソフトに詳しい武者野勝巳七段

そして、この記事の最後に、仮に羽生名人とコンピュータが対戦したら、という前提で展望を述べているのが「将棋ソフトに詳しい」という武者野勝巳七段。

武者野七段は「持ち時間3時間もあれば羽生君は負けない。理由は羽生君の終盤力と、意表をつく手と、正確な読み。明らかにソフトは分が悪い」と解説しています。

ところで武者野勝巳七段とは・・・?2013年に引退された棋士のようです。私が将棋ファンになって1年半弱。不勉強で申し訳ありません。

ソフトに詳しいということですが、1996年、97年にプレステ、セガサターンでそれぞれ「マリオ武者野の超将棋塾」というソフトを出しています。1994年のネット黎明期に「ネット駒音」を開設したり、2007年に破産した「株式会社棋泉」(旧称・駒音コーポレーション株式会社)の社長も務めていたようです。

しかし、いずれも10年、あるいは20年前の出来事。

そういえば、新潮さんはちょうど1ヶ月前に「西尾明六段のご結婚相手は年下の保健室の先生」という記事を出していました。今現在コンピュータ将棋に最も詳しい棋士の1人はまさに西尾六段。これ、西尾六段にも取材して欲しかった。答えにくいかもしれませんが。

瀬戸際の攻防を

記事の結論は、記者の言葉で「瀬戸際の攻防を目撃したいと思うのが人間の性」と書かれています。つまり記事は、このような棋戦を見てみたい人の立場で書かれたのだと思います。

信憑性は

疑問点はいくつかあります。

・「・・・でよいか」という自信のなさの現れたタイトル。記事の内容も「よいか否か」を論ずるものではなかった。

・UFOと同列の扱い。

・得体の知れない「ベテラン棋士」の話がソースであり、それ以外の根拠がない。

・なぜ将棋ソフトの解説が武者野七段なのか(失礼ながら、申し訳ありません(>_<))。 ・上記のトーナメント形式だと、人類と将棋ソフトが対局するのは、優勝者同士のみ。それで「電王戦」なのか。「テクノロジーの進化を加速させ人の未来へつなぐ」と掲げる棋戦なのか。 以上により、私の中の結論としては、この新潮さんの記事は信憑性がない。なさすぎる。

しかし

でも、なんか、この通りになりそうな予感もするのです。新潮さんだって無茶苦茶なこと、まったく根拠ないことは掲載しないでしょうし。

私のオススメは中将棋電王戦ですけど。面白いかどうかはわかりませんが。

6月3日のドワンゴと将棋連盟の発表を待ちましょう。

発表を聞いたら、また記事を書こうと思います。

追記:新生「第1期電王戦」が発表されました

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コメント

  1. Khacha より:

    どうせ数日後には明らかになるというのに、
    週刊誌なんかの記事を真剣に考察する管理人さん、素敵です(皮肉などではなく)
    『サスケがUFOに詳しい』とかいうのはちょっと笑えるので、
    そういうくだらない記事ばっかり書いててくれればいいんですけどねぇ…

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます!

      そうですね、週刊誌には、くだらないことと、やや真剣なことが織り交ぜて書いてあって。
      普段週刊誌を読まない人が、普通の報道機関だと思って記事を読むと・・・。
      そしてそのくだらないことを真剣に考察するというのが、ひとつ当サイトの独自性かなと思いまして。
      そこを楽しんでいただけたようで、ありがとうございます。

      私の学生時代、知識をひけらかした後に「ソースはサンスポ」というのが口癖(持ちネタ)の友人がいました。
      「ソースはサンスポ(サンケイスポーツ)」の意味は「この情報は信用できないよ」ということです。
      ちょっとわかりにくいですが、現在で言うと「ソースは某掲示板」みたいな感じでしょうか。

      つまり、信用出来ない情報を、さも知識をひけらかすかのように発言するという彼のギャグだったのですが、
      スポーツ紙と一般紙を区別的できない友人もいて(普通の学生はスポーツ紙なんか読まないわけですし)、
      この「ソースはサンスポ」のギャグの意味が理解できる人と出来ない人がいて混乱を生じたものです。

      わかりにくくてすみません。思い出したので書いてみました。
      今週刊誌の発行部数は落ち込んでいるようですから、週刊誌のネタを真剣に考察することはひとつのギャグ要素だと
      ご理解いただける人も少なくなったのかなと思って。Khachaさんにはご理解いただいたようで嬉しかったのです。

      コメントありがとうございます。

  2. ボンクラ より:

    武者野さんがソフトに詳しい扱いされるのは別に不思議なことではないと思いますよ。
    80年代からソフトに興味があって、自分の名前を冠したソフトを発売したり、ネット将棋の会社を設立したり。
    でも後年米長先生と訴訟沙汰になったりして(詳しくはネットで調べてください)今はもう遠ざかれていて最新の状況は疎いと思われますが、連盟とソフトを語る上でコメントを求められてもおかしくない人物と思います。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      情報を書き込みいただきましてありがとうございました。

      私も記事を書く時に調べましてソフトと武者野七段との関わりは、少しだけですが掴みました。

      新潮の記事をご覧になったでしょうか。
      武者野七段は「連盟とソフト」の関係についてコメントをしているのではなくて、「羽生名人がソフトと対局したら」どうなるかという展望を述べています。

      この展望については、最近のソフトとプロ棋士の対局内容からすると、少し違和感があるのかなと思うものでしたし、
      ボンクラさんがおっしゃられるように、武者野七段は最近のソフト事情については疎いのかなとも思ってしまいました。

      そんな武者野七段を「ソフトに詳しい」といって引っ張り出してくるところに、新潮の記事の信憑性が表れている
      のかなと思って指摘してみました。

      コメントありがとうございます。

  3. 長さん より:

    4800枚制将棋と言うのを考えました。
    中将棋でソフトと対決するという御提案の、延長上にあります。
    なおコンピュータ将棋ソフトの理論的研究者の、中将棋対決に対する意見は冷淡です。
    アリマーはコンピュータは苦手だが、持ち駒ルール等のルールのカテゴリーを減らした
    中将棋は、本来、コンピュータが強いのではないかとの疑いが、強いようです。
    「4800枚制将棋? たぶんコンピュータの方が強いよ」と、彼らに私は軽く言わ
    れてしまいましたね。しかし、人間。駒数がどんなに増えても、弱くなっていないと
    の感触が私には有り、コンピュータ将棋研究者の意見に、違和感はあるんですが。
    どっちが正しいか。まあ。それくらいは数年位で、判るんでしょう。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      え?中将棋はコンピュータ得意なんですか。手数は長くなるけど一手毎の選択肢は狭いということなんでしょうか。

      4800枚将棋とは大胆ですね。
      もしそれでも、手数が長くなるだけで一手毎の選択肢が狭いとしたら
      そのコンピュータソフト研究家の方がおっしゃるように、コンピュータの方が有利かもしれませんね。
      決着が着く前に、人間の体力が尽きそうですが。

      私としては、人間が持っている大局観というか、抽象的なものの見方ができる能力と、
      コンピュータの読みとの対決になればいいかなと思っていたのです。中将棋がそれにふさわしくないなら、
      将棋にもう一つルールを加えて複雑性を増してみるとか。
      歩は初回のみ2マス前進可能、キャスリング、歩ではさんで取れるとかですかね。

      コメントありがとうございます。

      • 長さん より:

        中将棋で強いソフト。私は見たことないです。現存はしないと疑われますよ。
        なお。上で「長さん」の青字をクリックしても、私のホームページは有りません。
        レンタルストレージに飛んで、ファイルのダウンロードのボタンを押すと、
        ワードで作成した、1メガバイト以下の容量の、4800枚制将棋の説明文
        のダウンロードページに行きます。ワード文書。まだ、削除されてないよう
        ですが。ちなみに2局ほど、ルール調整用に一人指ししています。断続的に
        1週間かかりますね。1局約6000~7000手で、1万手には達せず、
        1駒当たりの1局手数は日本将棋や、中将棋より少ないです。後で手直しが
        面倒なので、走り駒の割合を、息切れが絶対に無いように、かなり多めに
        したからですね。

        • 管理人 管理人 より:

          再コメントありがとうございます。

          4800枚の将棋を指すとは気が遠くなるでしょうね。手を考えるのも大変ですが動かすのも面倒になりそうです。
          こういうのこそ、コンピュータによる実験のほうがよいのでしょうね。

          これで電王戦をやったら確かにこれまでと次元の違う戦いができそうです。

          ただ、中将棋もそうですが、コンピュータ関係者や人工知能関係者の研究対象になるか。
          そうしないと強いソフトは生まれにくいですし。しかし、ディープラーニングみたいなことの対象にはなりえそうだとも思いました。
          力技の読みだけでは、読み切るのは無理でしょうね。抽象的な概念が必要になりそうです。

          コメントありがとうございます。

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