青野照市九段が電王戦の3年間で感じたこと「人間の持つ素晴らしさ。これを鍛えるのに将棋を使っていただければ」

2015年6月3日の「将棋電王戦に関する記者発表会」では、日本将棋連盟から会長である谷川浩司九段に加え、専務理事である青野照市九段も登壇されました。

この青野九段の発言が、私(管理人)にとりまして、個人的に印象に残りましたのでご紹介します。

なおこの記者発表会の概要は以下の記事をご覧ください。

新生「第1期電王戦」、エントリー制の新公式棋戦(名称公募)優勝者が最強ソフトと2日制2番勝負で対決へ

私が3年間で感じたこと

記者発表会の終盤、登壇者それぞれが発言を求められた場面での青野照市九段の発言。その場でのお話ですので、少し意味が通じづらいところもありますが、各自の頭の中で補完お願いします。

「今まで3年間、人間対コンピュータの5対5の勝負を戦ってきた。私がこの3年間、どう感じたのかというのを、こちらでお話するのは初めてなもんですから、お話させていただきます。

3年間で、コンピュータの進化、プログラマの方たちの努力というものを本当に感じました。

実は10年ほど前(正確には19年前である)に、『コンピュータがプロ棋士を超えるのはいつか』という質問を色んな棋士にしたことがあった。そのなかで羽生さん(羽生善治名人)が、唯一、2015年という答えを出していた。森内さん(森内俊之九段)も近かった(2010年)。

我々としては、えっ、と思ったんですけど、今現在がちょうどプロ棋士のトップと、コンピュータが拮抗しているような時期なんじゃないか。

この3年間で、コンピュータのプログラマの人たちの努力と同時に、人間の持つ能力、人間の持つ第一感とかですね、感性、大局観。これも素晴らしいことが証明できたんじゃないかなと思います。

手のことを言うのはどうかと思うが、(電王戦FINALの)第5局の最終手、△2八角(正確には最終手の一手前)という手は非常に話題になりました。

この△2八角という手は、正直言いますと、プロでは100人が100人、やらないんです。読まなくてもやらない手なんです。

ですけど、別にこのコンピュータが弱いわけじゃないんです。もうプロを超えたんじゃないかと言われているコンピュータですから。

そういう意味では、コンピュータの素晴らしさと、人間の持つ大局観、第一感の素晴らしさ。

これを鍛えるというか。

そういうものに将棋を使っていただければ。あるいは子供さんたちの、答えの出ないものを会得するものの一つに、将棋を加えていただければなと、3年間で思いました。

これからの3年間(ドワンゴの川上量生会長は少なくとも今後3年間は電王戦を実施すると発言している)、どのようになるのか、本当に羽生さんの言うように、コンピュータが人間をもう超えているのか。

またこれがわかれば、人間が負けても、これはこれで意義があると思っています」

運命の2015年

コメント中に出てきた、「羽生名人は、コンピュータが人間を超えるのは2015年だと予測した」という件ですが、Wikipediaのコンピュータ将棋の項目に以下のようにあります。

1996年、「コンピュータがプロを負かす日は?」というアンケートがあった。羽生善治は2015年、森内俊之は2010年、谷川浩司(1962年生)は「自分が引退してから」と答えた

私個人的には、この質問は、面白いんですがあまり予測の精度をどうこう言う意味は無いと思っていて。当時棋士たちがどれほど真剣に予測したのか、コンピュータに関する知識はどれほどあったのかわからないし、棋士の誇りあるいはリップ・サービスとして「プロが負かされることはない」と答えた方もいたと推測するからです。まさかこの予想が外れたからと言って、棋士たちの読みが甘いとかいう話しではないと思います。会見では谷川会長が自虐的に「羽生さんと違って私は甘かった」と言っていましたが。

でも青野九段はあえて、これを引き合いに出したんだと思います。

第一感、大局観を鍛える

青野九段がおっしゃっていた「人間の持つ素晴らしさ」の部分である「第一感や大局観」を鍛える。果たしてこのようなことが可能なのか。

以前羽生名人は、チェスの伝説的チャンピオン、ガルリ・カスパロフさんとの対談で、加齢について聞かれて以下のように述べています。

歳が上がると反射的な能力や計算的な能力は衰えるが、局面の全体像を捉える感覚的な能力を磨いていくっていうことが、強くなっていくことだと思う。(そういう能力が)上達しているかどうかわからないが、少なくとも上達したいという気持ちは持ってやっている

どうやって鍛えているのか。あえて深読みせず大局観だけで指してみたりしているとか。わからないけど興味があります。

しかしこれを応用すると、教育とかに使える、そして人類の発展に役立つということだと思います。

そしてそれが「答えの出ないもの」への対応の仕方を会得することになると。

答えの出ないもの

電王戦を通じてコンピュータ側は、例えば「△2八角」のハメ手を目の当たりにして学んだはずで、次の新「第1期電王戦」に出てくるソフトは必ずや対策してくるはずです。そう考えると、電王戦での実績がソフト設計にフィードバックされ、より強いソフトが生まれるといえると思います。さらにはそれを抽象化して、人工知能等の研究に生かしていくと。

一方で人類も、電王戦を通じて何らかのフィードバックを得て、棋士のトレーニング、さらには子供の教育にまで発展されることができれば、有意義なのではないかと思います。

将来の人類はコンピュータに出来ない仕事をする必要があるはずで、そうなると人間の持つ強みを鍛えていくことに価値があるのは必然なのだと感じました。そしてその「コンピュータに出来ない仕事」というのは「答えの出ないもの」に近いのだと思います。

さすが青野とる・・・いや青野照市九段のご発言です。

青野とるいち

青野照市九段といえば、私の中では豊川孝弘七段のオヤジギャグ「青野とるいち(取る一、つまり『取る一手』のこと。将棋のある局面における選択肢が、相手の駒を取る手の一択であるという意味。厳密には一択ではないが、良い手は取る手のみで、事実上の一択であることが多い)」の印象がとても強かったのです。

私は将棋ファン歴が浅く、失礼ながら、対局している姿は拝見したことがありませんでした。さっき調べたら、62歳にしていまだB級2組で戦っていらっしゃるんですね。

よく、青野九段は人格者であるというお話は聞きますし、この電王戦の記者発表会でも和やかで前向きなムードを演出されているようにも思えました。そこに上記の素晴らしいスピーチ。

そしてこの人格者を前にして平気で「青野とるいち」と言っちゃう豊川七段・・・。

将棋が社会に果たす役割は、これからもまだまだ多いと思います。

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