永瀬拓矢六段の電王戦論「出場するメリットはない」「リベンジマッチは受ける」「千日手はプロの技」

この記事は書いているうちに長くなってしまったので、最初に要約を書きます。

時間がある方は最後まで読んでいただければ幸いです。

要約:

将棋電王戦FINAL第2局で勝利した永瀬拓矢六段は、

・電王戦に出場するメリットはないと考えていた
・それでも出場した理由は「プロ棋士が負け続けているのを、自分がなんとかしたかった」から
・千日手や持将棋を使うこともプロの技であり、使うことを考えていた
・仮に敗勢となったら「不成」は決行しなかった
・電王戦で得たものは「人間は負けてはいけない。プロ棋士、ちゃんとやれよ」と胸を張って言えるようになったこと
・Seleneからのリベンジマッチがあれば「してみたい」と発言

プロ棋士の電王戦に対するモチベーション

将棋電王戦に出場するコンピュータソフトの開発者は、何らかの理由でこの棋戦に出場したいと思ったから出場しているわけだと思います(電王トーナメントの賞金、自らの名誉、純粋に将棋ソフトを強くしたい気持ち、やりがい・生きがいなど)が、プロ棋士側は必ずしもそうではないと思います。

日本将棋連盟理事の片上大輔六段が言うように、電王戦FINALに出場した棋士は数カ月前からコンピュータ用の対策が求められました

第3局に出場した稲葉陽七段は、出場の打診を一回断ったと師匠・井上慶太九段に明かしています。

一方、第1局の斎藤慎太郎五段は「将棋ソフトが十分棋士を超えているという意見を、自分が戦って変えてみたい」という意思を明かし、第4局の村山慈明七段も「立候補させていただきました。自分で言うのも変ですけど、向いてるのかな。ヒーローになれるんじゃないかなと思ってます」とPVで語っています。

メリットはない

そんな中、将棋電王戦の歴史の中でも衝撃的な事件として語り継がれるであろう、「△2七角不成」を決行し完勝した永瀬拓矢六段(第2局)は、電王戦に出場することの意義についてどう思っていたのか。

対局から約1週間ほど経ってから出演したTBSラジオ「荻上チキ・session-22」(2015年3月27日)では、「電王戦に出場するメリットはない」ときっぱりと述べていました。

出場した理由

永瀬六段はこの番組で、電王戦に出場した経緯について「片上理事から打診があった。出ないでいろいろゴチャゴチャ言うのはいくらでも言えるし、(負け越しているプロ棋士側として)自分でどうにかしたいという思いがあった。(プロ棋士が)負けるたびに胃が痛かった、名誉が傷つけられることですので」とコメント。

これを受けて、司会の荻上チキさんが「電王戦に出ることのメリットって、お考えになりましたか?」と質問しました。

この質問に対し永瀬六段は「メリットは、ないと思いました」と発言。驚いた荻上さんが「ない?」と再質問するも、永瀬六段は「ないです」と繰り返しました。

プロ棋士の戦い方

そんなメリットのない戦いに挑んだ永瀬六段ですが、コンピュータソフトとは違ったプロ棋士としての戦い方についても語ってくれました。

永瀬六段は、プロの戦い方として、千日手や持将棋も視野に入れていたことを明かし「プロはそういうルールをうまく使うべき」であるという見解を述べ、ボクシングを例にあげ「プロは反則ギリギリのところでうまく戦う。反則はいけないんですけど、千日手・持将棋というのは将棋の立派なルールとしてあるので、使うべきかなと思っていた」と話しました。

永瀬六段は千日手を得意としており、事前のドキュメンタリーでもこれを示唆していました。

新しい世界が広がる

番組には、将棋と関わりが深い憲法学者で首都大学東京准教授の木村草太さんが出演していたのですが、木村さんからは「コンピュータの将棋は人間と全く違うとうかがったが、これは藤井猛九段の藤井システムや升田幸三先生(実力制第四代名人)がやったまったく新しい将棋を見た感覚とは違うのか?」と、すばらしい質問が。

永瀬六段はこれに「自分からしたら、かなり近い気がします」と返答。コンピュータによって新しいトレンドが生み出され「世界が広がるような感じかなと思います」とも述べました。

木村さんは、既にコンピュータによって指された手がプロ棋士によって検討され公式戦に現れていることを紹介していました。最近で有名なのは、先日の第64期王将戦第1局での渡辺明王将(当時)の新手▲5五銀左でしょうか。これはツツカナと対局していた森下卓九段から伝搬したものでした。

敗勢だったら不成していたか

永瀬六段が角不成をした場面では、既にコンピュータに読み勝ち勝勢だったことはこれまでにお伝えしたとおりです。

木村さんはこれを「勝つついでにバグを指摘した」と表現していました。ここで疑問なのは、永瀬六段が「敗勢でも不成を決行したか」ということ。

この質問に対し永瀬六段は「敗勢でやるというのは、そもそも裁定で負けになるはずなので・・・。それは・・・負けな気がしますけども」と返答。

ただ、電王戦FINAL対局ルールにはそのようなことは書かれておらず、あるとすれば、以下の「コンピュータトラブル」の事項ぐらいです。

コンピュータにトラブルが生じたことがわかった場合、速やかに立会人を呼び対応する。トラブルのいか
んにかかわらず、立ち会いのもと復旧に努めるものとする。
対局開始時刻までに準備が完了していない場合、その原因がコンピュータ側にあれば、消費時間の3倍を持ち時間から引く

永瀬六段は、「使わない。使っても負けだと思いますね、より負けだと思います。ある意味で」と繰り返ました。

この発言を受けて、番組では「敗勢で使っていたら人としても負け」とか「人としてどうなのか、考えて指すのが人間の将棋の魅力」というような話題で盛り上がりました。

電王戦で得たもの

出場に「メリットはない」としていた永瀬六段ですが、「電王戦で得たもの」も語ってくれました。

永瀬六段は「1つ、得たと胸を張れることがある」と前置きし、「人間は、負けてはいけないと堂々と胸を張って言えること」と述べました。

出場する前は「プロ棋士は何で負けるんだ。ちゃんとやれよ、と。情けないぞ、と」と思っていたものの「言うのは簡単だった」と躊躇していたのが、自身が勝ってから言うのは「言葉の重みが違うと思う。これを堂々と言えるのが今回得たこと」と語りました。

リベンジマッチがあればしてみたい

これまで、プロ棋士がコンピュータソフトに負けた場合には、一部の対局でリベンジマッチが開催されてきました。

逆の立場にある永瀬拓矢六段は、コンピュータソフト・Selene側からのリベンジマッチの可能性を聞かれ「Seleneとの対局は楽しく、好奇心が沸いてきたので、リベンジマッチがあればしてみたい」と発言。

このラジオ番組、片上理事も途中で電話出演しており、この部分も聞いていたはずなので、本当に話があれば実現するかもしれません。

鬼「軍曹」の異名を持つ永瀬六段が、バグを修正したSeleneをどうやって倒してくれるのか。

それともまた「デバッグ」することになるのか。いろいろ想像は尽きません。

永瀬六段、いろいろ語っていただきましてありがとうございました。

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コメント

  1. ひろ より:

    本当にすごい人ですねえ……。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます!
      私はこれまであまり永瀬六段のこと知らなかったんですが、今回の活躍によって非常に興味を持ちました。
      いいキャラクターしてますし今後も楽しみですね。

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